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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第4章 ブレイピア決戦
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第15話 偽りの騎士

お待たせ致しました!更新遅れて申し訳ないです( ; ; )

街が、悲鳴を上げていた。


瓦礫が崩れる音。


魔獣の咆哮。


炎が上がる匂い。


王都ブレイビアは、どこを見ても戦場だった。


「くそっ……数が多すぎる!!」



冒険者の一人が叫ぶ。


Cランクの魔獣が、三体。


四体。


五体。


倒しても倒しても、終わらない。


「退くな!!ここを抜かれたら市民街まで届くぞ!!」


怒号が飛ぶ。


だが、悲鳴は止まらない。



その時だった。


「っ——!!」



王国兵士の一人が、地面に叩きつけられる。

巨大な魔獣の爪が、振り上がる。


とどめ。


間に合わない。


誰もが、そう思った瞬間。


ザシュッ!!


鮮血が、宙を舞う。


魔獣の首が、落ちた。


「……次、来るぞ」


赤い長髪が、風に揺れる。


レッカだった。


剣を振り抜いた姿勢のまま、周囲を見渡す。


兵士は呆然としていた。


「立て」


短く言う。


「ここで座ってる暇はねえぞ」


その言葉で、兵士が立ち上がる。



その背後。


二匹目の魔獣が、音もなく迫っていた。


レッカが気づく。


間に合わない。


「——ッ」


振り返りかけた、その瞬間。


ドンッ!!


重い音。


魔獣が、横に吹き飛んでいた。


斧の一振り。


それだけで。


ラセツが、無表情で斧を肩に戻す。


「……」


レッカは一拍置いてから、言った。


「悪い」


「ああ」


短いやり取り。


それだけで十分だった。



ラセツは周囲を見渡す。


街の各所で、同じ光景が繰り返されている。


冒険者が、兵士が、必死に食い止めている。


だが


「……レッカ」


低く、静かに言う。


「魔獣の数が多すぎる」


「分かってる」


「キリがないぞ」


レッカは歯を食いしばる。


この数は。


明らかに異常だった。


一か所に集中しているのではない。


街全体に、まんべんなく散らばっている。


まるで。


別の何かから、目を逸らさせるように。


その時だった。


「レッカさん!!ラセツさん!!」


息を切らした王国兵士が、二人へ駆け寄ってくる。

顔が青ざめている。


「現在……ユーリ団長が!!」


一息。



「三魔官イデアと……交戦中です!!」

「至急、応援を……お願いします!!」



沈黙。


レッカとラセツは、視線を交わした。


「……行くぞ、ラセツ」


レッカが踵を返しかける。



「俺は行かない」



静かな声。


レッカの足が、止まる。


振り返る。


「……は?」

「なんで…」


「見ろ」


ラセツは顎で、周囲を示す。


あちこちで、冒険者や兵士が押されている。


「俺がいなくなれば、ここが崩れる」


「崩れれば、市民街まで届く」


「それだけだ」


「でも——」




「レッカ」




ラセツは、一歩近づく。


そして。


レッカの肩に、手を置いた。


「お前の魔術の方が王城に行くには早いだろ」


静かに、真っ直ぐに。


「それに」


一拍。


「師匠の仇討ち……するんだろ」


レッカの目が、揺れる。


拳が、震える。


「……ッ」


言葉が、出ない。


反論したい。


でも、できない


分かっているから。


全部。


分かっているから


「……死ぬなよ」


それだけ言って、レッカは走り出した。


ラセツは、その背中を見送る。


「……お前もな」

小さく。


誰にも聞こえない声で。


そして、斧を構え直した。



「かかってこい」



魔獣たちを

まっすぐに、見据えた。




王国城の廊下は、静かだった。

街の喧騒が、遠く聞こえる。


その静寂を切り裂くように。


激しい剣戟が、謁見の間の前で響いていた。


ガキィンッ!!

ガキィィンッ!!



「——ッ!」


ユーリが弾かれる。


壁に手をついて、踏みとどまる。


息が上がっている。


だが剣は、離さない。


「フフ……」


イデアは優雅に立っていた。


指先に、黒い魔力が絡みつく。


「面白いですねぇ……」


爪が伸びる。


魔力を帯びた黒い爪が空気を裂く。


「——ッ!!」


ユーリは剣を滑らせ、軌道を逸らす。



同時に

「風——刃!!」


剣に風魔法が絡みつく。


真空の刃が、イデアへ向かう。


だが、

イデアは片腕の衝撃波で、それを弾き飛ばす。


爆発。


粉塵が舞う。


その中から、イデアが歩いてくる。

無傷で。


「風魔法を剣術に組み込む……珍しい戦い方ですねぇ」


感心したように、口元を歪める。


「踏み込みの速さ。剣速…そして判断の早さ」


指折り数えるように。


「どれを取っても、一流だ」

「そして何より」


視線が、細まる。


「魔力の扱いが……非常に洗練されている」


一歩、近づく。


「並の騎士団長では、ありませんねぇ」


ユーリは構えを崩さない。


「……どうも」


息を整えながら。


「褒め言葉として受け取っておくよ」


イデアは、くつくつと笑った。


「ええ、そうしてください」


そして。


口元が、ゆっくりと歪む。


「やるようですねぇ」


一拍。


その笑みが深くなる。



「——【まがい物の騎士団長さん】」



空気が。


変わった。


ユーリの剣が。


わずかに、揺れる。


「……何を」


「言っている…」


声が、硬い。


「おや」


イデアは首を傾ける。


「動揺していますねぇ」


「……っ」


「なぜ知っているのか、と聞きたいですか?」


ユーリは、答えない。


イデアは、構わず続ける。


「三魔官の”知”担当である私が」


爪を、光らせる。


「知らないとでも?」


ゆっくりと。


一歩。


また一歩。


廊下の石畳を踏みしめながら。


「ええ……そうですよね」


「あなたは」


「【この国の禁術】によって」


「秘密裏に生み出された存在」


ユーリの手が、震え始める。


「ブレイピア国王の一人息子であり」


「騎士団長でもあるユーリさん……」


イデアの裂けた口が、弧を描く


「いえ」




「そのニセモノさん」




剣が落ちそうになる。


こらえる。


だが指先が。


震えている。


誰が見ても。


分かるほどに。


「……なぜ」


絞り出すような声。


「なぜ……それを」


「知っている」


イデアは答えない。


ただ、愉しそうに。


ユーリを見ていた。


その時だった。


ユーリの胸元の赤いペンダントが、微かに光った。



次の瞬間。


ペンダントから、魔法陣が展開される。


光が広がる。


「——ッ!?」


ユーリが、目を見開く。


「やめ——」


遅かった。


光の中から。


ゆっくりと、一人の人物が現れる。


重厚な外套。


威厳のある体躯。


ブレイピア国王だった。


「——っ」


ユーリの顔が蒼白になる。


国王はただ1点、ユーリを見つめていた。


「本当だったのか……」


静かな声。


だが。


その重さは、謁見の間を満たすほどだった。


「……ユーリ」


沈黙が落ちる。



イデアはその光景を見て。


静かに笑った。


隠されていた秘密が。


今。


暴かれた。

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