第三章 【神の子】2.本当の心 パート10
地下通路の探索から帰ってきた二人は、エリシアに何を告げるのか――
地下通路の探索に向かった二人が戻ってきたのは、昼を少し過ぎた頃だった。
探索で汚れた服装の二人に、店員が声を掛ける。
『朝早くから仕事だったのかい?御苦労な事だね。』
『ああ、汚れた姿で店に入っちまってすまんな。』
『いいって事よ。疲れただろ?さぁ、座って休んでくれ。』
そう言うと店員は、店の奥にあるテーブルへ二人を案内する。
そこには、既にエリシアが腰掛けていた。
『エリシア様、只今戻りました。遅くなり申し訳ありません。』
『問題ない。で、首尾はどうだ?』
その言葉に、フィンはニヤリと笑いながら親指を立てた。
『バッカのおっさんの睨んだ通りだ。地下通路は神殿内部――“神の玉座”ってやつの真後ろに繋がってたぜ。』
ガタッ――
音を立てて、エリシアが立ち上がる。
『ノクスは!?ノクスはそこにいたのか!?』
しかし、フィンは静かに首を横に振った。
『残念ながら姿は見えなかった。ただ、“奇跡を起こす杖”ってやつが玉座の前に飾られてた。
儀式がそこで行われるのは間違いなさそうだったぜ。』
『……確かに、それは間違いないだろう。』
バッカライは周囲を警戒するように視線を巡らせると、懐から手書きの地図と見取り図を取り出した。
『これが地下通路の地図になります。
そして、こちらが神殿の見取り図です。多少推測も入っていますが、構造は恐らくこの通りかと。』
まず、地下通路の地図に指を置く。
『街中の井戸から入る事も可能ですが、人目につきます。ですので、街外れの古井戸から侵入します。』
次に、地図の数か所に書かれたバツ印をなぞった。
『この印の場所は崩落の危険があります。通る際は注意してください。』
『分かった。』
エリシアは短く頷く。
それを確認すると、バッカライは神殿の見取り図へ指を移した。
『通路の出口は二か所。
一つは神殿の敷地内にある井戸。もう一つは――玉座の間です。』
一度言葉を切る。
『玉座の間へ繋がる通路は比較的新しく作られています。恐らくですが……三年前、神殿に侵入した盗賊が掘ったものかと。』
『そうなのか……。
奇跡を起こす宝を盗む為とはいえ、大した盗賊だな。しかも装飾を剥ぎ、剣だけを持ち去るとは……。よほど、その剣が目的だったのだろう。』
顎に手を当てて考え込むエリシアに、フィンが肩をすくめながら口を開く。
『まぁ、盗賊の目的は知らねぇけどよ。せっかく通路を作ってくれたんだ。ありがたく使わせてもらおうぜ。』
『確かに。渡りに船とはこの事だな。
それで、出口は玉座の間のどの位置に出る?』
待っていましたと言わんばかりに、バッカライは見取り図中央の玉座の間を指差した。
『神の玉座の真後ろです。玉座と背後の壁の隙間に出ます。』
そのまま説明を続ける。
『幸運な事に、出口は玉座そのもので死角になります。しかも玉座のある場所は壇上になっている。
壇上に神官さえ居なければ、見つかる事はまず無いでしょう。』
そして、少し真剣な表情になる。
『……もし壇上に神官がいた場合は、神殿内の井戸側へ出て、別の侵入経路を探ります。』
『分かった。その作戦で行こう。儀式が行われる時間は分からんからな……早めに潜り込み、機を待つ。』
エリシアが二人を見渡すと、フィンとバッカライは静かに頷いた。
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正午過ぎ。
三人は街外れにある古井戸の前に立っていた。
『では、これより作戦を開始する。二人とも、よろしく頼む。』
『おう!』
フィンはニヤリと笑いながら片手を上げる。
『お任せください!』
バッカライは拳を胸に当て、力強く応えた。
エリシアはそんな二人を見渡すと、力強く口を開く。
『よし!行こう――我が友ノクスの元へ!』
第二章 2話 【本当の心】終わり。
次回、3話 【決断】 スタート。




