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雑談  作者: waterflea
プロローグ
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「渋沢栄一って、日本に株式会社や銀行を広めたという功績もあるらしいわね」とゼロダは、cinnamon珈琲を飲みながら言った。「株式は出資、銀行は融資。株主権を債権というのかは分からんけど、債権という抽象概念を作ったことで、格段に事業を行いやすくなったわけ。まず、何か事業を行うことを考えてみる。複数人で組合のようなものを作って行うが、そのときには役割分担を決める。団体を代表して対外活動を行う者が要る。これが代表。誰が事業の内容を決めていくのか。これは代表である必要は無い。皆で決める。しかし、各人が団体を代表すると、取引の相手方保護が不十分になり得る。しかし、事業には資金が必要。そこで、株式を発行することで出資を募る。株主は自益権と共益権を出資の対価として手に入れる。これは出資を行わしめるには合理的な権利なのだ。自益権のみとか共益権のみ、にしたいならば、株主は、それを選択することが出来ることもある。つまり、出資者には、その事業を支援することを社会貢献としてのみ行いたい人、営利目的としてのみ行いたい人、どちらも兼ねている人、がいる。また、経営に口出ししたい人としたくない人がいる。経営に口出ししたくない人は共益権には興味が無いということになろう。逆に、経営に強く参画したい人は、株式の持分割合について大きな利害を感じるだろう。営利目的を全く考えない人は、自益権には興味が無いということになろう。このような多様な出資者各々の性格に対応できるように株式の種類も色々ある。株式の譲渡を認めることで、投下資本の回収を図れる余地が増えるため、出資を促す観点からも、株式譲渡は自由なのが原則である。しかし、経営に強く参画したい人ばかりが株主の場合には、株式全部に譲渡制限を付けるべきである。これを非公開会社という。株式会社の本来の使い方と異なるかもしれないが、色んな種類の会社を認めると、そのほうがややこしいわけである。つまり、そのような非公開会社の場合には、最初に集まった組合員で会社の株式を分け合って所有し、自ら従業員として働きながら、株主総会をも自ら開く。こうすれば、組合時代と何ら変わらない運営を行うことが出来る。税制優遇や信用向上が付与されるので有用である。株主割当で新株を発行し続ければ、事業が大きくなり、従業員が増えても、会社支配権は最初の組合員に帰属したまま。株式は巨大な資産と化すことになる。そこで、株式を第三者に売れば、現金に変えることが出来る。会社支配権は手放すことになるが、その会社の事情に通じていることからすると、従業員や取引先のため、会社が潰れないように、経営者として株主総会にて選任されることもあろう。公開会社、特に上場会社では、株主の目的が投下資本を増やすことにあるか、社会貢献その他にあるかは分からないが、経営参画の意思はない場合が多かろう。そうなると、持株割合に興味が無いので、新株発行は取締役会決議のみで行うことが出来る。また、一度発行された株式が転々流通しがちなので、株式発行無効事由も限定的。株式は主に会社の資金調達のために発行されるものであり、経営陣の会社支配権維持目的の発行等は差止事由になる。もっとも、これも無効事由とはならない。株主総会は、役員選任、定款変更、事業譲渡といった会社の骨組みに関わるような重要事項について、承認する機関。或いは、それらを決める会社の最高意思決定機関。ただ、経営の細かい事項は、どう考えても分からないので、取締役会が決める。取締役会は、多額の借財など重要な事項についてはやはり制限があるが、代表取締役に経営事項の決定を一任出来ることもある。実質的には、企画が従業員…平社員、係長、課長、部長…から取締役にまで上がる。同様に、共益には株主提案権といって、議題や議案を株主は株主総会に提出出来るので、そこで企画を事業とすることも可能だと思われる」

「自益権のシステムが、放置しておいても、勝手に資産が増える、という性格があるために、所有していてもストレスにならない会社持分、ということで、お金があるとき、気が向いたときに、株式を購入し、飽きたら放置して、価値がゼロになっていても、出資した限度で資産が減るのみだし、気が向いたら株主総会に行ったりもして、暇なときには会社の事業について色々調べたり議論したり出来る、というような、空き時間と余ったお金を有効活用できる合理的なものだった、ということが、株式会社繁栄の理由なんでしょうかね」

 リカは、キャラメルをモグモグと食いながら言った。

「そうかもしれないですね。実際、現代において、株式会社は、巨大な社会的影響力を持っています。国家と見紛うほどに。国家とは何かが曖昧ですが、別に政府のことだけを指しているわけではないし、定義は様々なので、人々の生活を中心となって回している主体、と捉えると、その面もあるかもしれないということです。都市部の衣食住は完全に株式会社が担っているでしょう?これは民主主義や資本主義とも整合的ですよね。資本家は、伸びそうな事業を見極めて、お金を投入する。どこに出資するか、出資しないかは完全に自由です。そのため、有益なものも有害なものも含めて、様々な事業が発展することになります。有害なものは長くは残らないでしょうが、また別の有害なものが繁栄するでしょう。もっとも、ここでいう有害も、人を選ぶという意味ですので、万人に対して有害なわけではありません。価値観や事柄の多様性に貢献していることは万人にとって有益でしょう。資本家が国家を支配しているといえそうです。しかし、そういうようなのはフランス革命辺りからずっとそうなので、合理的な社会制度なのでしょう。ですから、資本主義により生じる経済的弱者については別途保護を与える必要がある。また、市場競争に馴染まない事業についても、利益を生む予測が前提となる制度では手薄になるでしょう。それらについては、政府が別途介入する必要が生じるのです」

「銀行も株式会社ですもんね」

「そうですね。銀行は融資を行いますので、会社との関係では債権者となりますが、会社が潰れれば融資したお金が返ってこずに損失を被るのは株主と同じなので、経営に口出ししてくることもあるでしょう。取締役や重役と会合して、経営判断に影響を及ぼす。或いは、株式を取得し、株主の立場で共益権を行使して会社の運営に介入するでしょう。つまり、経営判断は、取締役会や代表取締役が行うのですが、それには債権者…従業員や銀行の意見が沢山影響している、といえそうです」

「会社の運営は機関が決定しているが、債権者の意向を無視できないということですね。M&Aはどうですか?」

「基本的には同様でしょう。双方の会社で分割計画、合併計画、といった計画を立て、相互に合意し、反対株主保護手続き、債権者保護手続きを取って、株式の買取と発行を行います。組織行為で重大なものなので、株主総会決議が要るでしょうね。株主総会決議も、通知が漏れていたとか、決議内容が定款や法令に違反していたとかは取消事由や無効事由となります。株主平等の原則、という重要な原則がありますが、平等原則というのは法の基本ですから、頁を改めて論じることにしましょう」

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