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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第二章「王都学院編」
22/22

日常

《愛の派閥・第二会議室》

「さてさて、頭領さん。わざわざあの子じゃなくてよかったのにあの子にしたのはあなたの趣味でありますか?」

「そうそう」

「わざわざ新入生じゃなくていい」

 レイが退出した後の会議室、そこには愛の派閥の頭領、総長、右翼、左翼がいた。

「わたくしの記憶では助っ人は一般枠の人を採用して、下級生には下級生にしか出場できない種目を任せるっていうのが慣例だったと思うのですが?」

 エイリスのその問いにレイシナムは答える。

「まぁ、確かにエイリスの言う通りね。まぁ、私の趣味が入っているっていうのは否定しないわ、あの子可愛いし」

 レイシナムの言葉に一同呆れる。右翼と左翼はため息までついた。

「でも、理由ならちゃんとあるわ。まず第一に彼の魔術。非体系化魔術である魔術を無効化する魔術、これは非常に希少よ。そうなると点数の高い上級生の種目に採用する、これは当然のことだと思うわ。第二に他派閥の動向が気になること、大抵一般枠の人からの助っ人は如何にして裏切り者を出さないかの戦いよ。一昨年先輩たちがひどい目にあってたじゃない、アレの二の舞いは防ぎたい。そうなると私たちで手塩にかけて育てた後輩のほうが信頼できるでしょ?」

 レイシナムが意外と考えていたという事実に皆驚いた。てっきり本当に趣味だけで選んだのではないかとみんな思っていたからだ。

「確かに」

「それなら納得」

 双子はレイシナムの答えに納得する。エイリスも言葉にはしないが頷いている。その様子を見てレイシナムは胸を撫で下ろした。

(危なかったわ……なんとか言い訳をとっさに思いついてよかった。これでなんとかレイ君と触れ合う口実ができる!)

 レイシナムの頭は煩悩にまみれていた。先まで派閥のためといいながら熱弁したのは真っ赤なうそである。いいや、事実ではあるが本心ではないというのが正しい。ただただレイシナムは、新しく入学してきた新入生を愛でたいのだ。

 そんな頭領に気づかないままその日の会議は終了した。



《レイ視点》

 僕が部屋に帰り着く頃にはもう日が沈みもうすぐで夕食の時間というところだった。

「ただいま、バル」

「あぁ、おかえりー」

 僕が部屋に入ったときバルは机に向かっていた。何を勉強してるのかと横からのぞいてみると物理と今日の魔術基礎論の復習だった。

「わかんない感じ?」

 筆が止まってるバルに僕は問いかけた。どうやら問題を解いているようだが、分からない様子。

「あぁ、ちょっと物理がな……どうも運動方程式ってやつがよくわかんねぇんだよ。加速度の上に矢印があったりなかったりするのはなんなんだよー」

 見れば滑車の問題。

「レイー、お前わかったりしね?」

「んー、僕もぱっと見じゃわかんないよ」

 僕は諦めて自分の机に向かった。明日から始まる生物の授業の予習をしようと教科書を取り出したところでさっきのことを思い出した。

「ねぇバル」

「んー、なんだ?」

「バルってさ、彼女欲しい?」

「欲しいに決まってんだろ」

「欲しいかぁ……ちなみに年上? 年下?」

「年上」

「何歳くらい上までならいける?」

「女性って若く見える人はとことん若く見えるんだから年齢ってあんま関係なくね?」

「……素敵だね」

「だろ」

 僕たちは目を合わせず、十五秒ほどでこの会話を終えた。淡々と事務的に。

「で、いきなりどうしたよ。レイにはアイラがいるんだから縁遠いと思ってたんだけど」

 バルが聞いてきて僕はどう誤魔化そうかと悩んだ。

(レティシア先生の話を出すのはマズイ。ここで勝手に動いてレティシア先生への印象が悪化したとき僕が被害を被るかもしれない。同じ派閥の先生に嫌われるのは今後の学院生活への支障が大きい。ここでリファーの名前を出すわけにもいかない、アイラの話は……アイラに伝わるとまずいな。レイシナム先輩…………使えるな)

 この間、半秒。

「僕の派閥の先輩が、彼氏欲しいって言ってたのを聞いてね。その先輩が年下がいいって言ってたからもしかしたら一年生でもそういう先輩と付き合うことってあるのかもって思ってね、その流れで聞いただけだよ」

 うそである。そんな話は一切聞いていないし、してもいない。レイシナム先輩の顔を思い浮かべながら僕はとりあえずデタラメを言った。

「……まぁ、文脈は飛んでるけどわかったわ。あぁー疲れた! おい、レイ! 飯行くぞ飯!」

 バルは大きく伸びをして立ち上がった。仕方がないと思い僕も手を止め立ち上がる。

「リファーも呼ぶ?」

「まぁ、二つ隣の部屋だし寄ってこうぜ」

「そうだね」

 僕たちは部屋を出てリファーの部屋の目の前まで来た。僕は軽く扉を叩いた。

「リファー、ご飯食べに行こう!」

 僕がそう言うと中からはガサゴソと物音がした。

「え! レイ! ちょっ、ちょっと待って……キャー!」

 中からやはり男子とは思えないほどかわいらしい悲鳴が聞こえてきた。でも今回ばかりは心配が勝る。

「リファー、リファー! 大丈夫!」

「だ、大丈夫だか……キャー! ちょっ、アルス君! 二人に説明してっ、キャー!」

 僕たちが扉の前でしどろもどろしていると扉が開いて一人の少年が出てきた。

「アルス君」

 アルス君、リファーの同室で僕たちと同じ年齢だけどとても背が低い。一部の先輩方にはもう既に熱狂的なファンまでいるらしい。

「えーっと、どうやって説明しよっかな」

 アルス君が言葉を考えている間も部屋の中からはジタバタと音が聞こえてくる。

「えーっとね、リファーは部屋の中でファッションショー? ってやつをしてたら服が散らかりすぎて躓いて転びまくってるだけだから暫く待っててもらったら出てくるよ」

「そ、そうなんだ」

 アルス君はそれだけ言うと部屋の中に戻っていった。言われた通り待ってると顔を真っ赤にしたリファーが中から出てきた。

「お、お待たせしましたぁ」

「お、おう」

 そのしおらしい姿にバルも思わず顔を赤くする。

「はぁ、それじゃあごはん食べに行こう」

 僕たち三人は横一列になって食堂まで向かった。

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