第6話:魔女っ娘な炎使い(3)
とりあえず言われたとおりに椅子に座る拓也とミナモ。
「遠慮はしなくていいよ・・ほれ、お茶とお茶菓子だ」
テーブルの上にお茶とお茶菓子をおくお婆さん。
「あの・・・さっきモエさんがまたやったって・・」
ミナモがそう言うと
「ポイント稼ぎじゃよ・・・と、いってもあのやり方じゃよほど弱い能力者じゃなきゃ倒せないがね」
そう言ったお婆さん。
「そう言えばあいつ・・炎を・・・」
そう呟く拓也。
「それよりあんたも能力者だね・・属性は・・・とりあえずは瞳を見せてもらえるかい?」
「瞳?」
「それでわかるんじゃよ・・」
と、拓也の瞳をじっと見るお婆さん。
「・・・・」
そして、その様子を隣で見ているミナモ。
「属性は風かい・・・それとポイントは1・・モエを倒して得たものだね」
「倒して得たって・・・」
「ふむ・・あんたは能力者だけど地下世界の者ではないね・・・」
そう拓也に告げたお婆さんなのであった。
「俺達は・・その・・・」
何とか上手く説明しようとする拓也。
「色々ないざこざは大抵の大人たちは知っているが・・・あまり地上の人間を快く思ってないのは本部の連中ぐらいさ・・地上に一番近いワシ達は逆に歓迎するよ」
そう言ったお婆さん。
「いいのかな・・ミナモ・・・」
「お婆さんがそう言ってくださるなら・・」
と、ここで
「そっちの娘さん・・・天使じゃろ」
「!?」
驚く拓也とミナモ。
「ワシは占い以外に鑑定をやっている・・・能力者の鑑定だが・・・天使も瞳を見ればすぐわかる・・能力者とも一般の人間とも違う瞳じゃからな」
そう言ったお婆さん。
「見た目は同じだけどな・・・」
ミナモの瞳を見ながら言う拓也。
「うぅっ・・」
と、ここで気絶していたモエが目を覚ました。
「起きたかい・・・モエ」
「えっ、お婆ちゃん・・・ここって自分の家・・って・・・」
拓也達を見て動きを止めたモエ。
「えっと・・あの・・・」
かなりパニックになっている様子のモエ。
「大丈夫だよ。私達は・・・」
笑顔でそう言いモエを落ち着かせるミナモなのであった。
「モエ、あんたも座りな。この人達は悪い人じゃないよ・・話はワシからするよ」
お婆さんはモエに色々説明した。
「地上の能力者さんと天使さん・・」
そう呟いたモエ。
「悪かったな・・・さっきとっさに反撃しちゃって」
謝る拓也。
「悪いのは私です・・・私能力者だけど能力の才能がないみたいで力弱くて・・・あんなやり方でしか・・」
「気絶している間に瞳を見せてもらったがまだポイント1じゃったな・・・」
お婆さんがそう言うと
「あのやり方で倒された人がいるんだ・・」
そう呟いたミナモ。
「気にすんなって・・俺だって能力手に入れたばかりだからそんなに上手く使えないしな」
そう言った拓也。
「モエよ・・努力しないものに力は宿らない・・確かに能力は才能に左右される所はあるが・・努力でも能力を向上させる事は可能じゃよ」
そうモエに告げたお婆さん。
「そう言えば・・モエさんってその杖で能力使うんですか?」
「はい!お婆ちゃんの手作りの杖です。女の子向けに少し可愛いデザインにしてもらいました」
笑顔で自分の杖のことを話すモエ。
「まぁ、なんにせよ・・お前さん達はここを早く出た方がよいじゃろうな」
と、突然そんな事を告げるお婆さんなのであった。
「えっ・・・」
お婆さんの言葉に驚く拓也。
「お前さんたち・・・地上から来たならどこから来た?」
「えっと・・地上と繋がっている洞窟から・・」
そう答えるミナモ。
「地下でも一番上にあるこの階層はいくつか地上への道があるが全てには見張りがいるんじゃよ・・」
そう告げたお婆さん。
「まず地上から来た奴は普通には入ってこれないからね・・お前さんたち強行突破してきたんじゃないのかい?」
「それは・・・」
お婆さんの言葉に対して何も言えない拓也。
「そろそろ騒ぎになる頃だろうからね・・・と・・」
おばあさんがそんな風に言っていると外でこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。
「誰か来ますよ・・」
そう言うモエ。
「お前さん達は奥の部屋に・・モエ、案内しておやり。ワシが呼ぶまで隠れておるんじゃ」
「は、はい」
と、言う訳でモエに連れられて奥に向かう拓也とミナモ。
それと同時に店の扉が開かれ何人かの男達が入ってきた。
「こんな所に何用だい」
「この辺りで地上から来た男女を見なかったか?」
「知らないねえ・・ワシはこの店から出ていないし・・この店にも来ていないよ」
そう告げたお婆さん。
「そうですか・・では、見かけたらご連絡を・・」
一枚の紙を残し男達は店から立ち去っていった。
「・・・もういいよ」
お婆さんの言葉で奥から出てきた拓也達。
「ふむ・・・意外と手が早いね・・あまり似てないけど簡単な人相書きまであるよ」
「確かに似てないな・・」
「これなら見つからない・・・ですよね・・」
そう言うミナモ。
「どちらにしてもこの集落から離れた方がいいね・・・他の集落や階層に知れ渡るのも時間の問題だよ」
そう二人に告げるお婆さんなのであった。
「それってまずいじゃないのか・・・それじゃミナモの探し物どころじゃなくなる・・」
そう言う拓也。
「お婆さん・・・何かいい手はありませんか?」
ミナモが聞くと
「強行突破した以上お前さんたちの話はどこかしらに残る・・まずはこの集落からの脱出だが・・」
立ち上がるお婆さん。
「基本それぞれの集落の出入り口は大体決まっている・・あいつ等もそこを見張っているだろうが・・モエ!」
「はいっ」
元気良く返事してお婆さんの前に立つモエ。
「秘密の抜け道に案内してやりな」
そう告げたお婆さん。
「抜け道?」
「非常用とかの目的で作られているのさ・・ここの集落の連中が作ったものだから外の連中は知らない」
「それじゃそこを通ればここを抜けれますね」
喜ぶミナモ。
「だが、念入りにこの集落を調べられたら抜け道も見つかっちまう・・出るなら急ぐんだね」
「と、言うわけです。私が案内しますから・・拓也さん・・ミナモさん・・準備はいいですか?」
そう聞いたモエ。
「ああ、いつでも出れるぜ」
「あの、ありがとうございました。私たち・・」
「お礼はいいよ・・元々最初はモエエから関わったわけだしね・・何を探しているかは知らないが・・終わったらまた戻っておいで・・その時は集落の連中全員で歓迎するよ」
「はい!」
笑顔でそう返事するミナモ。
そして、モエ達は店の裏口から抜け道へと向かっていった。
「・・・何を探しているか知らない・・訳はないんだけどね・・占い師というのは”見えてしまう”ものだからね・・」
椅子に座るお婆さん。
「詳しくは見えなかったが・・それを見つけるのは相当大変だよ・・それに・・もう一つの・・」
そう呟くお婆さんなのであった。