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良い子と悪い大人のための平成夜伽話  作者: 橘圭郎
第一部 《魂萌え雀》
22/51

第一部・作品解説


 以下 語りたがりの作者による、若干のネタばれ含む作品解説

 ☆のマークは、これを知っていれば夜伽話がさらに楽しめる。もしくは夜伽話が琴線に触れた人にお勧めの作品です。(メディアを問わず。敬称略)


①七羽の雀

 つれづれなるままに書いた作品。友人からの評判が高かったので、短編集の一本目として載せた。『良い子と~』はこの話の副題だったが、短編集を作るにあたって主題に変更。

 どうしてこうなった。顔も覚えていない昔の友人が七羽の雀と結婚するという夢を見て、そこからいろいろと想像を膨らませていったらこうなった。


☆日本むかしばなし『したきりすずめ』

 お伽話のような語り口で雀が出るとあれば、このネタは避けて通れない。


②大地の娘

 『良い子と~』をただの短編集ではなく、一つの芯を持ったものにすると方向づけた作品。精力絶倫な男と人外娘で物語を作る、地の文は語り口調、登場人物に名前が無い、などの共通項はここで固めた。

 初期構想では男が死ぬところで終わっていたが、それではパンチが足りないと思い、獣の娘を出した。その後の展開を考えると、彼女の功績は大きい。


③鋼の乙女

 作者のお気に入り。人間の都合によって生まれたモノの悲哀がドツボなのである。

 この頃には全八話構成にすることを決め、結末もある程度は固まっていた。近未来と遠未来を繋ぐ物語。

 

 新都社版と比較して、もっとも大幅改稿が多い一話。

 具体的には

 宇宙船建造が頓挫した理由:巨大隕石で機械人が全滅→機械人同士の果てしない争い

 乙女が海に落ちてから:自力で海底を歩く→不思議な海流に運ばれる&青真珠の追加


☆手塚治虫『火の鳥・未来編』『火の鳥・望郷編』

 気の遠くなるような年月を独りで過ごしたり、地球へ帰るために生命を懸けたり。

☆ガイナックス『トップをねらえ!』『トップをねらえ2!』

 知る人ぞ知る名作ロボットアニメ。オカエリナサイ。

☆ささくれUK『ハロー、プラネット。』

 ボーカロイド初音ミク楽曲。世界が終末を迎えたあとの、ロボ娘の軌跡。


④バベルの子

 八話の中で最も結末が分かりづらい。

 というよりも初見で『嘘つき爺さん』で語られた内容まで予想できたら、あなたはもはや新人類です。

 少女の出自についての考察、言語についての研究描写をしっかりすれば、もっと硬派なSF中編に作り直せるかもしれない。


 「鋼の乙女」ほどではないが、これも新都社版と大きく違うところがある。

 新都社版では青髪の少女の言葉は完全にでたらめだったが、なろう版では一箇所だけ、字面どおりの意味で発言している台詞がある。

 また最後の地の文がおかしくなった部分も、なろう版では各話のタイトルをちりばめたものに変更。


☆旧約聖書『創世記』

 バベルの塔。人間の言葉がバラバラになった経緯が書かれている。

☆谷川俊太郎訳『マザーグースのうた』

 訳が分からんながらも、口ずさむと心地いい言葉のチョイスは秀逸。

☆ニトロプラス『沙耶の唄』 ※成人向け。グロ注意。

 人間には理解し得ないモノとの純愛を描いたサスペンスホラー。この惑星をあげます。


⑤暗い森の女王

 文化レベルが一気に縄文時代程度にまで落ち込んだ。

 この話から主人公の男にも台詞が付いた。これは会話していることを強調するためであり、会話文に「」ではなく『』を使っていることを明らかにしたかったから。

 そしてその会話内容は本来、旧人類には決して理解し得ないのである。


⑥亡国の天女

 地球から遠い星へ行った「鋼の乙女」に対し、遠い星から地球(作中では惑星エアリス)に来た女の話。そのため実験的に、物語の構成も対になるように書いた。

 「鋼の乙女」は追い詰めて追い詰めたものを最後に救って終わらせたが、逆に今作は積み上げて積み上げたものを最後にぶち壊す形で締めくくっている。

 ちなみにエアリスは earth のスペルに i を加えて作った言葉。もしかしたらFF7のヒロインも同じ由来なのかもと勝手に予想しているが、どうだろう。リクルスは完全に語感優先。


⑦南海のスイートハニー

 海属性ヒロインを巨人にするか人魚にするかでかなり迷った。恒久平和の礎となる七話目は世界規模の話にしたかったので現在の形に。

 これを書いて分かったことは「ダーリン」の破壊力は凄まじいということだ。高橋留美子は偉大である。

 なお作中では、こぐま座のコカブが北極星だと述べているが、補足。北極星とは、地軸の延長線上に最も近い北天恒星のことである。ところが地球の首振り運動(コマの軸がぶれて回るようなもの)によって、地軸の向きそのものが約二万六千年周期で移り変わるため、それに伴い北極星に該当する星も変わっていく。

 二十一世紀の現在における北極星は、こぐま座のα星ポラリスである。β星コカブが北極星と呼ばれる位置につくのは、西暦にして二万五千年頃からか。


☆浜田廣介『泣いた赤鬼』

 言わずと知れた泣き児童文学。青鬼は敢えて悪役に徹した。

☆東毅『超弩級少女4946』

 身体を張って女の子を守る少年と、身体を張って人類を守る巨大少女との恋愛漫画。ヒロインがとても可愛い。

☆筋肉少女帯『再殺部隊』『リテイク』

 少年は愛する少女を守りきれなかったことを悔やみ、彼女の人生が幸せな結末を迎えるようにと映画を撮る。人生は映画なんだ!


⑧嘘つき爺さん

 七話の要素を全て回収し、タイトルに新たな意味を持たせる一作。夜伽といってもエロいだけじゃないぞ、と。

 解釈の模範解答ではあるが、必ずしも絶対確定的な答えではない。何故ならば、彼は嘘つきだからである。どこからどこまで嘘なのか、それは誰にも分からない。

 

⑨存在しなかった風景

 題名のとおり、新都社版には無かった書き下ろし部分。

 蛇足かもしれないが、ハニーだけ通夜に参加できなかったため(青真珠は乙女の胸に留まっていたが)、やっぱりフォローしてあげたかったのだ。


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