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HYDRA CHRYSALIS -TRANSCENDENCE- (ヒドラ・クリサリス トランセンデンス) ―選択の先で、世界は書き換わる―  作者: Nao9999


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第9話 兆し

静かに始まった変化は、

もう“無視できない段階”に入っていた。


それは現象か、

それとも意思か。

HYDRA CHRYSALIS


第9話 兆し


街の奥へ進むほど、

違和感は強くなっていった。


音が少ない。


いや――


“消されている”。


「……静かすぎる」


誰かが呟く。


榊は答えない。


ただ歩く。


視線は前。


止まらない。


「おい、本当にこの先でいいのか」


背後からの声。


榊は短く答える。


「来てる」


それだけで十分だった。


何が、とは言わない。


だが全員が理解する。


この異常には“中心”がある。


そして今、

そこへ近づいている。


角を曲がる。


その瞬間。


空気が変わった。


重い。


粘りつくような感覚。


「……なんだこれ」


肌にまとわりつく。


湿気ではない。


圧力。


見えない何かが、

空間に満ちている。


「下がれ」


榊が手を上げる。


全員が止まる。


その視線の先。


道路の中央。


水たまり。


ただの水。


……のはずだった。


「……動いてる」


ゆっくりと。


だが確実に。


波紋が広がる。


外からの刺激はない。


それでも。


内側から。


「……来るぞ」


榊の声と同時。


水面が盛り上がる。


膨らむ。


形を持つ。


だが今回は違う。


人の形ではない。


もっと歪で。


不安定で。


だが――


大きい。


「……なんだよ、あれ」


誰かが後ずさる。


水が立ち上がる。


高さは二メートルを超える。


形は定まらない。


崩れながらも維持されている。


まるで。


“試している”ように。


「……未完成か」


榊が呟く。


観察するように。


敵を見るのではなく。


現象を見る目。


その瞬間。


水が動いた。


速い。


一気に距離を詰める。


「散開!」


叫び。


全員が動く。


水の塊が地面に叩きつけられる。


衝撃。


アスファルトが砕ける。


「威力が上がってる……!」


誰かが叫ぶ。


榊はすでに動いていた。


水が集まる。


自分の周囲へ。


呼吸するように。


「……来い」


応じる。


水が腕に絡む。


流れる。


固まらない。


「まだ安定してねぇな」


敵を見る。


形が揺れている。


制御が甘い。


だが。


(時間の問題だ)


理解していた。


これは“途中”だ。


「終わらせる」


踏み込む。


水と水が衝突する。


衝撃。


弾ける。


だが。


(やっぱりだ)


榊の目が細くなる。


相手が“反応している”。


ただの動きではない。


対応している。


「……見てるな」


水の塊が一瞬止まる。


まるで肯定するように。


「チッ……!」


攻撃。


だが読まれる。


回避される。


反撃。


水の槍が伸びる。


榊の頬をかすめる。


血が流れる。


「くそっ……!」


距離を取る。


呼吸を整える。


(違う……)


単純な戦闘じゃない。


これは。


(観察されてる)


理解した瞬間。


背筋が冷える。


「おい……!」


仲間の声。


振り向く。


別の水たまり。


そこでも。


同じ現象が始まっていた。


「……増えてる」


一つじゃない。


二つ。


三つ。


同時に。


「……やばいな」


榊が小さく笑う。


だがその目は笑っていない。


「完全に――」


言いかけて。


止める。


言葉にするまでもない。


もう明らかだった。


「……広がってる」


水は。


一部じゃない。


街全体へ。


「撤退するぞ!」


即断。


「ここじゃ捌ききれねぇ!」


誰も反論しない。


全員が理解している。


これは“戦い”じゃない。


“拡大”だ。


だが。


その瞬間。


背後で音がした。


ポタリ。


振り向く。


壁。


そこに。


水があった。


ゆっくりと。


文字を描くように。


動いている。


「……は?」


誰かが声を漏らす。


水が形を作る。


線。


曲線。


そして――


“文字”。


「……これ……」


榊が近づく。


目を細める。


水が完成する。


そこに浮かび上がったのは――


「……見ている」


沈黙。


誰も動けない。


理解が追いつかない。


「……ふざけてんのか」


誰かが呟く。


だが。


榊は笑わない。


むしろ。


納得したように。


小さく息を吐く。


「……やっぱりな」


低く言う。


「始まってる」


今度は、

誰も否定しなかった。


水はもう。


ただの現象ではない。


“観測している”。


そして。


選び始めている。


―――続く

第9話を読んでいただきありがとうございます。


異変はさらに広がり、

水は“意思”を明確に示し始めました。


次話では、この現象の核心にさらに近づきます。


ぜひ続きもご覧ください。

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