Phase.4-1
クロスオーバーさせているものの、このサイトには投稿していなかったり…
何処を歩いても人、人、人。
田舎者みたいでキョロキョロと視線を動かしたくないのだが、道行く人の多さに思わずそうしてしまう。
店員がメガホンを片手に自分の店の商品がこの辺りで一番安いと宣言している。
そう言うので、近くの店に入り一通りの値段を眺めてから、隣の店で同じ商品を見てみる。
結果は同じ値段。
嘘は言っていないが、なんというかこの残念な気持ちは何処に持っていけばいいのだろか。
CTの専門店があると起動した自分のそれで調べた栞はそこへ向かう。
意外に店内は小汚い。
CTの内部は精密機械の塊であるので、綺麗なイメージを勝手に持っていた。
そして人が多いと言う事にも驚きだ。
自分用に改造するのであれば、比較的最近のパソコンを使えば簡単に出来るようになっている。
部品を変えてまでも改造するには専門の知識が必要となってくる。
そしてそれは魔導に対する知識も備えていなければならない。
それを眺めている人たちは何を考えているのかと思うが、あまりにも真剣な表情なのでそれ以上考えるのを止める。
自分がいつもメンテナンスなので使っている所と比べても品揃えが豊富で商品を眺めているだけでかなりの時間が掛かってしまいそうだ。
「…これって」
ガラスケースに入れられた日本刀の形をした武器型CT―通称、水月―が納められている。
鍔のない鋒両刃造の打刀。
刀身の幅が一般的なものと比べて細く、刃の長さも少し長い。
昔のとある優れた者が使用していたとされる打刀のレプリカにCTの機能を組み込んだもの。
しかし、その所有者の名前はどの資料にも残っておらず、どこかの作家が作り出したものとされている。
それでもこれのオリジナルは確かに存在するのもまた事実なのだ。
欲しい。
喉から手が出てしまう程欲しい。
だが、水月の側に置いてある値札に記載される金額を見れば絶対に手に入らないと認識してしまう。
自分の全財産でも桁が幾つも足りない。
というより、国家予算であっても足りない。
完全に売るつもりがないように思える。
売れないものをこの店に置いておくよりも博物館などに展示しておけば問題ないはずだ。
溜め息を一つ漏らし、他の商品を眺めて行く。
と、CTの無料メンテナンスを行っていますと書かれた看板が目に入る。
正直な感想としては妖しいといった所。
自分の行き付けの店舗ではお金を支払う必要がある。
無料の響きは確かに心地よいが、信頼出来るの不安になる。
「お嬢さんも無料だから信頼出来ない口かい?」
商品を眺めていたからこそ、背後への警戒心を怠っていた自分も悪いが、女性に後ろから声を掛ける男もどうなのか。
振り向きざま、CTを握り、いつでも撃退できるように構える。
「ああ、すまんすまん。
警戒させちゃったか。
私はこの店のメンテナンス担当の者です」
デニム生地のエプロンの胸元についている名札のバッチを指差す、LEDの光が頭を反射して輝いている男。
見た目は20代前半と言った所か。
昔の不良と呼ばれる強面の割に声だけ聞くと優しさが溢れているのがなんとも歪に感じられる。
「……それは」
店員は自分の顔が強面であり、女性に話しかけるといつも警戒されると経験している様で、先程よりも栞と距離を取っている。
会話をするというには遠過ぎる距離なので、構えを解いて距離を詰める。
「始めて来た人はそう言うね。
確かにその通りだよ、人をすぐに信頼、信用してはいけない。
それが正しい。
話を戻そうか、メンテナンスが無料は創業者が決めたことだからだ。
とは言っても、この街でひっそりと営業しているとそうでもしないとお客さんが来てくれないっていうのが本当なのかもしれないけどね」
そう言う事を感がる人もいるんだと少し感動したが、最後の一言によってその感動も薄れてしまった。
確かに検索しないと分からないような立地ではサービスとして行わなければならないのだろう。
「お嬢さんもメンテナンス受けますか?」
時間にして数秒考えて、手に握られたCTを店員に渡す。
奥の部屋にある休憩スペースに通され、隅の椅子に座る。
テーブルに薄い冊子のようなものが置いてあるので、何も考えずに手に取ってみる。
表紙は黒く塗り潰されており、タイトルも作者さえも書いてない。
それを捲ると対照的に白いページ。
更にページをめくる。
「どうした、もうそれで限界か?
まだ大丈夫だろ?」
「も、もう限界…」
「喋れる余力あるから大丈夫だろ?」
吹き出しの台詞だけを見れば、無駄に熱い物語と思われるが、描かれている物は男女の裸体。
女性の上半身がベッドに触れているが、腰が上げて男に臀部を向けている。
女性の腰を掴み、大き過ぎると思うようなそそり立つ……
勢いよく冊子を閉じる。
見てはいけないものを見てしまった。
これはいわゆる18歳未満閲覧禁止、購入禁止とかいうものではないのか。
年の離れた兄が栞にはいるのだが、少なくとも彼の部屋でそう言った類の物を見た事はない。
上手く隠していたのかもしれないが。
初めて見たが、色々と衝撃的だった。
勢いよく閉じたがそれでも内容は網膜に焼きついている。
この場にいるのが自分だけなのは幸運か。
心臓が激しく鼓動して、誰もいないにもかかわらず周囲を見渡し誰もいない事を確認する。
そうして、もう一度冊子を開く。
心臓が破裂するのではないかと思えるほど激しく鼓動を繰り返す。
夢中で周りの視線を気にせず、冊子を読み進める。
読み終えると、軽く自己嫌悪に陥り、冊子を自分からは見えない位置に置く。
「お嬢さん、メンテ終わりましたよ。
部品の消耗からおおよそ4年程使っているようですから、部品の交換を行った方がいいと思いますよ」
誤字脱字がありましたらご連絡下さい。
読んで下さり有難うございます。




