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【シン屋根裏の散歩者】  作者: 石田ヨネ
第五章 攻めの調査、ポンコツダヌキの秘策

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20 綾羅木氏! 恥じらわない!



          (1)



 綾羅木定祐と上市理可のふたりは、屋根の上にいた。

「てか、綾羅木氏? こんなところでやるの?」

「仕方ないだろ。公園で使ったら、それこそ、クレームが来るかもしれないしな」

「何のクレームかな、それは」

「フン。まあ、それはいいとして、そもそも、あんなクッソだっさいポーズ、公園なんかでできるかと」

「だ、獺祭飲みたい!」

「うるせぇぞ。黙れよ、と申し上げるぞ、コラ」

 などと、ふたりは謎のテンションで話す。

 これから発動しようとする、情報蒐集術の“ヤタガラス”。

 その発動には、数多のカラスが寄ってくるということ。

 クソダサいポーズが発動に必要だという、少々難点のある妖術だった。

「しかし、こんなふざけた妖術よこしてくれやがって、あのクソボケダヌキ」

「ほんと、少し分からせないとね、あのドラえもん。まあ、とりあえず、早く終わらせようよ、綾羅木氏」

「そうだな」

 ふたりは、今ここにいない妖狐の神楽坂文に苛立ちならがも、諦めて妖術の発動を、クソダサいポージングをすることを決意する。

「じゃ、行きますよー」

「おうよ」

 上市理可が合図をとり、

「ヤー、ター」

「や、たぁ……」

「綾羅木氏! 恥じらわない!」 

「だってぇ、だてだってぇ!」

 と、モジる綾羅木定祐の背中を押す。

 ドラゴン〇ールの、フュージ〇ンのようなクソダサいステップで、二人はトコトコと左右に広がりつつ、


「「ガァ、ラァ、スゥー!!」」


 と、再び内側へと寄り、合体するがごとく、絶望的にダサすぎるカラスのポーズをキメる。

 その刹那、


 ――キュピーン!! キュイン! キュインキュイン!!


 と まるでパチ○コの確変のごとくーー! 黒いオーラと閃光が走った!

 すると、すぐさに、

 ――バサ、バサバサ……

 と、羽音が、合わさりながら大きくなるのが聞こえ、沢山のカラスが寄ってきた。

「うぉっ! ほんとに来たし!」

「まあ!」

 ふたりは、集まるカラスの集団に、思わず驚く。

 なお、もし遠目から見るとすれば、屋根の上で怪しい男女ふたりがキモいポーズをとると同時にカラスが集まってくるという、何ともホラーかつシュールな光景だろう。

 それはさておき、

 ――カー! カー! カー!

 と、集まったカラスたちは、口々に何か伝えているようだった。

 それらは、妖術のおかげか、まるで同時翻訳されているかのように内容が分かる。

≪カー、カー、カー≫

「うむ? 私らの考えるような、“変なキツツキ”を見た、とな?」

 綾羅木定祐とカラスが話す。

≪カー、カー、カー≫

≪カー、カー、カー≫

 と、カラスたちの返すこと――

 その内容を、訳すとすれば、

『ああ。今回の事件のすべての現場だが、このキツツキを、“我ら”は目撃している。それは逮捕された容疑者、郷田の歯科医院でも同様だ。なので、確信は持てないが、お前たちカスどもが言うように、このキツツキが関与している可能性は、無きしにもあらずだ。カス』

「うむ。そうか。てか、カスって何だ? コラ?」

 と、綾羅木定祐が、頷きながらつっこむ。

 また、上市理可が続いて、

「ちなみん、それって? どんなキツツキなの?」

『ああ、ちょっと、見せてやるよ』

 と、カラスは答えつつ、

 ――ボワンッ……

 と、こちらは“葛葉”をとおして、カラスたちの記憶の集合が、映像化される。そこに映し出されていたのは、

「むむ? これは、」

「たし蟹、キツツキですねぇ……。けど、」

 と、綾羅木定祐と上市理可が、その姿をキツツキと確認するも、ナニカが引っかかった。

 その、違和感――

 映像のキツツキは、一見すると確かに、普通の鳥のキツツキのように見えるわけだ。

 だが、よく拡大するに、

「ん? 何、この顔?」

「お? 確かに、何だ? この、若干ムカつく顔」

 ふたりは、そのキツツキの顔というか表情が、まるでカトゥーンのような、剽軽ひょうきんなイタズラ好きのような“それ”であることに気がついた。

 この時点で、間違いなく普通ではないキツツキであることは確信に変わろうとしていた。

 だが、さらに続けて、

≪カー、カー、カー≫

 と、カラスが、

『おっ、これ見てみ。これは、ヤバい証拠だろ? だって、』

 と、あるカラスの記憶から再生される動画を観ること――

 事件の現場の、高層ホテルに向かって飛ぶキツツキの姿。

 そのまま、キツツキは外壁につかまり、頭を振りかぶった。

 普段ならば、その先にあるのは木であり、カンカンカン! と突けば容易に穴が開くのであるが、今回はあいにく、タイルの外壁だ。

 下手をすれば、そのくちばしが折れてしまいかねない。

 しかし、ブンーー! と振りおろした嘴の先、


 ――スッ……


「「まあ――!?」」

 と、二人の驚きの声が重なった。

 そこには、まるで、異界の穴が開くがごとく――

 ポワンと、黒い穴が一瞬開き、その中へとキツツキは侵入するとともに、何事もなかったように穴は閉じた。

「こいつは――、なかなかの“証拠”、だな」

「まあ、こんな、カラスの記憶の映像化を、警察に対して、直接の証拠として使用することはできないんだろうけど……、小っちゃいナニカ説としては、充分な証拠ではあるよね」

 そのように、ふたりが、小っちゃいナニカ説の確信を高めていたところ、


 ――ス、タッ……


「「う、ん――?」」

 と、後ろに、静かにして“何者か”が降り立つ気配がした。

 すなわちーー

 そこには、いつの間に戻って来たのか? 妖狐の、神楽坂文の姿があった。

 ふたりは振り向いて、

「おい、このクソダヌキ!」

「おっとぉ? 帰って来たの、ドラえもん? タケノコは?」

「おお、そうだ! タケノコ、掘って来たんだよな? お前?」

「タケノコ? 何のことだ? ゴミ芥ども」

「ああ”? てめぇ、ふざけてんじゃねぇぞ! このドラ焼き野郎!」

「そうよ、舐めてるよね? ドラえもん? 教育、教育! 死刑死刑死刑!」

 と、殺意を以って詰め寄るふたりに、

「まあ、その辺にしておけ、ゴミ芥ども」

「その辺もこの辺もあるか、クソダヌキ」

「てか、もう着いたの? ドラえもん? まだ、列車に乗ってるはずじゃないの?」

「ふむ。ちょっと、抜けださせてもらってな。ああ、無賃乗車でなくて、ちゃんと最後までの切符は買ってある」

「それで、何で、わざわざ戻って来たんだ? 何で、タケノコは掘ってないんだ!」

 綾羅木定祐が、聞く。

「ふむ。いまが、調査の、ちょうど重要な転換点だと思ってな――。それから、恐らく、近いうちに、また犯行が行われる予感がしてな」

「近いうちに、だと?」

「ああ。それも、今晩にでも」



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