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第二話

 ベルーセ村に戻ったシアとアルドは、旅装を解いて墓前に簡単な報告をすると、のんびり過ごした。


 朝、日が上って少ししてから起きて、晴れていたら井戸や水路から水を汲み、畑に水を撒く。食べごろの野菜をいくつか収穫して、鶏小屋の鶏たちの世話をする。産んだ卵をとって、朝食にする。


 雨の日は前日に収穫した野菜を食べて、ゆっくりと本を読む。


 シアの家にはたくさんの本が並んでいて、まだ解読できていない本もいくつかある。古い言葉を読み解きながら、シアはそれを新しい本に書き記していく。


「シアねぇちゃん、また本読んでるの!」

「それが私の仕事だからねぇ」

「やっべ、オレ、まだ牛の乳搾りやってない!」


 近所の子供は水路が張り巡らされた畑を器用に避けて走っていく。牛小屋に飛び込む後ろ姿を見送って、シアは「のどかだなぁ」とつぶやいた。


 そうこうするうちに、日が暮れてくる。アルドが牧羊犬を連れて、放牧していた羊や牛や鶏たちを小屋に戻す。


 夕食にやってきたアルドと食卓を囲んで、たまに山の下から届いた街の様子などを話す。


「最近、ヤハラ国はどうなんだ?」

「相変わらずだよ。……でも、ベルーセ村のことを作品にする芸術家はいなくなったみたいだね」

「それならよかった」

「アルドくんは、まだジャンボの人たちが憎い?」

「ああ。……シアは?」

「うーん……。私は、あの人たちがどうするか、見届けるだけ」

「シアらしい」


 焼いたパンをちぎって、アルドは口に放り込む。ベルーセ村の高台にある風車がひいた小麦を使ったものだ。


 豆とじゃがいもの入ったスープを飲んで、シアは「そろそろ牧草を刈らないとね」と、スープで温まった息を吐いた。


「アルドくん、ジャンボに直接殴り込みなんて、かけないでよね」


 シアの言葉に、アルドは笑い声をあげると、スプーンを机の上に置いた。


「いつでも、その準備はしておくが」

「そのときは、私に声をかけるんだよ。……ちゃんと止めてあげるから」


 少し離れたところにある小屋から、牛の鳴き声が聞こえた。


***


 ベルーセ村には、死者を弔う日がある。ずらりと並んだ墓石を前に、シアとアルドも祈りを捧げた。墓石には野の花で編んだ花冠がかぶせてある。


 村長が死者を弔うお決まりのセリフを述べたあと、村の人々は墓地をあとにした。これから祭りの支度をするのだろう。村人の少なさに、シアはうつむいた。


 シアとアルドは墓地に残って、長い祈りを捧げている。


「……まだ無念は晴れないかもしれないけど……仇は討ったつもりだよ。私はおとぎ話の魔法使いみたいに魔法が使えるわけでもないし、アルドくんみたいに腕が立つわけでもない。でも一人でそう何人もの相手と戦えるものじゃない。仇はたくさんいる。だから言葉で、ベルーセ村の仇を討つことにしたよ」


 シアがぽつりとそう言ったのを聞いて、アルドはシアの前に跪いた。


「シアは立派に戦った。俺は、君と共にありつづけるよ」

「騎士の宣誓? 照れるなぁ」

「これからも、俺と共に生きてくれますか」

「なにそれ、プロポーズ?」

「そう」

「マジで?」

「……冗談では、言わないな」


 少し離れたところで、ベルーセ村の祭りの櫓が組み上げられていた。


<完>

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