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断罪予定の悪役令嬢は、とりあえず皆の意見を聞く事にしました~拝聴料10分10ディナールです~  作者: 西野和歌


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12/12

12

 卒業から三か月後、私は家族と共に過ごしていた。


「レオン元殿下の今回の処遇について、亡き王妃さまの祖国から抗議がきていてな」


 父が朝食の席で教えてくれた。

 あちらの国からすれば、自分たちの血を引くレオン様が国王になった方が、都合が良いのだろう。


「かの国は大国だが、こちらも昔とは違う。やっと、他国との同盟に励んだ陛下の努力が報われる」


 食事を食べ終えた父が、静かにナイフを置いた。


「というわけで、私は陛下と共に、他国に外交の為に同行する事になった」

「やだ、私も連れてってあなた」

「父上、お土産を宜しくお願いします」


 今日も家族は楽しそうで何よりだ。

 一家揃っての旅行……もとい追放がなくなったので、家族一同旅行カタログを見て悔しがっていた位だ。

 爵位があるうちは、どうしても父は仕事、母は社交とそれなりに忙しくて、旅行なんて時間がない。


「まあ、ダイアナの結婚式も近いし、それまでに帰ってきますよね?」


 母の言葉に、父は頷く。

 そうなのだ。

 あれよあれよと根回しが済んでおり、気づけば私はギル様と婚約どころか飛び越えて結婚確定となっていた。


 式には、世話になった学園のみんなも招待したいが、レオン様とソーニャさんだけは、来ることは叶わない。

 なぜなら二人は国を騒がしたとして、現在は仲良く幽閉&強制労働中だからだ。


「でも、ソーニャさんは、きっと後悔なんかしていないわ」


 愛を貫く姿勢においては、私は彼女を尊敬している。

 私も、彼女のようにギル様への愛を貫けるだろうか?


「ダイアナ、ギル様が迎えに来たわよ」

「はーい」


 今日は二人で、港に行くのだ。

 迎えに来たギル様と共に、私は豚の貯金箱を大事に抱えて港に向かう。

 沢山の船がある中で、私はすぐさま目的の彼女を発見した。


「ハンナちゃーん!」

「ダイアナ様!見送りに来てくれたんですか?」


 当然よ!大事な推しが、勇気をもって他国に留学に行くんだから!

 小さな鞄一つのハンナちゃんを、存分に愛でてから、私は別れの挨拶を交わす。


「気をつけてね。お手紙頂戴ね。無理しちゃ駄目よ?あと、ええっと」

「ダイアナ……流石にハンナ嬢も子供ではない」

「ハンナちゃんは、私のヒロインなのよ!理想で愛なの!」


 私がギル様に熱く訴えた後、ハンナちゃんに手に持っていた物を差し出した。


「こ、これは何ですか?」

「慰謝料よ?っていうのは冗談で、餞別よ」


 ズシリと重い豚ちゃんには、あの一か月間のコインがたっぷりと詰まっている。

 皆の想いと優しさが詰まったそれは、ハンナちゃんこそ相応しいと私は思ったのだ。

 遠慮するハンナちゃんに、私は無理やり押し付けた。


「本当に、いいんですか?」

「ええ、お返しはハンナちゃんの作った美味しいパンでお願いね?」

「は……はいっ!」


 涙ぐむハンナちゃんを見て、釣られて私も涙ぐむ。

 ギル様の新設した補助金で、学費や渡航費は賄えたとしても、生活費は必要だ

 側に私がいれば、すぐさま助けてあげられるのに。


「やだ、このままついて行こうかしら」

「駄目だぞダイアナ」


 ギル様に、ガッツリと止められてしまった。

 そこで、アッと思い出した私は、ポケットから一枚の金貨を取り出す。

 そう、レオン様に貰ったあの金貨だ。


「これは、元王子様からのお詫びよ」

「ま、まって下さい!一万ディナール金貨なんて高額すぎます!」


 まあパン一個分の10ディナールとは、次元が違うのは確かだ。

 けれど私は、ハンナちゃんの手に渡った豚ちゃんに、チャリンと金貨を入れた。


「あなたこそ、レオン様から貰う権利があるわ」


 困った顔のハンナちゃんも可愛いなぁ。ついデレデレとしてしまう。


「私が持ってると呪われそうだから、ハンナちゃんにあげるね」


 私が茶化した途端に、ハンナちゃんはプッと噴き出した。


「あはっ、はははっ、ダイアナ様、あはははっ」

「うふふっ、ハンナちゃん大好き」

「私もです、ダイアナさん」


 互いの目に浮かぶ涙は、別れが寂しくて心配で、でも笑って幸せで。

 船に乗り込んだハンナちゃんに、私は姿が見えなくなるまで手を振り続けた。


 帰りの馬車でギル様が尋ねてきた。


「最初から、ハンナ嬢にあげるつもりだったのか?」


 私の答えは単純明快だ。


「いえ、不労所得は税金が高い事に気づきました」

「……そうか」


 馬車はパカパカと城に向かう。

 この後、陛下より呼び出しを受けているのだ。

 何の話だろうと、私は流れる景色を車窓から眺めていた。


「……強引に、結婚を進めた事を、怒ってるのか?」

「えっ?」


 フッと我に返り、向かいのギル様を見た。

 眉間にシワを寄せたギル様が、何かに耐えるように私を見ていた。


「どうしたんですか?」

「君を、最愛の友人から切り離したのは俺だ」

「ハンナちゃんですか?仕方ないです」


 そう、私は大きくため息をつく。


「ハンナちゃんの幸せが、しばしの別れなら、私は耐えるだけです」

「君を解放する事もできた」


 声を振り絞る様に、ギル様は目を逸らす。

 私はジッとただ、彼の言葉を待つ。

 ガタガタと小さな振動が、私たちの体を揺らす。


「君を手放したくないんだ、ダイアナ」

「あのですね……」


 私は思い空気を取り払うように、あえて大きなため息をついた。

 指をピシッとギル様に突き出して、睨みつける。


「推しへの愛と、あなたへの愛は別物です。誰が、あなたから離れたいと言いましたか?」

「その推しというのが、いまいちわからない」

「それを語りだしたら、三日はかかります。コホン……私が不満なのは一つだけ」

「なんだ?」


 本気でわからないのか、縋るような目で見ないでよ。

 なんだが意地悪したくなった私は、悪役令嬢らしくフンッとそっぽ向いた。


「女心のわからない人だわ。ご自分で考えて下さい」


 何か言いたげなギル様が口を開くより早く、馬車は城に到着した。

 陛下のいる謁見の間に、私たちは向かう間も口を聞かなかった。


 答えを言うのは簡単だけど、私からは言いたくないのよ。

 だって結婚するんだよね?

 だったらどうして、してくれないのよ馬鹿。

 兄弟揃って馬鹿だわ。


 重々しい黄金の扉が開き、私たちは赤い絨毯を踏みしめた。

 椅子に座り待つ陛下の前で、私たちは膝をつく。


「よく来たダイアナ。主役も揃った事だ」


 何が始まるのか、嫌な予感しかいない。

 というか、陛下が話があるからとしか聞かされていない私は、俯きながら横目でギル様を見た。

 涼しい顔で、黙っている彼に視線を向けていると、あちらも私に気付いたのか互いの視線が絡まった。


(どういう事よ!)


 という意味で、目をパチパチさせたら、口元でクスリと笑われた。

 わかってて無視したわね!ギル様の意地悪!


「私は、次期後継者のギルの婚姻が済み次第に、私は王位を息子に譲り引退しようと思う」


 厳かな陛下の言葉。


 ――は?


 どういう状況?結婚したら引退?聞いてませんが?

 いや、聞いてないのはあと一つ。ギル様からのプロポーズも、まだなんだけど?

 うん、そこが一番怒ってるんだよねって……違う!


「では二人とも、立つがいい」


 私たちは、ゆっくりと立ち上がり姿勢を整えた。


「というわけでダイアナ。私はもう一人の馬鹿息子を見張るついでに、自らも罰として辺境に去ろうと思っている」

「……お言葉を宜しいですか?」

「うむ、許す」

「ありがとうございます」


 私は無表情で、陛下を見つめた。

 ギル様が、静かに私の様子を伺っているのがわかる。

 少し息を吐き、震える手をギュッと握りしめた。


「恐れながら陛下……私はまだギル殿下にプロポーズすら受けておりません」


 途端に陛下が、息をのむのがわかった。

 それだけでなく、当の本人まで口をあけて唖然としている。


(そうよわかった?根回しで周囲を固めた手腕は認めるけど、肝心なものがないのよ)


 私だって、ギル様は好き。

 でも、でもさ?結婚だよ?

 せめて普通の女の子みたいに、それ位は夢見させてよ。


 静まり返った空間の中で、私は静かにドレスの裾を持ちカーテシーをした。


「王位継承の是非については、私が口を出すものではございません。ですが、本人より結婚したいという言葉もない以上、このまま私の人生を勝手に進められるのは、もう二度とごめんです」

「ギル……お前は、何をしていたんだ?」


 震え声でワナワナと陛下が息子を責めたが、ギル様はショックな顔を隠す事なく、固まったままこちらを凝視している。


「陛下、帰宅させて頂きますね」

「わかった……」

「待ってくれ!ダイアナ!」


 待ちません!ちょっと怒ってるんだからね!

 私は深く礼をして、クルリとギル様に背を向けた。


「ダイアナ!」


 再度名を呼ばれたが、振り返らない。

 ていうか、泣きそうだもん。

 入って来た扉が、ゆっくりと開く。

 後ろから駆けてくる音が聞こえた。

 手を掴まれそうになり、私は振り払う。


「ちょっとは、反省して下さい!」


 涙目の私を見て、ギル様は伸ばした手を静かに降ろす。

 そして、今度こそ私は一人城を出たのだった。


 家に帰宅した私は引きこもった。

 子供じみた癇癪を起こした事で、自己嫌悪に落ちていた。


「馬鹿、私の馬鹿。本当は嬉しい癖に、もっと甘えようだなんて馬鹿よ馬鹿」


 だって憧れてしまったんだもん。

 ハンナちゃんみたいに愛する人に可愛く見られたくて、ソーニャさんみたいに、愛を貫きたいなって。

 私だって、あなただけのヒロインになりたいと、欲張ってしまった。


「でも、相手は次期王様が確定だし、そうなったら私も后だもんね」


 仕方ないかと、私は明日には謝罪しようと諦めた。

 モヤモヤと思案しているうちに、いつしか夜が訪れていたらしい。

 部屋の窓からは、綺麗な月が見える。

 夕食も断ったから、家族が心配しているに違いない。


「まったく、本当に私は何をしてるんだろう。こんな事じゃ、ギル様を支えられないわ」


 あああっと、窓枠に顔を伏せて悶えていた。

 立派な王妃になって、ハンナちゃんが戻ってきたら胸を張りたいのに!

 っと、私は気配を感じて顔をあげた。


 私の部屋は二階。見通しが良く、遠くの正門まで見える。

 何もいない。気のせいかと思ったが、私の勘が告げる。


「んー私の家に侵入できるって、凄いな」


 なにせ武人なのは家族だけでなく、使用人たちも父の元部下たちが含まれているのだから。

 ある意味、城より厳重な我が家に侵入した犯人を、私はすぐに認識したと同時に、窓枠に突っ伏した。


(ここで、その存在感なしが威力を発揮するの?)


 月の影に隠れる紅葉より鮮やかな赤毛の長身は、フッとこちらを見上げた。


「ダイアナ……」

「何してるんですか、ギル様」


 頭痛を堪えて対応する私と、目尻を下げ苦笑いするギル様。

 上から見下ろす私は、帰城を促す。てか、今何時だと思ってるの?もうすぐ日付が変わっちゃうよ?


 ――まあ、会いに来てくれたのは嬉しいけど。


「今、そっちによじ登る」

「はい?」


 何言ってるの?この屋敷は、建物周りに木を植えてないのも、あえて煉瓦のみで装飾が最低限なのも、外部からの侵入禁止の為だ。


「いや待って?玄関から……」

「嫌だ。君に誠意を見せる!」

「壁から、よじ登るのが?」


 叫ぶ私の声に、屋敷の誰も反応しない。


(面白がって、見学してるわねみんな!)


 止める暇もなく、ギル様は煉瓦の隙間に指を入れ、壁を攻略し始めた。

 だが、すぐにドタン!と落下する。

 駄目だ!見ていられない!


「お話なら、私がそちらに参ります!」

「絶対に登る!」


 私の言葉は、即座に却下された。

 なぜそこまで意地を張るの?

 登ってはドタンと落ちては、額に汗を流すギル様に動揺する。

 だから、玄関から入った方が早いと思うんだけど……。


 挑戦する度に、少しずつ攻略出来てるけど埒が明かない。

 大きくため息をついて、私はヒントをあげた。


「石を良く見て下さい。角が欠けてなおかつ色が少し変色している煉瓦です」

「ああ、あるな」


 腕をまくり、額の汗を荒くぬぐったギル様が気付く。

 侵入防止だが、家族が逃走する時用に、この外壁には攻略方法がある。


「その石に指を入れて、そこから私の誕生日の数字順に、近くに次の煉瓦があります」


 ギル様に伝わったかな?ああ、私の誕生日を教えてなかったっけ?


「あのですねー私の誕生日は……」

「わかった!まずは七だ。ああ、七段上に、あるな。ふむ、次は二で右上か、次が七で……そして、これを繰り返すと足場が見える」

「えっ、こわっ」


 頭が良すぎるギル様は、私の誕生日の七月二十七日だけでなく、その数字一つ一つをバラして、上段に向かって配置されているカラクリを見抜いてしまった。


 単純に七段上、次は二、そしてまた七つの繰り返しで、よく見れば足場用の石があるのだが、まあ普通はわかんないよね?

 とか言ってると、目の前に段々と近づいて来るギル様と目が合った。


「ひえっ!」


 なんとなく、窓から離れて後ずさると、逃がすまいと勢いよく窓からギル様が飛び込んできた。

 窓の外の月の灯りがあいまって、神秘的を通り越して怖い。


「っ……ハァハァ、着いたぞ!ダイアナ」

「お……おめでとうございます?」


 なんとか笑って誤魔化そうとしたが、口の端がヒクついてしまう。

 待って待って、目がギラついて怖いです!あなた一応、王子様!

 息を整えたギル様は、流れる汗を腕で拭う。

 その姿が、ちょっと野性的で見惚れてしまった。

 まさか、こんなに男らしい仕草が出来るとは……。


「男だからな」

「え、聞こえてた?心の声」

「君は、たまに口から心の声が漏れ出ているんだ」


 そう言って苦笑されてしまった。

 なんだか、大人びた妖艶さすら感じてしまい、顔が赤くなっていく。

 いやダメだ。負けるな私。


「とっ、ところでゴールもした事ですし、お帰りはあちらで……」

「はいと素直に帰ると思うか?」


 ですよね……。

 きっと昼間の城での出来事の、小言を言われるのだろう。

 覚悟を決めて、私は神妙に大人しくする。


 大きな体が近づき、私の頬にソッと手を添えられた。

 もしかしてキスされる?と一瞬目を瞑ったにも関わらず、なぜかギル様は私を通過して歩いていく。

 その先にあったのは、枕元に置いてある豚さん貯金箱二号。

 ポケットのコインをチャリンと入れると、ギル様は得意満面で振り返る。


「これで大人しく、俺の話を聞いてくれるな?」

「……10分10ディナールです」


 なぜまたコレをする?

 軽く白目気味の私の前に、ギル様は優しく微笑みながら向かい合う。

 互いに並び立つと私の顔の高さに、ギル様の肩がある。

 幅も私の倍はあるし、腕の太さもまったく違う。


「ダイアナ……お前の全てを買い受けるのは、幾らだ」

「非売品なんです」

「ぷはっ!」


 真面目に答えたのに、なぜか口元を抑えて笑いに堪えるギル様。

 というか、私は緊張も解けたのでギル様を叱った。


「ギル様!女を金で買ってはいけません」

「すみません」

「深夜に女性の部屋に侵入するなんて、最低です」

「会いたくて、つい」

「だから……」


 会いたいって言われた嬉しさで、勢いが落ちてしまった。

 だから、ダメですって。

 そんな優しい目で見ないでよ、大好きなのよ、その緑の目。

 薄い唇も、ほどよい高さの鼻も、笑うと目尻に少しシワが入るのも全部好き。


「大好きだから、だからっ……」

「ああ、俺も愛してる」

「ずっと一緒にいたくて、結婚も嬉しくて、なのに……」

「俺が悪かった」


 気付けば温かい胸に包まれている。

 ギル様の香りに痺れて、涙が滲む。

 好きすぎると、素直になれない自分の弱さを、あなたが教えたんだ。


 背中に回った彼の腕に、力が込められる。


「本当は、もっといい雰囲気とか、似合う指輪を用意してからと思ってた」

「何が」

「愛しています。結婚して下さい」

「っあ……」


 ビクンと私の身体が跳ねた。

 だけど、もう捕まえたとばかり、私は彼の腕から逃れられない。

 耳元で、低い優しい声が囁いた。


「俺だけのダイアナに、なって下さい」

「わ、私はっ」

「ずっと、側に……ダイアナ」


 顎をつかまれ、近づく唇を私は静かに受け入れる。

 答えなんて決まってる、だって私もあなたを愛してるから。


「まだ、君を口説いても?」


 お道化るギル様に、私は泣き笑いして言った。


「はい、時間切れです。次は妻として、特別価格で対応してあげますね」

「時間制限はある?」

「ふふっ、死が二人を分かつまでです」


 私たちは、この夜やっと身も心も夫婦として結ばれた。


 なぜか、次の朝にはご馳走が並び、私一人が顔を赤くしていたんだけど?

 ギル様は、いつもの無の気配で、静かに食事を終えて城に戻って行った。


 こうして間もなく、私たちは結婚した。

 夫婦となってからも、私は推しの手紙に舞い踊ったし、夫は臣下と同化して存在感を消したりしていた。

 陛下は自らの過去の負い目から、すぐさまギル様に王位を譲り引退した。

 そして辺境のもう一人の息子を見張り、教育をやり直すべく頑張っているらしい。

 当の長男は、へこたれずに労働場で威張っているらしく、むしろ天晴だった。

 まあ、ソーニャさんがせっせと世話を焼いてるみたいだし、楽しそうで良かったよ。


 執務を手伝うようになった私の机には、新たな豚さん二号が置いてある。


「ダイアナ様、少しご相談が……」

「ええいいわよ?10分10ディナールね?」


 私の日々は、静かに流れていく。

 だが知らなかった。

 いつの間にか世間では、王妃様のカウンセリングが10ディナールで的確だと噂され、あげく後世の歴史では、10ディナール硬貨に私の顔が刻印された事なんて。


「ダイアナ、もう一人の身体じゃないんだから、無理して執務は手伝わなくていい」


 近々、父親となるギル様が、いつの間にか現れていた。

 過保護に加速がかかりつつ、愛情は日に日に増していく。


 私は豚さんを見て、口元に笑みを浮かべる。

 はい、これこそががハッピーエンドなのよって。


(完)



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― 新着の感想 ―
すっごい面白かった!周りの事は見えすぎるぐらい見えてるのに自分の事は 見えてない、しかも気合い入れて悪役になって罵られに行くってwwギル様 とヒロインと国王だけがちゃんとまっすぐに見れてると言うね! …
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