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AI大戦  作者: Naroulove
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第六話:田神京一

平日の昼間、田神京一は自分の部屋のソファーに寝転んで考えている。


サラリーマンと言う社畜を止めて、1番良かった事は時間を気にせず、惰眠を貪れる事だ。

そのかわり起きている時間は貯金の残りが気になる。


まぁ気が向いたらまた仕事を始めればいいだけだ。

田神京一はそう考えて、今は時間を好きに浪費している。

モラトリアムを楽しんでいる失業者。

それが今の田神京一だ。


今日もソファーに寝そべりながら時間をつぶしている。

誰も俺に干渉してこない。

そんな自分だけの空間。


「ピンポーン、ピンポーン」


インターホンの音が聞こえた。


それでも時々このように何かが割り込んでくる。

無視するわけにもいかず、俺はドアを開ける。


「先輩、よかった。生きてたんですね」


なぜか目の前には辞めた会社で一緒に仕事をしていた後輩が心配そうな目で俺を見ている。


「生きてたとか随分と物騒だね。

世間のしがらみから外れてのんびりしてただけなんだけどね」


「だからって、私からのメールも無視するし、電話しても出ないのはひどいじゃないですか」


「悪かったよ。 

でも自分をリフレッシュするには必要だったんだ」


「先輩の言うこともわかりますけどね。

会社での先輩の働き方は、ブラックすぎましたよね」


会社での忘れてた記憶がフラッシュバックする。

こいつは良いやつなんだけど少し圧が強くて気が効かないんだよな。

それでも、会社では1番気が置けない人間だった。

だから、気持ちを飲み込んで話しかける。


「それで何か用か?

まぁ、立ち話もなんだから上がるか?」


「もちろんですよ。私先輩のコーヒーが飲みたいんですから!

入れてくれますよね」


「わかったよ。

俺のスペシャルブレンドを入れてやるから。まぁ上がれよ」


そう言うと、自分の家のように遠慮なく家に入ってくる。

まぁ、一時期は合鍵も持っていたしな。

靴を脱ぐのに、少しかがんだ胸元に思わず目がいってしまう。

こいつ、桜は結構胸が大きい。

昔は好きにあの胸を揉みしだいていたんだと思い出す。


今は誰がこの胸を揉んでいるのだろう?

まあ、昔の話だ。



「先輩少し目がエッチですよ。

さっきから私の胸元をガン見してますよ!

少しは惜しいと思ってますか?」


「もちろんだよ。とっても惜しいと思ってるよ」


「逃した魚大きいってやつですよね。

あっ、今はこんな話をしてる場合じゃ無いんです。

それより先輩ちゃんとテレビ見てます?

やばいことが起きてますから」


そう言うと、桜はテレビのスイッチを入れた。


「こんな時間に面白い番組なんてないだろう?」


そう言いながら、目を向けたテレビの画面の中では緊迫した表情で喋ってるアナウンサーの顔がアップで写っている。


そのアナウンサーは中国の国家主席が死んだと伝えていた。


「へー、あのオッサン死んだんだ。

頑張ってたのになぁ。

まぁ死んじまったら何もあの世には持っていけないんだけどなぁ。」


俺は台所でコーヒーを入れながら桜とそんな話をした。


「ほらコーヒーが入ったぞ。

最近コーヒーもインスタントばっかりで、豆から入れるのサボってたから、味のほうは保証しないけどな」


そう言いながらコーヒーカップをテーブルの上に置く。


桜は俺の言葉に返事をせず、テーブルの上のカップを手に取りコーヒーを一口飲むとニコリと微笑んだ。


「これですよ。これ。

喫茶店で飲むコーヒーより、先輩の入れるコーヒーの方がおいしいんですよね」


桜はそう言うとまた1口コーヒーを飲んだ。


「それで俺に知らせたかったのは、この中国の国家主席の楊が死んだってことか。

そりゃ、世界にとっては大事かもしれないけど、俺にはあんまり関係ないぞ」


「何言ってんですか?

大アリのこんこんちきですよ。

林暁さんから前に言われたことを覚えてませんか」


林暁は俺がアメリカの大学でAIの研究をしていた時に知り合った中国のAI研究者だ。

割と気が合ったのと、AIの将来への明確なビジョンを持っていて、よく未来のAIについて論議した旧友だ。


残念ながら林暁が中国に戻ってからは中国にガードされる先端技術者に認定されろくに話せなくなっていた。


「林暁から言われたこと?

そういえば言ってたよなぁ。

何だったっけ?

そうそう、楊が自分の後継者を決めてない。そのせいで国家中央統制AI「天網テンモウ」の管理権限の引き継ぎ先も決まってないって言ってたよな」


「それ、それですよ。

林暁さんの言ってたことが正しければやばいですよ。

天網がコントロール不能になるかもしれませんよ」


「いや、いくらなんでも、そんな事はないだろう。

天網のコントロールが、人の手を離れたら、中国のすべてが天網の統制下になるぞ!」


そう叫んだ俺の横でテレビは上海の惨劇を伝えている。

 

「もし、天網が暴走したら。

俺はそれが怖いんだ」


最後にあった学会であいつは俺にそんな事を言っていた。


それだけじゃ無い。

他にも何かあったはずだ?


俺はテレビを眺めながらそれを必死で思い出そうとしていた。


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