64話
アメリアがラノールド達と会議をしていた頃、聖ヨガ王国そして反乱軍の一団は分裂していた。
そんなに珍しい話ではないだろう。
旗印となる貴族が多ければ、思惑も多くなる。
ただ、今回の対立は、少し違うようだった。
「貴様が私の家の宝を盗んだのか!」
「そっちこそ、我が家の娘に手を出したと聞いたぞ!」
「な!?誤解に決まってるだろ!」
貴族一人一人が他の貴族のことを悪く言い、じゃんけんのような体をしている。
会議の場は、混沌と化していた。
そんな会議の場を治めたのは、一人の貴族だった。
「まあまあ皆様、今ここにお集まりの方々は長く国の重責を担われてきた方々。そのような方がたを信じられないとでも?」
その言葉は、重責を担ってきた者たちにとってはプライドが傷つけられる言葉。
彼は、重責を担うものたちがこんな所で仲間割れするな。恥ずかしい事だと言ったようなものだからである。
その貴族の名はセルビア。
古代語に治せば「セリア」
バレー侯爵家の当主代理、より正確に言えば当主見習いとしてこの場にいる貴族で、年齢は脅威の20歳
この場で一番の若手が、この一言で場を治めそして、絶対的な発言権を得た。
そんな彼がもたらした情報を信用しないものは、会議と言う閉鎖的な空間の中ではいなかった。
もしくは、誰も異議を申し立てることができなかったのかもしれない。
彼は、その場の貴族を驚異的な速さでまとめ上げ、そして方針を発表した。
「聖ヨガ王国は、私たちの物だ。そして、あの森も」
彼にさからう者は、誰一人として存在していなかった。
彼がそれを言った時、既に会議には彼しかいなかったからである。
最初は彼が重鎮たちに向けて言った一言がきっかけだった。
血の気が多く、よく叫んでいる大臣が突如消えた
なんの前触れもなく、その大臣の座った椅子には、ただ黒い影のようなものが居座り、それが尚人々に恐怖を与えていた。
その大臣が合図だった。
他の者たちが次々と消えていく。
最後に残ったのが彼。
そして彼は、誰一人として他がいない状況で会議を行い、ひとりで去っていった。
椅子に残った黒い影は、その場にくらい影を残し続け、少しづつ、広がって行った。
彼は歩いて行き、そして帝国の兵士たちに命じた。
「ランディーネ王国は、我らの物。よって、我らに返してもらおうぞ」
ここでも、反対するものはいなかった。
彼らもまた、既に消えていたからだ。
兵士たちはおらず、不気味な静寂が辺りを支配する。
動いているのは、兵士がいたであろう場所にある黒い影。
音一つ立てることのない影の蠢きは、そこにいるだけで精神がおかしくなりそうになるほど、不気味なものだった。
その不気味な静寂を眺めた彼は、満足そうにひとつ頷き、そして・・・・・・
消えていってしまった。
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