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14.パーティ戦

「うえぇ……これどうしよう」


 私は相棒にこびりついた肉片に辟易していた。これって戦闘終了後、いちいち取らなきゃいけないの? 絶対に嫌だ。


「一旦、インベントリに格納してみたら?」


「なるほど!」


 さすがはゲーマーアクア様!

 私は早速相棒をインベントリに格納してみることにした。

 ちゃんとインベントリに入るか心配だったが、どうやら問題はなかったようだ。

 肉片だけインベントリから弾かれて、どちゃりとその場に落ちる光景が一瞬脳裏を掠めたんだけど……本当にそうならなくてよかった。


 インベントリには2つのアイテムが表示されている。

 1つはもちろん我が相棒である【鉄のフライパン★3】。

 そして、残りのもう1つはというと……


「【何かの残骸:15】って。品質表示すらないし……」


 つまり、そういう類の物ということなのだろう。


「よかったね! これでいちいち洗わなくて済むよ!」


「そ、そうだね」


 常にポジティブなアクアを私も見習わなくては。

 さて、これどうしようかな?

 インベントリ内にあるのも嫌だからとりあえず……。


 私はインベントリに格納されている【何かの残骸:15】をそのまま画面外までスワイプした。


 ――ドチャッ。


「「ひぃ!」」


 今度からは海か川に捨てよう。そう心に誓う私であった。




「もう! いきなりは酷いよ!」


「ごめんごめん! 次からは一声かけるから!」


「当然だよ!」


 目の前で唐突なリアルグロを見せつけてしまい、普段滅多に怒らない温厚なアクアを怒らせてしまった。

 頬を膨らませてプリプリしている。

 ホント、漫画みたいな怒り方だ。これが不自然に見えないのがアクアの凄いところなんだよね。嫌味やあざとさがまったくない。私には絶対にできないことだ。


「本気で怒ってるんだからね!」


「だからごめんって! 今度お詫びに何か作るから! ね?」


「……」


「ね? だから許して! お願い!」


「……白玉ぜんざい」


「え?」


「白玉ぜんざいで手を打とうって言ってんの!」


「またそんな店にない物を……」


「でも作れるんでしょ?」


「そりゃ作れないこともないけど……」


「じゃあ作って!」


「わかったわかったから! 顔が近いって!」


「やったー! なら許す!」


「抱きつくなー!」


 はぁ……結局、押し切られてしまった。

 でも、どうしよう。ウチって料理が作れる場所、店の厨房しかないんだよね。

 お父さん、許可してくれるかなぁ?

 以前はよかったんだけど、オムライスの前例があるからなぁ……。


 極力、常連客がいない時間帯にこっそり素早く作るしかないか。

 それにこれ以上、私の専任料理が増えるのは勘弁だしね! 学生の本分は勉学なのだ!

 と、ゲーム内から言っても全然説得力ないんだけど。


 最悪、店が休みの日に作ろう。そうしよう。


「それじゃ、どんどん倒してこー!」


「おー!」




 あれからどれくらい狩っただろう。

 っていっても、たぶん2時間とかそこらくらいだろう。途中からは休憩を挟みながらぼちぼちと狩り続けていた。

 なぜなら、私がバテだしたからだ。ときたま、相棒が手からすっぽ抜けることもあり焦った。その時はアクアのフォローもあって大丈夫だったけどね。

 でもおかしいなぁ? おっさんと戦ってた時はそんな感じは全然なかったのに。

 まぁ、それでもリアルの私よりは動けている気がするのである程度のゲーム内補正はかかっているのだろう。じゃないとこんなに相棒を振り回せるはずがないわけだし。


 そういや、開始時間を覚えていなかったなぁ。今度からはちゃんとメモしておこう。

 メニューに簡単なことなら記載しておけるメモ機能があるのだ。活用しない手は無い。


「そろそろ戻ろっか。私、たぶんそろそろ夕飯だ」


「オッケー!」


 今度はお母さんに声をかけられる前に戻っておかないと……ね。


「っていうか、アクアは夕飯大丈夫なの?」


「今日は2人共お出かけでいないんだー! だからいつまでも大丈夫!」


「いや、それは大丈夫とは言わないから。それより夕飯はどうするの?」


「食べにいくよー」


「それってまさか……」


「うん! もちろん、カノンのお店! だって美味しいからね!」


 両親という枷が外れたゲーマーほど怠惰なものはない、とは誰の言葉だったか。

 あ、今、私が思いついたんだった。

 とにかく、少しは手料理もした方がいいと私は思うよ?

 少しアクアの将来が不安になる。大丈夫かなぁ? ちゃんと生きていけるんだろうか? ガラじゃないんたけど、少しだけ言っとこう。


「その言葉は嬉しいけど……私がいうのもあれだけど、ほどほどにしときなよ。中華は油っ気多いんだから」


「たまには大丈夫だって!」


「それならいいけど……なんなら一緒に食べる?」


「え、いいの!?」


「別に構わないと思うよ。それに、前はよく一緒に食べてたじゃん」


「いつの時代の話よー! あれって中学生の時の話じゃん!」


「ほんの2~3年前じゃん」


「そうだけどー。中学生と高校生では目に見えない高い壁があるんだよー!」


「なら食べないの?」


「食べる!」


「フフッ。んじゃ戻ろっか。モンスターは食べ終わってからギルドに持ってこー」


「オッケー! レッツゴー!」


「こら! 背中に乗るなって!」


 こうして、私達は【ニューディール】への足を早めるのであった。




【ニューディール平原:東門付近】


「なんだか、獲物少なくね? ってか、いなくね?」


「たしかに、なんかあったのかな?」


「あ、お前達今来たの?」


「そうだけど。どったの? なんかのイベント?」


「あ~……まぁそんなもんかな」


「なんだよ歯切れ悪ぃなぁ」


「いや、なんていうか……とりあえずこれ見てみればわかるよ」


「どれどれ……え?」


「なんだこれ?」


「こいつを見てどう思う?」


「凄く……凄惨です。って何やらせてんだよ。それよりなんだよこれ。女の子2人が次々と……」


「何って、1人は近距離でもう1人は遠距離でそれぞれ攻撃範囲に入ったモンスを爆音を響かせながらサーチアンドデストロイして回るサイコな映像だがそれが何か?」


「何かって聞かれても……ってか、この青い女の子の持ってるのって銃だよな?」


「だな。まごうことなきな」


「銃ってありなの?」


「ありなんだろうよ。このゲームの中ではな」


「いや、誰も違法性について論じているわけじゃないんだが」


「うるせえ。あんまりしつこいと俺のこの菜箸が火を噴くぞ?」


「やめろ。それを出すな。涙が堪えきれなくなる」


「そうか。泣いてくれるか」


「笑いで」


「てめぇこのやろう! てめぇなんてピンポン玉だろうが!」


「うるせぇ! 凹まないピンポン玉なんてこの世にないんだぞ! 菜箸よりましだろうが!」


「俺のも折れねぇよ!」


「まぁまぁ。弱者同士で喧嘩するのはよしたまえ」


「黙れ! 縫い針のくせに!」


「そうだそうだ! ちょっとチクチクするからって上から見てんじゃねぇぞ!」


「フッ。見苦しいな。縫い針には無限の可能性が……」


「「ねぇ!」」


「てめぇらこのやろう!」


「「なんだこのやろう!」」


「「「……はぁ」」」


「やめよう」


「「だな」」


「話を戻そう」


「「だな」」


「この白黒の子? 手に持ってるのフライパンだよな?」


「デカイフライパンだな」


「ハンマーとかじゃないよな?」


「デカイフライパンだな」


「フライパンって、ここの芋虫ミンチにできるんだな。俺、初めて知ったよ」


「そんなこと言ったら俺もだよ。とんだアハ体験だよ」


「ってか、ここの芋虫ってさ、スッゲー硬いよな?」


「ああ、歯が立たねぇな。初心者キラーって呼ばれてるくらいだからな」


「アイツの名前知ってる? 【カタイモムシ】っていうんだってよ」


「まんまだな」


「ふざけた名前だな。殴りてぇ」


「どうぞ?」


「痛いからやらねぇ」


「でも、俺たちもフライパンを持てばこれくらいできるんじゃね?」


「無理だな。少なくとも俺達には絶対に」


「ならなんでこの子は!」


「知らん! 俺に聞くな! たぶん夢だ!」


「夢ではないだろうよ……」


「とりあえずさ、ここでダラダラダベってないで別の門の平原行こうぜ。ここダメだわ。獲物いねぇもん」


「「……だな」」




次回は8時投稿予定です。

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