「七夕SS エンド後のもしもの世界」
吉水葵 視点
「うわあぁぁぁぁん、こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛ぃぃぃぃ」
と、大泣きして愛に許してもらってから数か月。
始まってしまったヤンデレ乙女ゲームのセカンドシーズン(続編)
ファーストの攻略対象者 緑川拓海が言うには、新たな攻略対象者が3名加わるらしい。
7月7日を迎えた今も、その3名が誰なのかわかっていなかった。
サポートキャラである愛が持つ端末は、各攻略対象者の好感度が映し出されるはずなのだけど、エラー表示のままで画面は真っ黒。情報は一切なし。
愛も乙女ゲーム自体ちゃんとクリアをしたことがないから皆目見当もつかないみたいで、私も警戒はしているんだけど、打つ手無し。本当にセカンドシーズンが始まっているのかも疑わしい状態だった。
そんな愛も、時々首に赤い線が入ったまま登校して来るからすごくびっくりする。
これも、私が愛にDV系ヤンデレ 赤松純也をけしかけたせいなんだけど……
赤松に文句を言いに行ったら、首に赤い線がくっきり。しかも両手首にもつけていて、思わず二度見してしまった。
唖然としていると、すごくいい笑顔の愛が「躾の最中なの」と言ったのが印象的。
……あれ? 意外とお似合い?
最近、変わった事?
クラスで愛の他にも女の子の友達ができた事かな。
すごく可愛い女の子で、彼女は3学期からこの学校に転校してきたの。
一瞬、まさか!? って疑ったんだけど、蓋を開けたら女の子でホッとしたよー。
続編が始まるらしいクリスマス過ぎてから、神経質になりすぎていたみたい。
その子とは、よく昼休みに一緒になるんだ。
女子力がすごく高いの。作ってくるお弁当がすごく美味しそうでさ、いつも「あーん」ってしてくれるけれど、それがちょっと恥ずかしいかな。
4月からの新任教師の先生は、実は……クリスマスにナンパして来た人でこんな偶然あるのかなって思った。
まぁこの世界ではヒロインをしている私だから……うん、ヒロイン補正で。
だから、ナンパされるのは珍しくないんだ。まぁ、こういう事もあるのかなっていう程度。
すごく熱心な先生なんだけど、たまに何を言っているかわかんないから、そういう時は適当に相槌を打ってたりする。ほんと、すっごく話が長いけど、よくジュースおごってくれるよ。
あ、そうそう、近所のレンタルショップおすすめだよー。
私好みの映画がすぐに見つかるの! 店員さんも愛想よくて彼のおすすめに外れなしだよ!
この前も棚のケースを落とした時に……
…………あ、ごめん。ちょっと、待ってね。
「お義兄さん、静かにしてくれませんか!」
ドンドンドンドン!!!!!!
「葵! 葵! 葵!! 何を怒っているんだ。でてきてくれ」
「……笹の葉に吊るしている私の写真を全部処分してくれます?」
「できるわけがないだろ?! なんてわがままを言うんだ! 数百という葵が! 僕の葵が!」
「……ごめんなさーい。私、お腹がぴーーぴーーで、大変なんですぅ。トイレくらい1人にさせてくれません?」
「や゛め゛て゛く゛れ゛。僕の可愛い義理の妹は、トイレなんて行かない天使なんだ。なぁ、この写真を見てくれたら思い出すか? 自分が天使だった頃を! これは葵が僕と出会う1年前に撮った写真で、それにこれは……」
あ、ごめんね。華澄ちゃん。
大丈夫、大丈夫、いつもの事だから。
後、15分くらいはもつよ。その後適当に相槌を打ってたら機嫌もなおるし、慣れた慣れた。
うふふふ。華澄ちゃんだってさ操縦がうまくなったじゃん。私の幼馴染もコツがわかればちょろいでしょ? 扱い方さえ間違わなかったら、ヤンデレなんてちょろい。ちょろい。…………あーうん。その節は本当にごめんなさい。うん。うん。ありがとう。こうやって、華澄ちゃんとお話しできるようになって本当にうれしいんだ。ねぇ、今度、舞ちゃんも誘ってみんなで……
え?
何?
転校生は本当に女の子かって?
新任教師が、え?
レンタルショップの店員も?
え?
スチル?
え?
まって?
リクエストありがとうございました。