059 -Ritsu-
気がついたら眠ってしまっていたらしい。律はゆっくりと瞼を開けた。カーテンの外はまだ暗いから、朝はまだらしい。
律は蒼乃の腕の中で丸まっていた。そして、ズボンもパンツも履いていなかったので、蒼乃が起きないように服を探してそっと履き直す。
可愛い寝顔をしている彼女に布団をかけ直し、律は音を立てないようにしながら鞄を漁る。中からプレゼントを取り出し、蒼乃の頭の上に置く。サンタの仕事だった。
エアコンが切れている室内は寒く、律は彼女の腕の中に戻ろうとする。
「んん……」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
寝ぼけた蒼乃が目を開き、律の姿を確認する。抱きつこうと蒼乃が上半身を起こそうとするので、律は腕の中に収まるように布団に潜った。ぎゅーっと腕が巻きついてくる。
「りつ……」
ぼやぼやした呼びかけがとても可愛い。確か寝起きはよくないと言っていた気がする。
「蒼ちゃん、私だよ。分かる?」
「りつ……」
可愛い。鼻先をつついてみる。唸り声が返ってきた。
「蒼ちゃん、好きだよ」
先程まで十分に愛し合った仲だが、改めて気持ちを伝えてみる。
「私も……好き……」
「ありがとう」
いつもは撫でられる側なので、今こそはと律は蒼乃の頭を撫でた。そのまま長い髪を触って遊ぶ。毛先はふわふわしていて柔らかい。
「律」
蒼乃の腕に力が入った。起こしてしまったか。
「律、りつ」
寝ぼけているらしかった。腕に巻かれたまま、律の額と蒼乃の額が押しつけられる。
整った顔が、目前にある。今年に限って、親よりも見た顔。可愛いと言うより、綺麗という言葉が似合う。
お互いの長いまつ毛がぶつかり合う。ぱさぱさ。量も多い方なので、混雑していた。
「んん、律……」
眠たそうな目と目が合う。「おはよう」と言ったが返答はなく、蒼乃が顔をスリスリさせる。
「蒼ちゃん」
呼ぶと、キスされた。寝ぼけているくせに、的確に唇の位置を当ててきた。
「愛してる」
本当に寝ぼけているのか疑わしいくらい、何度も口づけをされる。律の眠気はどんどん覚めていく。
こう何度もキスをされると、また蒼乃のことが欲しくなる。律は気持ちを鎮めるように努めたが、結局悶々としたまま再び眠気がくるのを待つしかなかった。
◆ ◆ ◆
先に目覚めたのは蒼乃だった。律が目を覚ました頃にはきっちりと覚醒していて、昨夜の可愛い蒼乃は幻と化した。
「おはよう、律」
「蒼ちゃん、おはよう」
朝になっても律は蒼乃の腕の中だった。もしかしたら目を覚ました蒼乃が腕を巻き直したのかもしれないが、心地のよい朝だった。
今度は律から蒼乃の方へすり寄る。
「律、プレゼントありがとう」
頭上に置いたプレゼントは見てもらえたらしい。ここで一つ律は決心して白状する。
「蒼ちゃん、怒らないで聞いてほしいんだけど、いや、私には怒ってもいいんだけど……」
蒼乃の目が細まり、律を逃さないようにしっかりとホールドする。
「なかなかプレゼントするもの決められなくて……はるちゃんに手伝ってもらいました……」
「……………………」
長い沈黙が流れる。
「……一緒に買いに行ったってこと?」
「はい。ごめんなさい」
律は怒られるかなと思って、思わず目を瞑った。
「……でも、律がちゃんと選んでくれたんでしょう?」
「それはまぁ」
「怒ってない。怒ってない。……遥と二人きりで出かけたことは、ちょっと妬くけれど怒ってないわ」
怒っていないと言うわりには目が据わっている。
「律、ちょっと起きて」
体が解放される。ベッドの上で起き上がって、ブラが外れていることに気がついたが、つける暇は与えられなかった。
「メリークリスマス」
蒼乃がどこからか細長い箱を取り出した。以前律が好きだと言った白色でラッピングされている。
「開けて」
律は言われるがまま、包装を剥がしていく。中からは紺色の箱が現れた。英文字が箔押しされていたが、律にはよく分からない。
箱の蓋を引っ張って開けると、中からシルバーのネックレスが現れた。先には小さなお月様がぶら下がっている。
「貸して」
また言われるがままにネックレスを蒼乃に渡すと、蒼乃は律に抱きつくような姿勢になりながら、両手を律の首の後ろに回した。
チェーンのホックがかちりと噛み合い、蒼乃が離れた。
「リードつけてとけって言われたから」
「素直にありがとうって言おうと思ったのに、台無しなこと言ってくれるな」
しかし、素敵な贈り物であることは変わりないので、律はちゃんと「ありがとう」を伝えた。
「いつも身につけててほしい」
「ヘアピンだってつけてるよ?」
「首輪はまた別の話」
「首輪って言わないで。ネックレスと言ってください」
遥との話があった後なので、律は断りづらかった。
「体育の時以外はつけるよ」
本物の首輪ではなくてよかったと律が胸を撫で下ろすと、蒼乃の腕が律の方を掴み、そのままベッドの上に倒れた。
「蒼ちゃん?」
「まだブラが外れてるならひと手間減るかと思って」
「もう朝だよ! それに……昨夜たくさんしたじゃん!? まだ足りないの!?」
小声で力強く反論する。蒼乃はさらりと「足りない」と言ってのけた。
「律が可愛いのがいけない」
両腕を抑えられ、反抗も無意味にキスをされ、律の方も次第にスイッチが切り替わっていく。
「大丈夫。まだお母さんたち起きてこないから」




