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HYDRA CHRYSALIS -TRANSCENDENCE- (ヒドラ・クリサリス トランセンデンス) ―選択の先で、世界は書き換わる―  作者: Nao9999


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第8話 余波

最終話「選択」の、その後。


あの決断は、

本当に終わりだったのか。


それとも――

始まりだったのか。

HYDRA CHRYSALIS


第8話 余波


静寂が残っていた。


あの瞬間の後。


すべてが終わったはずの場所に。


音がない。


風もない。


ただ、空気だけが重く沈んでいる。


「……終わった、のか」


誰かが呟く。


だがその言葉に、

確信はなかった。


地面は濡れている。


水があった痕跡。


だが、

そこにはもう何もない。


敵も。


異形も。


“あの存在”も。


消えている。


「水城は……?」


別の声。


誰も答えない。


視線だけが、

同じ場所に向けられる。


そこにいたはずの存在。


境界だった男。


だが今は、

何も残っていない。


「……消えたのか」


否定も肯定もない。


ただ事実だけが、

そこにあった。


榊が立っている。


動かずに。


その場から。


視線は一点。


何もない空間を、

見続けている。


「……違うな」


小さく呟く。


誰にも聞こえないほどの声。


だが確かに、

理解していた。


(消えたんじゃない)


空気が、変わっている。


わずかに。


だが確実に。


(広がってる)


目には見えない。


だが感じる。


水の“気配”。


「……おい」


榊が言う。


振り返らずに。


「ここ、離れるぞ」


「え……?」


戸惑いの声。


「もう終わったんじゃ……」


「終わってねぇ」


即答だった。


「これは……」


一瞬、言葉を選ぶ。


そして。


「残ってる」


その言葉に、

全員が息を飲む。


「残ってるって……何がだよ」


榊はゆっくり振り返る。


その目は、

戦闘の前とは違っていた。


冷静で。


静かで。


どこか――


理解している目。


「水だ」


短く言う。


「全部じゃない」


だが。


「一部が、残ってる」


沈黙。


「それがどうしたってんだ」


苛立った声。


榊は答えない。


代わりに。


足元を見る。


アスファルト。


乾いているように見える。


だが。


「……見ろ」


指差す。


小さな水滴。


一つ。


ただの水。


だが――


それが動いた。


わずかに。


ほんの少し。


だが確かに。


「……今」


誰かが言う。


「動いたよな」


誰も否定しない。


「……始まってる」


榊が言う。


低く。


確信を持って。


「何がだよ……」


その問いに。


榊は一瞬だけ、

空を見た。


何もない空。


だがその先に、

何かを見ているようだった。


「変化だ」


一言。


重く。


「終わりじゃない」


そして。


「これは――」


言葉を切る。


だが誰もが、

その続きを予感していた。


「続いてる」


その瞬間。


遠くで音がした。


ポタリ。


ポタリ。


水の音。


誰かが振り返る。


音のする方向。


ビルの壁。


そこを。


水が伝っていた。


ゆっくりと。


逆らうように。


「……おい」


誰かが声を上げる。


「これ……」


水が増える。


一本。


二本。


三本。


壁全体に広がる。


まるで――


“血管”のように。


脈打つように。


動いている。


「……マジかよ」


榊は見ている。


冷静に。


そして。


小さく息を吐いた。


「……やっぱりな」


理解していた。


あの“選択”が、

何を意味していたのか。


それは終わりではない。


“解放”だった。


水は、消えていない。


抑えられていただけだ。


そして今。


世界に――


戻り始めている。


「……行くぞ」


榊が言う。


歩き出す。


その背中に、

迷いはない。


「どこにだよ」


問いかけ。


榊は振り返らない。


ただ一言。


「確認しに行く」


何を。


とは言わない。


だが。


全員が理解していた。


このままでは終わらない。


戦いは。


形を変えて。


続いていく。


そして。


それを止められるのは――


もう限られた者だけだ。


榊は歩く。


静かな街を。


変わり始めた世界を。


その中心へ向かって。


―――続く

ここから物語は、新たな段階へと進みます。


「選択」は終わりではなく、

次の変化の始まりでした。


この先の展開も、

ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。

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