第三十二話
我々は観測者。見ることしかできない。
~時空間のどこか~
「遊ぼうよ?遊ぶしかないよね?」牢獄の中でピエロは独り言を言い、部屋中を走り回り、笑っている。
彼の名前はゼロ。ブレイク達が生まれる前から牢獄の中に入っている極悪人。本業は道化師だったが、ある日を境に発狂し、人を快楽のために殺しまわった史上最悪の殺人鬼。
見た目は黒い髪にピエロの様な白黒の服。眼の下にはゼロという番号と黒色の涙のマークが彫られている。陽炎、連綿の創設者であり、この世の絶対悪である魔王ですらこの人物から生み出された。
では、なぜ彼がこの牢獄に閉じ込められているのか。それは禁断の魔法を介しているからだ。代償として七つの概念と、数百の能力が生贄となった。生贄になったものは帰ってこない。彼が牢屋からは解放されるまで。
時折、看守が確認しに来るが、部屋の中の凄惨さにすぐに引き返してしまうほどだ。地面には数百もの手足が。壁には血で文字や魔方陣が書かれている。臓器は宙に吊られていて、今もなお動いている。
「遊びたい!君もソウダヨ!」ゼロは空中に浮いて看守だったものと踊る。世界は回る。回る世界が。彼を中心として。
彼の能力は「自由」「混沌」混ざりあわないもの同士が重なり合った結果、最悪の産物を作り出してしまった。
禁断の魔法を使い能力を封じ込めていると世界は認識しているが完封することができていない。実際に彼は百年単位で生きているし、ありえない現象が牢屋の中で起きている。
「コレガカオス!!」そして中央にはゼロが存在している、空気に自由が満ち、混沌が居場所を探す様に暴れている。部屋は回転し。そして その
くう かん は観 測 するの すら
難 かし く
何が 掟 い る の か
わ カ ら
泣い。
此 処 だ
けは
普
通 の 空 間と して 存 在 しない 亜 空 間 に 放 り こ
ま れ た 。
「自由にやってtってる み たい いいいいだな」そ んな 空 間に
無謀な 人間 が 入り込 んだ。
「ソウダヨ!君もカオ,,,ってブレスじゃ ないか」ピエ ロ は 男を見 る と落 ち着 い た
様子を みせた。
「お前は喧しいから修復させてもらう」男が指を鳴らすと捻じれていた空間はもとに戻った。
蒼い髪に蒼い瞳はどこかブレイクを彷彿とさせるものがあった。しかしブレイクとは一線を画すような違いが複数見られた。周りには常に雷が走り、大剣の刀身は蒼く光輝き、何よりも成熟した体躯は荒々しさを持っていた。
「酷いなぁ。仮にも僕は神だヨ?邪魔はしないでくれよ」もとにもどった 空間に不満があるのか、ピエロは落ちていた臓器でジャグリングを始めた。
「お前のせいで面倒なことが起き始めているから止めに来たんだ」ピエロの周りに雷が走る。その気になれば一瞬で粉砕することが可能だろう。
「ふーん。祝福持ちとは敵対したくないから暫くはおとなしくしておくよ」纏わりつく雷を見て、ピエロはおとなしくなった。
「そうしてくれると助かる」満足したように男が空間を裂いて別空間に行こうとした瞬間にピエロが攻撃した。
「なんてね!ボクは僕さ!自由にさせてもらうヨ!!」空中に牢屋にあるはずのない道具たちが浮かびあがる。大玉に像。鎌に箱。楽器にナイフ。サーカスが始まろうとしている。
「餓鬼が,,,!!」男は瞋恚の炎を滾らせて力を溜め始めた。男は瞋恚の炎を滾らせて力を溜め始めた。男は瞋恚の炎を滾らせて力を溜め始めた。
「無駄!この空間じゃ僕が神サ!!」この空間で動けるのはゼロしかいない。他の物体、事象は全て動くことができない。それが自由を操る存在の力。
「バイバ~イ」男は鎌で切り刻まれた。男は鎌で切り刻まれた。男は鎌で切り刻まれた。男はナイフで串刺しにされた。男はナイフで串刺しにされた。男はナイフで串刺しにされた。男は真っ二つになった。
「ミンナ!新しい友達だヨ!」死体を歓迎するように無機物たちが動き始める。
こ
れ
か 混沌 は 世界からも
ら始まる
嫌われる。
サーカスは始まった
ばかりだ。
自由を迎えるために トランペットでも
吹いておこうか。
それとも 箱舟が 救ってくれるか?
『自由と混沌』
だけが答えを知っている。
俺たちは ただ、 見ることしか できない。 それも 極僅かな
情報しか。
「コレガ真の!!カオス!!リベラル!!僕だけの!!!世界!!」
狂気と正気が入り乱れる中心に
道化が回る。
天界も界天して
空から堕ちる。
この世界には
調和を
定める 存在が 必要だ。
見守ることしか 許されていない。
「僕ヲ解き放つ!!」牢獄は破れ、自由の欠片が散らばった。これに干渉できるのは同じ時空に存在するものだけ。そして彼と同等の存在、つまりは神しか触れない。だが神すらも触れない。彼は最強だから。
幸いなのは、ここが分岐点から最も遠いところであるということ。
ブレイク達にはまだ牙が届かない。
【行ってこい***お前は祝福持ちだ】
殺された男が蘇り、またゼロに立ち向かう。世界を、調和を取り戻すために。
「なんでもできる!」蘇った男とまたゼロは戦闘を繰り広げる。今度は遊戯のように、馬鹿にするように、片手をポケットに入れて、全ての攻撃を回避する。果たしてこれは戦闘と言えるのだろうか。否、これは一方的な惨殺に過ぎない。
「餓鬼が!!」男は大剣に雷を纏わせて、祝福を受けた一撃をゼロにぶつけた。しかし、そこにはゼロは居なかった。いや、彼は今、空間に存在しない。
「どこ見てる??遊べないヨ!?!?」男の頭に無数の鎌とナイフが落ちてくる。それは世界中に降り注ぎ、文明を崩壊させていった。彼はもう自由なのだ。
束縛するものは何もない。真の自由を彼は手にしたのだ。男はその光景を黙ってみることしかできない。まだ祝福が足りないから。軸が安定していないから。
結末は変わらない。軸がぶれても収束する。




