14 【GOGO郷田歯科医院】
(2)
――というわけで、時間を進めてのこと。
群麻と無二屋のふたりは、緑のある公園近くの、豪邸に併設した、【GOGO郷田歯科医院】を調べていた。
「――え? 警察? 何の用?」
と、歯科医師というよりも、むしろサーファーのように黒く焼けた肌に、センター分けのロン毛の、チャラそうな男――
医院長の郷田剛が、いぶかしげな顔をしてみせた。
「えっ……と、ですね……」
まず、話を切り出そうとする無二屋に、
「その……、一連の、【連続爆殺事件】について、調べさせてもらいたいことがあって、こちらに来ました」
と、群麻が続けて、要件を伝える。
「爆殺、事件――?」
歯科技工士の男が、キョトンとし、
「ああっ……! あの、事件の」
と続いて、スタッフの女が、ピン――ときた。
そうしていると、郷田が怪訝な表情で、
「それで? その事件に関して、ウチが、どうしたというんです? ねぇ?」
「その、ですね……、事件の被害者、七件の被害者に【共通点】がありまして……、それといいますのが、七件の被害者、すべてがですね……、この歯科医院で治療を受けていたということが判明してまして」
「え……? ウチの、お客さんたちがですか?」
と、群麻の答えに、スタッフの女が驚く。
「は、はい。そのことで……、この歯科医院に、何か、犯人につながるものがあるのかと思いまして」
無二屋がそう言うと、
「そ、それでっ……!! わ、私が、は、犯人だって――!?」
とここで、郷田が急に様子を変える。
「い、いえっ!! ま、まだ、そんなことは言ってません!!」
「【まだ】ってことは、そのうち、犯人になるかもしれないってことじゃないか!!」
「ま、まあ、落ち着いてください!!」
と、余計に興奮する郷田を、群麻が落ち着かせようとした。
******
『――い、いきなり人を犯人とは!? 失礼じゃないか!!』
『ま、まだ犯人じゃないですよ!!』
などと、イヤホンから、現場のドタバタ具合が伝わる。
場面は、少し離れたところに変わって、
「はぁ……、何やってんだよ? アイツらは」
と、歯科医院の中の様子を、碇賀元は【見て】いた。
というのは、これより少し前に、さかのぼること――
――――
――
「――マ?」
と、綾羅木定祐が、碇賀元と賽賀忍の前で、そう言ってみせた。
「ああ……、俺も、【マ】と言いたいねい」
と、碇賀元も“それ”に合わせるように、何か神妙な顔をしてみせる。
「本当に、あいつらは、あんな【トンデモ説】で調べていく気なのか?」
「みたいね。これから、その、GOGO郷田歯科医院を調べに行くって」
綾羅木定祐に賽賀忍が答えたように、群麻と無二屋たちが、【詰め物爆弾説】で早々と調査を進めようとしていることに、頭を抱えていた。
まあ、【小っちゃいナニカ説】も、トンデモといえばトンデモなのだが――
「まあ、いうて……、そんな、何も見つかることはないと思いますけど……、万一、それで捜査が進んだらどうします?」
上市理可が聞く。
「まあ、そう言うと思って、いちおう手は打ってはあるけど」
「あん? 【手】とは、どんな?」
と、賽賀忍の言葉に、綾羅木定祐が聞く。
「さっき、ねい? 無二屋のヤツに、【盗聴器】を仕掛けておいたんよ。それを、タヌ――、キツネさんの【妖力かナニカ】を使えば……、とりあえず、あのふたりが郷田歯科を調べている様子を、見張ることができるんじゃないかと思ってね」
「ほう……」
「へい……」
と、綾羅木定祐と上市理可が、順に相づちしながらも、
「まあ、そいつは、悪くない手ではあるな」
「でしょ」
綾羅木定祐の評価する言葉に、賽賀忍が答えていると、
「――で? その、アイツらの捜査の見張り……、誰がやんの?」
「「え?」」
と、唐突な問いに、碇賀元と賽賀忍の声が重なる。
続いて、間を与えることなく綾羅木定祐が、
「私らは、やだよ。君たちが、やってよ」
「え? 俺らが?」
「うん。当り前じゃん」
「だって、それに……、そういえば、碇賀さんって? 確か、忍者の家系なんですよね?」
「おおっ!! そしたら、ちょうど、ヤツらの監視にうってつけじゃないか。近くの木にでも隠れて、やっとけよ」
「お、おいおいっ、」
と、碇賀元が困惑していると、賽賀忍も、
「あっ? それ、いいんじゃない?」
「いや、いいんじゃないって、アンタも、忍者の家系だろに」
「いや、だって……、私も、元が木に隠れているとこ、見てみたいし」
「はぁ?」
「というわけで、それで決定な。碇賀、お前、木に隠れてこい」
「そ、そんなっ……、勘弁してくれよう」
と、碇賀元は皆の決定に、嘆いてみせた。




