182.ここから続いて行く日常
本編エピローグです。
(浅山 藤四郎視点)
あの魔王討伐から3ヶ月後……
「ふぁ~……皆もう集まっちまってるか~?」
ーガタンゴトン……ガタンゴトン
俺は、電車に揺られながらそう呟いた。
……にしても、3ヶ月経っても本当に戻って来たのが慣れねぇな……
「ま、ようやくてんやわんやが終わったからな……」
あの祝賀会の後、俺達はラビィネルの力を借りて元の世界へと戻って来た。
その際、こっちでも位置を把握出来る様にと"位置識別アンカー"なる物を持たされたが……まあ、お陰で今後も世界を行き来可能なんだから感謝するべきなんだろうな……
……そして1番問題になったのは、2つの世界の時間の進みが全く同じだった事だ。
お陰で俺達は長い間、行方不明扱いだった訳だ。
加えて、召喚当時の俺達を見た目撃者も少なくなかった。
それを元の世界に戻る前の時点でラビィネルを通じて知った俺達は頭を抱えた。
何せ、元の世界じゃ不可思議現象で行方不明になった扱いだ。
普通に社会生活にだって支障が出る。
それをどうやって解決したか?
……思いっきり不可思議現象説に乗っかる事でゴリ押しした。
ラビィネルには日本の適当に神秘的な秘境へ送る様に伝え、到着してすぐに茜と司が遠くからでも分かるレベルの技を放ち、駆け付けた警察やら何やらに俺達5人を発見させたのだ。
「……ほんと、アレで何とかなるもんだな……」
異なる地域で不可思議現象と共に行方不明になっていた5人の男女が、これまた不可思議現象と共に神秘的な秘境で見つかった。
いくら調べようが俺達の移動記録なんて見つからねぇし、状況証拠だけ見ても不可思議現象としか思えねぇ。
結局、見つかった俺達が傷は負いつつも命に関わるものではなかったのもあって、未解決事件になるだろうと言われている。
取り調べも受けたが、俺達は正直に全てを言った。
勿論、信じられねぇ前提でだ。
頭がおかしくなったと思われるかもしれないが、そういった問題はない。
別にその間の記憶が異世界転移した記憶になってるだけで、それこそ今の精神は正常だと診断されたからだ。
結局、警察でも"精神的ショックで記憶が置き換わった説"と"不可思議現象も相まって本当に異世界転移したんじゃないか説"が議論されているらしいが、俺達にはもう関係ねぇ話だ。
とにかく、色々あったが何とか社会的に死ぬのだけは回避した。
……まあ、高校生組は特殊処置ありとはいえ留年が確定しちまったらしいが。
俺?
普通に無断欠勤でクビになりかけたが、不可思議現象で行方不明になったのもあってギリギリ首の皮1枚繋がったよ……
ほんと、勤め先には一生頭が上がらないな……
『次は~……』
ーガタンゴトン!
『……駅~……』
「お、もう目的地か……」
さてさて、到着したら皆来てると良いんだが……
そして数分後、待ち合わせ場所のカフェに入ると……
「あ、藤四郎さん!」
「ふむ、ボクの予想より早かったじゃないか……」
「ウェルカムっしょ!」
兼人、司、正義の3人が、団体席に座って待っていた。
「えっと、茜さんはどうしました?……僕の記憶が正しければ、一緒に来る事になっていたと……」
「茜は急用が入った。……また北欧案件だ……」
「「「あ~……」」」
ああ、これも召喚前から変わった事だったな。
元の世界に戻って来た俺達だったが、茜だけは元の平穏な日常に戻れなかった。
何でも、戦乙女化の影響で北欧の神々に目を付けられたのだとか……
「先月は雷神トール、その前は主神オーディン、それで今回は確かロキとか言ってたな……神側はお遊びやら見定めやらで本気じゃねぇらしいが、それでも茜が劣勢らしい。……ちなみに散々北欧神話の神々が茜にちょっかいかけるんで、終いには高天原から天照大御神やら月読命が介入して来て……」
「藤四郎チャン、その辺で一旦ストップっしょ!」
「ボク達が軽い気持ちで関わって良い話じゃないのは分かった……」
「僕も同感です。……というか、何で藤四郎さんは平気そうなんですか!?」
「……兼人、人間ってのは慣れて感覚麻痺する生き物なんだぞ?」
「……このレベルの話で感覚麻痺したら終わりだと思うの俺チャンだけ?」
いやまあ、俺も思うところはあるが……現実を直視したくねぇんだよ。
と、その時だった。
「やっほ~!……ようやくロキとのお遊びから解放されたよ~!」
「おう茜、意外と早かったな……」
茜がカフェに入って来て、俺達の方へと駆け寄って来た。
「あ、こっちの世界では久しぶり~!……戻って来たてからも私達って向こうの世界で会う事が多かったからね~!」
「……茜チャン、神々絡みの話をしてくれなかった訳を教えて欲しいっしょ……」
「いやだって、そんな風に困惑するのは目に見えてるでしょ?」
「うっ……」
そう。
俺達はあれからもしょっちゅう向こうの世界に行っては、各々が好きに過ごしていた。
あれから分かった事も色々ある。
例えば、茜の全知は元の世界と向こうの世界の2つでしか効果を発揮しない事だったり、兼人のスキルも元の世界か向こうの世界の情報しか知れない事だったりと……
要するに、情報を取り寄せる系のスキルは向こうだけでなく元の世界にも適用されるという事だ。
代わりに、他の世界は完全適用外らしいが。
何でそれが分かったか?
それはまあ……実験の賜物だ。
もっとも、これはまた別の話だがな。
「ま、無駄話もこれぐらいにして……今日はこっちで仲良く遊ぶっしょ!」
「ボクも同感さ!」
「はい、僕も……」
「私も~!」
「俺もだな……」
今の俺達はただの友人同士。
血生臭い話とは無縁だ。
「いや~、最近の俺チャン達ってあらゆる世界のラビリンス姉妹機?兄弟機?を倒すか味方にするかって事ばっかりだからこういうのも新鮮っしょ!」
「ふふ、ボクとしては正義君と一緒にそういうのをしている方が良いんだけどね?」
「僕はそれ、ずっと光枝さんに任せっきりなので心苦しいですね……」
「あ~もう、もっと楽しい話をしよ?……例えば私達がこっちに戻って来てすぐの頃、私とお兄ちゃんが両親にそれぞれ恋人を紹介した時の反応なんて面白いの何の……」
「おい茜ぇぇぇぇぇ!……その話何回蒸し返せば気が済むんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
……血生臭い話とは無縁?
そりゃ嘘だ。
他の面々は未だに"誰か"のために戦っている。
ラビィネルの力を借りて別の世界に行き、その世界に居るラビリンスの系列個体の対処をしたりってのもその1つだ。
……ラビィネル、日に日に観測可能な世界が増えてるらしいから、今後も順調にやる事が増えてくんだろうな……
ま、俺は参加しねぇけど。
何せ、関係ない世界のために1つしかない命を張るとか、馬鹿か勇者のやる事だ。
魔王討伐に参加したのだって、恋人の居る世界だったってのが大きいしな。
だから……
「……ふふ、こういう平穏も良いものだね?」
「僕もそう思います。……そういえば先日、この世界で光枝さんと交代してみたんですが、だいぶ満喫してくれたみたいで……」
「そりゃまあ、100年近く前と比べればだいぶ変わってる訳だから当然っしょ!」
「……ある意味、光枝さんも第2の人生を満喫しているみたいでボクとしても嬉しいよ……」
「この平穏が、ずっと続けば良いな……」
妹の勇者召喚に巻き込まれた時は終わったと思ったが、なかなか気の合う友人やら可愛い恋人やらが出来た俺は勝ち組なんだろうな……
……そういう俺はいい加減、恋人達を養えるだけの稼ぎを得るか、養って貰う代わりにあらゆる家事を俺が引き受けるかを考えねぇといけない段階に居る現実からは目を逸らしてるんだが……ははは……
やっぱハーレムなんて作るもんじゃねぇな……
「あ、お兄ちゃんが遠い目をしてる……」
「どうせ、今後の人生が茨の道だって再認識してるんですよ。……僕もいい加減その辺りを判別出来る様になりましたから……」
「ははは、ドンマイっしょ!」
「こうなるのは目に見えているからこそ、恋する相手はボクみたいに1人にするべきなのさ……」
「「ぐはっ!」」
司の何気ない言葉に、ハーレムを築いている俺と茜はダメージを受ける。
……ま、まあハーレムについては何とかしよう。
うん、絶対何とかする。
「じゃ、気を取り直して遊びに行くっしょ!」
「ふむ、ボクとしては最近話題のアミューズメントパークが……」
「あ、僕はここの……」
「あはは~!……それなら私は~……」
「ハァ……皆好き勝手言い過ぎだろ……ま、こういうのも悪くないか……」
この日常が永遠に続く事を祈り、俺達はカフェを出た。
……改めて、あの旅は長い人生から見れば短期間でも、一生忘れられねぇ経験になった。
俺達の人生を大きく変えた。
……だからまあ、これだけ心の中で叫ばせてくれ。
もう異世界召喚なんて懲り懲りだぁぁぁぁぁぁ!
……そんな叫びを心の奥底に仕舞いつつ、俺は皆と共に進んで行くのだった……
ご読了ありがとうございます。
これにて本編完結ですが、気が向けば後日談も書くかもしれませんし、加えて他の自作にもこの作品のキャラの関係者が登場してたりします。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




