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【シン屋根裏の散歩者】  作者: 石田ヨネ
第五章 攻めの調査、ポンコツダヌキの秘策

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22 おいゴラァ! 離れろ! 警察手帳持ってんのか?



          (3)



 案の定、朝は騒ぎになっていた。

 警察としては、郷田が犯人でほぼ確定の流れだったにもかかわらず、その郷田が爆殺されたわけだ。

 当然、その衝撃は大きかった。

 それで、いつもの警察のメンツ、群麻や無二屋たちもそろっており、

「ま、まさか……、郷田が殺された、だと……?」

 と、例のごとくーー

 口を中心にして爆破、損壊された遺体を前に、一同は騒然とする。

「しかも、拘置所でって……、くっ! 舐めたマネをッ!」

 よりにもよって、警察の施設内で起きた犯行が、ますます苛立ちをつのらせる。

「ちなみに、自殺の可能性は、ないんですか?」

 群麻が、そう問うてみた。

 その昔の、米ソの冷戦時代の、スパイが捕まった際の自決用として歯に毒薬を仕込んでいたという逸話を思い出しながら。

「それって? この郷田理事が、逮捕されるときに、こっそり口に爆弾を入れていたってこと?」

 無二屋が聞き、

「いや、あの時、目を離さないようにして見てたけど……、隙を見て、隠し持ってたのかな?」

 と、群麻が言い、

「それとも、郷田自身が、そのような義歯を入れていたのか?」

 と、中年刑事の男も、まさかそんなバカなと思いながらも推測する。

 ただ、そのような義歯を、ずっと日常的に入れておくことの、万が一の危険性を考えると、そんなことをするだろうかという思いだが、

「いえ、そもそも、この郷田自身……、歯に何も詰め物や義歯など、入れておらず……、全ての歯が、白く、極めて健全な状態そのものだったみたいです」

 と、捜査員の女がそう報告し、すぐにこの説は否定された。

 まあ、歯が白いという情報の必要性が謎ではあるが……

 そのようにして、捜査が、再び混迷しようとしていると、


 ――ぬ……、わっ……!


「「わ!? わわっ!!」」

「うぉぉッ!? 何だぁッ!?」

 と、突然のことーー! 何者かの影が天井から現れ、群麻や刑事たちがいっせいに驚きの声をあげる。

 天井に隠れていた、忍者でも降り立ったのか?

 いなーー

「たぬっ、き、狐さんーー!?」

「よ、妖狐だとッーー!?」

 と、そこにあったのは、非日常的な登場のしかたで現れた、妖狐の、神楽坂文の姿だった。

 なお、その妖狐のファッションだが、いつものアサシン風の黒ドレスと違い、先日の箱根で買ったと思しき、『箱根温泉』とプリントされた黒Tシャツ姿という。

 一同、驚きが冷めないままにも、

「「「――てか? 何なの? その、微妙にダサいTシャツ?」」」

 と、その視線は、謎のゆるいTシャツのほうに向いていた。

 まあ、そのダサTシャツのことは、一旦置いておき、

「い、いったい……? い、いつ、どこから現れたのだ! たぬ、狐!」

 オッサン刑事が、驚きに興奮した状態で妖狐を指さし、

「というか、何をしに来たのだ? どうせ、邪魔しに来たんだろ? 帰ってもらうぞ!」

 と、別の中年刑事も、嫌そうな顔をしながら「帰れ」のジェスチャーをするも、

「まあ、待て――」

 と、妖狐はそれらをスルーして、郷田の亡骸に近寄る。

「おい! 何をする気だ!」

「おいゴラァ! 離れろ! 警察手帳持ってんのか?」

「ちょ、神楽坂さん!」

「た、たぬッ――、き、狐さん! だ、ダメですよ!」

 と、凄む中年刑事たちと、慌てた群麻たちが制止しようとするも、妖狐は郷田の遺体のすぐ側まで寄る。

 そうして、手を伸ばして、


「おい! そろそろ起きんか!」


 と、おもむろに、損壊したほうとは逆の、かろうじて残っている頬を、ペチペチと叩きはじめた。

「「おっ!? おい!! 何をやってんだ、ゴラァ!!」」

 当然のこと、中年刑事は奇行レベルの妖狐の行動に驚愕し、すぐに制止しようとした。

 それだけでなく、

「き、狐さん!!」

「ま、不味いですよッ!!」

 と、群麻と無二屋のコンビでさえ、妖狐を止めにかかる。

 そんな、ついに、頭の中がドラ焼にでもなってしまったかと思いたくなるような中、

「おい! やめろ! 狐!!」

「そうだ! これ以上邪魔するなら、公務執行妨害で――」

 と、警察たちが、強制的に妖狐をつまみ出そうとした。

 そのとき、


 ――ガァ、バァッ……!!


 と、郷田の頬をつねってた妖狐の手から、まるでテーブルクロスのように――

 空間が、イリュージョンの大きな布のように具現化され、いっきにめくりあげられる!

「あ、あ”ぁ……?」

「へ、っ……?」

 と、今度は警察たちから、呆気にとられたような声が漏れる。

 まあ、こんな超現実的かつ意味不明な光景を見せられたわけだ。

 無理はない。

 そんな風に、まさに、“ベール”がめくられた先、


「えっ? えっ――!?」


「と、どゆこと!?」


 と、そこには、さらに驚愕するべき光景が広がっていた。

「う、ウソだろ……?」

 中年刑事が、心底驚いた先――

 先ほどの、爆弾によって修復不可能なまでに損壊された郷田の顔はどこへ行ったのかーー? 

 そこには、白く、きれいに整った歯の――

 いちおうはイケメンなチャラ男で通じる、歯科医院理事の郷田の顔があった。

 また、その間も、妖狐は間髪入れずに、

「おい、コラ。いいかげん、起きんか」

 と、郷田の頬をつねる。

 そして、それはさすがに効いたのか

「ふぅん!? ぐッ!?」

 と、郷田が不細工に歪んだ表情とともに、奇声を出しながら目を覚ました。

「え!? こ、これって……、い、生き返ったってこと、ですか? 狐さん?」

 無二屋が、恐る恐る聞き、

「か、神楽坂さん、こ、これは……? いったい? 何を、したんですか?」

 と、同じく群麻も、心底驚いた顔で妖狐に聞いてみる。

「ふむ。まず、“生き返った”のではなく、だ――、そもそも最初から、この郷田は死んでいなかったと言っておこうか」

「さ、最初から死んでなかっただと!?」

 と、中年刑事が驚愕するのを、あいだにはさみつつ、

「ああ。この男は、ただ、“寝ていた”だけだ――」

「ね、寝ていたって……!?」

「そんなバカな……!? ど、どう見ても、爆殺されたようにしか見えなかっただろ……!」

 警察たちに、まだ信じられないとの騒めきが起こる。

 まあ、それも無理もない話だろう。

 どんな特殊メイクか、イリュージョンか――? 

 爆薬の匂いの残留する中、確かにそこにあったのは、誰がどう見ても絶命しているようにしか見えない郷田の姿だったのは、間違いなかったからだ。

「まあ、妖力を使ったのだ。そうだな……? “こいつ”は、さしずめ、“虚構のカモフラージュ”といったところ、か――」

 と、妖狐はドヤ顔をして、先ほどの――

 “異空間で形成された大布”とでもいうべきものを、ひらりーー、とさせてみせた。

「虚構の、カモフラージュ……、だと?」

 中年刑事が、聞く。

「ふむ。説明がめんどくさいのだが、名前のとおりのカモフラージュと思っておけばよかろう」

「めんどくさい言うなよ……。まあ、しかし、本当に郷田が爆殺されたと、我々も思わされたわけだしな」

 中年刑事が、言った。

 また、そこへ、

「――おはよう、ございまっす~……、ああ、ねっむ」

 と、特別調査課の碇賀元が、でっかいチョコレート菓子のバーを口に咥えつつ、賽賀忍とともに現場に入って来た。

「まったく、お前ら……」

 中年刑事が、嫌そうに顔をしかめる中、

「あっ、れ? たぬ、いや、狐さんじゃん? てか? 何? その、微妙なTシャツ?」

「あら? “妖術”、使ったの? 狐さん?」 

 と、碇賀元と賽賀忍が続けざまに、声をかけてきた。

「ああ。使わざるをえんかったのだ、まったく――」

 妖狐も、Tシャツの問いはスルーしつつ、どこか鬱陶しそうに答える。


 碇賀たちの登場で、微妙に話の腰が折れながらも、本題へと戻って、

「でも、狐さん? なぜ? この郷田氏が、爆殺されたように見せる必要があったんですか?」

 まず、無二屋が尋ねた。

「おっ、無二屋にしては、いい質問」

「うるさいなー」

 茶化す群麻に無二屋が拗ねている横から、賽賀忍が、

「狐さん、そのぉ、爆殺されたように見せる必要があったってことなんだけど……、真犯人には、郷田氏の殺害が成功したと勘違いさせたままの方が都合がよいってこと?」

「まあ、そういうことだ。犯行の様子の記録するためと……、今まさに、その油断した犯人を、追跡しているのだ」

「「「な、何だって――!?」」」




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