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43.新素材

本日も2話投稿となっております。

この話は2話目ですのでご注意ください。

「やっと終わったねぇ……」


「お疲れ様ぁ……」


「さすがに多かったなぁ……」


 クマに止めを刺したあと、私達は素材の回収を始めたのだが……正直多すぎた。


 何せ1体1体がでかいからね。

 オオカミですら体長2メートルはあるのだ。

 クマに至っては3メートルをゆうに超えている。

 これらを1つ1つ、インベントリに収納していく作業はそれはもう重労働以外の何者でもなかった。

 正直、戦闘よりも疲れたかもしれない。

 でも、その甲斐あって、インベントリにはオオカミとクマがわんさかいる。

 ちょっと、品質はお察しだけれどね。

 こればっかりは仕方がない。

 そんなことまで気を使えるほど余裕のある戦闘ではなかったのだ。

 贅沢は言えない。


 で、気になる各モンスターの説明文なのだが、こんな感じだった。




【オオオオカミ☆1】

 大きい狼。全長2メートルほど。

 その体躯ゆえ、動きはそれほど速くはないが、全身の色が濃い紺と暗く、隠密性が高い。

 そのため、森林などの視界が悪い場所では脅威。

 静かに待ち構えて奇襲する習性があるため、気づけば喉元を食い破られているなんてことも。

『赤オオオオカミ、青オオオオカミ、黄オオオオカミ』

 ~“世界の早口言葉初級編”より~


【マックマ☆2】

 全身真っ黒のクマ。全長3メートルほど。

 動きは遅いが力は強い。

 その爪は強靭で、当たれば八つ裂き間違い無しだろう。

 その肉はジューシーでコクがあり、かといって油っこくなくスッキリしていて、いつまでも食べられると思えるほと美味である。

 特に右手が絶品とされている。

『オラもう我慢ならねぇ! 田舎さ帰るべ! え? マックマの肉をくれるんでけろ? なら居るろ!』

 ~“田舎の成金、【ニューディール】へ行く”より~




「……」


 一体誰が考えたんだろう。

 いや、別にいいんだけどさ。

 デカチョウの時も思ったんだけど、そんな本がこの世界には本当に存在しているってことなんだよね?

 説明文だけってことはないよね?

 図書館か何かがあれば、1回探してやろう。地味に気になるし。


 ってか、このクマの名前は【マックマ】っていうのね。

 名前はともかく、私はその説明文の後半が気になっていた。

 クマは全12頭。

 その内、3頭は【虎吉】がすでに捕食済み。それはもう、綺麗になくなっておりました。

 で、残りは9頭は私達のインベントリに入っている。

 クマに関しては、オオカミに比べると状態は綺麗だ。

 せいぜい、後ろ足の損傷が酷いくらい。あと眉間に数ヶ所の穴もあったりするけど……まぁ許容範囲だと思う。

 つまり、肝心の肉に関しての痛みは少ないと思われるわけで。


 私の中の料理人の血が叫ぶ。


 ――「ユー料理しちゃいなYO!」と。


 ちょっとファンキーな血だけども、言ってることには賛同だ。

 だが、ちょっと待って欲しい。

 それ以前に私はこんな獣の料理などしたことがない。

 当たり前だ。ただの女子高生の中華料理人見習いなのだから。

 おそらく、血抜きも必要だろう。

 そのやり方すら知らないんだけどね。

 ただ、幸いなことにインベントリ内に素材を入れておけば、その間は時間経過をしないため、肉がそれ以上劣化することない。だから、じっくりと考える時間はあった。


 ……お父さんなら知ってるかな?

 可能性はある。

 なぜなら、私がお父さんの作ったジビエ料理を食べたことがあるからだ。

 その時は、たしか猪だったけど……美味しかった。

 臭みとかまったくなかったからね。

 お父さんは、倒した時の処理がいいからだと言ってたけど、圧力鍋を使ったり、アクを丹念に取ったりと、物凄く時間をかけていたのを私は知っている。

 それこそ、また作ってとは気軽に言いにくいくらいの手間をかけていたのだ。

 だから、おそらく料理自体は大丈夫だと思う。


 問題はその前……つまりは枝肉にする方法だ。

 もしかしたら、そういう血抜き云々は専門家任せなのかもしれないけど、聞いてみて損はないだろう。

 ついでに、簡単なジビエ料理も教わってみたい。


 想像が膨らむ。

 早く食べてみたいなぁ……


 ――パクパクペロペロ。


 そうそう、そんな感じでこう、口一杯に頬張って……って!?


「と、【虎吉】、何食べてんの!?」


『ガウッ!』


 いや、見りゃわかるだろみたいな顔してるけど、それって……


 【虎吉】は、私がこの先に作るであろうとジビエ料理に思いを馳せている間に、私の相棒……についた肉片をペロペロと舐めとっていたのだった。


「ダメだよ【虎吉】! 汚いよ!」


 だってそれは……


「【何かの残骸】なんて食べたらダメだってばー!」


 あのグロ塊なのだから。


 一応全滅させたからとはいえ、ここは街の外。油断はできない。

 ただ、今回はそれが裏目にでた。

 私の制止を無視して【虎吉】はなお、一心不乱に舐め続ける。その暴走たるや天井知らずだ。

 私は慌てて相棒をインベントリへと収納した。


『ガウッ!』


「ダメ!」


『ガウゥ……』


「怒ってもダメ!」


『……ガウ』


「か、悲しんでもダメェ!」


 ってか、【虎吉】器用だな!

 くっ! 今度は上目遣いだと!?

 ど、どこでそんな技を覚えたんだ!

 まさか……夜な夜な、キャバクラとかでバイトをしてるんじゃ!?

 そんなこと、絶対に許しませんからね!

 って私は何を言っているんだ。


 【虎吉】のあまりの芸達者振りについつい変な妄想を膨らましてしまった。

 とにかく、ここはビシっと飼い主から言ってもらわないと。


「シズクー! 【虎吉】に何か言ってやってよー」


「なんだか、それを気に入ったみたいだな」


「いや、たしかにそうなんだけどさ……こんなグロいの食べたらいけないって」


「なんでだ? 要は肉片だろ?」


「それはそうなんだけどさ……ギルドでも処理費用がかかっちゃうような代物だよ?」


「じゃあ逆にいいじゃねぇか」


「え?」


「【虎吉】はそれが食べたくて、カノンはそれを処理してぇんだろ?」


「……たしかに言われてみれば」


「じゃあ別にあげてもよくね?」


「むむむぅ……」


 参った。どうやら、飼い主は虎サイドの人間だったようだ。

 許可でちゃったよ。

 でもなぁ……はぁ……仕方ない。


「少しだけなんだからね」


「ガウッ!」


 心なしか【虎吉】の瞳が輝いて見えた。





 結局、【虎吉】は【何かの残骸】を問題なく食べた。

 というか、むしろ大好物の部類に入るようで。

 逆に同じ肉片である、そこら辺に落ちている物には見向きもしない。

 同じ物に見えるんだけどなぁ。

 試しにその肉片をインベントリに収納してみたりもした。

 結果はこうだ。


【何かの残骸☆1】


 そう、『☆1』だ。

 そこには品質表示があったのだ。

 私のにはそれがない。

 違いと言えばそれくらいだろうか?

 でも、それでこの食いっぷりなのだから……【虎吉】にとっては重要な違いなのだろう。


「どんな違いがあるんだろう……」


 私はそんなことを考えながら、それをチビチビと【虎吉】に与えていた。


 【何かの残骸】も単品で出せばただの肉片と思えないことも……ない……気がする。嘘、やっぱり慣れない。


「うえぇ……」


 近くにいるアクアは隠すことなくドン引きしていた。


 っていうか、思わぬところで、私の悩みの種が解決しちゃったなぁ……

 本来、喜ぶべきところなんだろうけど、なんだか複雑な気分だった。




活動報告に、この小説の今後のスケジュールを書いております。

よろしければ、ご一読くださいm(_ _)m


次回は明日15時更新予定です。

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