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三高生活委員カツオ  作者: けいティー
第3章 農聖王編
22/26

第22話 農邪王ダークリッキーノ、推参!

「鹿平、避けろ!」

 厨川くんに言われるがまま、僕は咄嗟に土買さんとの距離を取る。そのコンマ5秒後、上空から巨大な矢が降ってきた。

 その矢は見事に土買さんへ直撃、操られている人間相手に少々やり過ぎではないか。この攻撃、おそらく神代さんの仕業だろう。体育館の窓ガラスが全て割れるほどのすさまじい爆発と爆風、しかし土買さんは健在だった。

「倒れてない!?そんな…」

 落胆する神代さん。それにしても「竜の因子」とやらは恐るべき力を持っているな。

「少しは痛かったわね」

 あれは少し痛い程度だとは恐ろしい。

「それじゃ、第2ラウンド行くわよ」

 土買さんが刻印がある右拳を高らかに掲げると、刻印が発光し地震のような揺れが起こった。

「何が起こるというんだ?」

 厨川くんは再び刀を構える。

「あなた方ご自慢のロボットで対決よ」

 すると体育館を破壊するように、巨大な漆黒の駆体が姿を現した。

「黒いリッキーノ…」

 四ッ谷さんは巨大ロボを見上げて呟いた。それと同じタイミングで土買さんはロボに乗り込んだ。

農邪王(のうじゃおう)ダークリッキーノ、推参!」

 リッキーノとは違って名乗り口上はセルフ。ロボ自体に自我は無く、単なる乗り物みたいだ。

『ダークリッキーノだと!?わたくしが作ったリッキーノのパクりじゃないか!』

 通信機能越しに土崎先生は憤慨する。

「先生、リッキーノを!」

『そうだね、農聖王リッキーノの強さを見せてやらないとね』

 先生がそう言ってすぐ、僕たちの元へリッキーノが現れた。

「農聖王リッキーノ、推参!さあ皆さん乗り込んで下さい」

 リッキーノが現着してすぐに乗り込む、僕たち生活委員の4人。

 しかし巨大ロボというのは下から見るのと上から見るのとでは結構印象が異なる。この高さから見ると余計にそっくりに見える。でもこのカラーリング、宛ら戦隊ロボのブラックバージョンっぽくてカッコいい…なんて言っている場合ではない。強い衝撃がコックピット内を駆け巡る。

「一撃が…重いです…」

 リッキーノはダークリッキーノのパンチ攻撃をもろに食らったようだ。

「さあリッキーノ、反撃してきなさい!」

「ならば、お返しです!」

 リッキーノはダークリッキーノ同様のパンチを放つ。

「か、硬い…」

「あなたの本気はその程度?」

「まだです、皆さん操縦桿を素早く動かして下さい!」

 リッキーノの指示通り、僕たちは操縦桿を操作する。

「連続パンチ!」

 マシンガンの如き連続パンチで攻撃を仕掛ける。

「あれれ、大したこと無いわね」

 リッキーノが放つ渾身のパンチであったが、ダークリッキーノの装甲はそれ以上に硬かった。

「これでも効かないのか!何か打つ手は…」

 顎に手を当て、厨川くんは考えている。

「種苗交換ビームがあります。それなら…!」

「もしダメだったらどうする?」

「とにかくやってみましょう、種苗交換ビーム!」

「「種苗交換ビーム!」」

 僕と四ッ谷さんの技名唱和と共に、リッキーノの目からビームが炸裂。

「うわっ、やはりビームの威力はなかなかね。少しかすり傷がついたみたい」

「かすり傷程度だなんて…、そんな…」

 動揺するリッキーノ。

「必殺技が通用しないのか…!ここは一旦引いた方が」

 僕はリッキーノに助言する。

「そうですね。そうしましょう」

「残念だけど逃げられないわよ!」

 逃走しようとしたところ、ダークリッキーノによる怒涛の攻撃が始まった。コックピット内は先程よりも激しく揺れている。まずい、このままだとリッキーノは大破してしまう。

「何何何?何が起こってるの?」

 神代さんは高所恐怖症なので、コックピット内で目が開けられないのだ。

 そんなことお構い無しに続くダークリッキーノのパンチやキック攻撃、リッキーノは既に限界を迎えていた。

「これで最後ね」

 ダークリッキーノはリッキーノ同様、目にエネルギーを溜め始めた。

「皆さん、緊急脱出です!」

「でも…」

「私は一度死んでロボットとして蘇った身です。皆さんとは違うのですよ」

「俺たちが死んでしまっては元も子もない。鹿平、さっさと脱出するぞ」

「…分かった」

 僕や生徒会長を守って殿水まはるは命を落とした。そして彼女はリッキーノとなったが、そのリッキーノの命も消え去ろうとしている。また彼女(厳密には違うが)が僕たちを庇って死んでしまうのか。そんな気持ちを抱えつつも安全の為、僕たち生活委員の4人はリッキーノから脱出した。

「種苗枯死ビーム、発射!」

 ダークリッキーノから放たれる、禍禍しい目からビーム。脱出の3秒後に大きな爆発が起き、リッキーノはビームを食らって活動停止した。大破はしなかったものの損傷が激しく、戦える状態ではない。

「リッキーノ!」

 呼び掛ける神代さん。しかしリッキーノからは何の反応も無い。

「し、死んじゃったの…?そ…そんな…!」

 四ッ谷さんは涙を浮かべる。

「あなたたちのお仲間がこうも簡単にやられるとはね」

 炸烈弓銃(ブルームボウガン)を携えて、土買さんはダークリッキーノから降りてきた。

「まだ戦うというのか?」

 厨川くんはすぐさま刀を構える。この切り換えの早さ、流石生粋の戦士だ。

「もう戦いは終わり」

 土買さんは手に持った炸烈弓銃を神代さんの方へ向け、躊躇いもなく矢を撃ち放った。

「危な!」

 矢が神代さんの腕章を掠め、そこから煙が上がっている。僕たちが着けている腕章は普通の人間が戦闘する為、身体能力を向上させる目的で着けるものだ。煙が上がっている、すなわち壊されたか。つまり…今の神代さんは丸腰だ。

「神代さん!」

 僕が行っても間に合わないかもしれない。でも助けないと。厨川くんも気付いたらしく、刀片手に神代さんの方へ一直線に向かう。

「さようなら、神代咲」




 僕と厨川くんの奮闘虚しく、土買さんが放った矢は神代さんの胸部を貫いた。殿水さんの時と同様、世界がスローモーションになって見える。まただ、またやってしまった。また助けられなかった…。

「つ、土買…、あんた…」

 そう言い残して神代さんは仰向けになって倒れた。四ッ谷さんは状況を受け入れられないのか、棒立ちのまま動かない。

「…貴様!」

 厨川くんは方向を変え、土買さんの方へ物凄い勢いで向かっていく。

「『もう戦いは終わり』って言ったでしょう?」

 厨川くんが刀を振り下ろすもギリギリ間に合わず、土買さんはどこかへ姿を眩ました。

「四ッ谷さん、救急車を頼む!119番だ」

「う、うん!」

 通報は四ッ谷さんに頼むとしてだ。こういう際の応急措置はどうすれば…。

「四ッ谷さん、救急車は必要ありません。ここはワタクシの出番ですわ」

 ツインテ丸眼鏡の女子生徒が何ともタイミング良く現れた。

「その声…会長!?」

「どうして大鳥さんがここに?」

「ワタクシ、あなた方生活委員会に興味がありまして、度々観察していましたの」

「俺たちの戦いを見ていたのか?」

「そうですわ。あのリッキーノという巨大ロボの活躍もこの目でしっかりと。まさかこんなことになるとは微塵も思いませんでしたけども」

 生徒会長は活動停止したリッキーノを眺めて悲しげに呟く。

「会長、どうやって神代さんを助けるのですか?」

「実はワタクシ、アティカシア人ですの」

 ここで衝撃の新事実が飛び出した。

「わたくしと同じアティカシア人か!なるほど、だから記憶改竄ビームの影響を受けていないと」

「ええ、ですがワタクシ、土崎先生のようなアティカシア人とは違いまして、『エトコイ族』の生まれですの」

「エトコイ族!?君が?」

「そうですわ」

「エトコイ族の人と初めて会ったよ、君がそうだったとはね」

「身分を隠して暮らしていましたので。因みにワタクシの本名は『ミリノ』ですわ」

「そ、それでですね会長、神代さんをどうやって助けるのですか?」

 僕は会話が脱線気味なところを軌道修正する。雑談している暇などない。

「エトコイ族に伝わる蘇生法がありますの。一旦学校に戻りましょう」

「そんな呑気にしてて良いのか?あまり時間が経つと良くないと思うが」

 厨川くんの真っ当な意見。

「ワタクシの蘇生法にそれは関係ありませんわ」

「ほ、本当に咲ちゃん生き返るんだよね?」

 四ッ谷さんは半信半疑だ。まあ実を言うと僕もそうなのだが。

「ワタクシを信じて下さい。絶対に生徒の命を諦めませんわ!」

「わたくしにもエトコイ族によって蘇生された友人がいるからね。心配いらないよ。どうやって蘇生するのか気になるけど、ゴーターや土買さんが再び襲ってくるリスクも考えてリッキーノを修理しないといけない。ミリノさん、後は任せても良いかな?」

「分かりました」

「わたくしの能力で学校までのワープホールを作る。保健室に繋がっているからそこでやると良い」

 土崎先生はそう言って、意図も簡単にワープホールを生成する。

「先生、他の生徒や保健室の先生が入ってくる可能性もあるんじゃないですか?」

「人払いの結界を既に張っているから、わたくしたち以外出入りは出来ない。勿論保健室の先生もいないよ」

「でしたら安心ですわね。神代さんは怪我人ですから男性のお二方、慎重にお願いいたしますわ」

 僕と厨川くんの2人がかりで神代さんを運び、僕たちは保健室へと向かった。


 土崎先生の言った通り、保健室には先生や生徒はいなかった。

「これなら存分に出来ますわね。お二方、神代さんをこちらに」

 僕と厨川くんは慎重に神代さんをベットに寝させる。改めて見ると胸部の傷が何とも痛々しい。

「ワタクシがこれから行う蘇生法には準備が必要です。教室にあるバッグの中に入っておりますので取ってきます」

 会長は荷物を取りに一旦教室へ戻った。

「…」

 僕と厨川くん、そして四ッ谷さんの3人、静寂が流れる。沈黙したままだと気不味い。と言っても何を話したら良いのか、この状況で余計に分からない。そんな沈黙を破るかのように会長が保健室に戻ってきた。こういう時って数分でも体感1時間くらいに感じるな。1時間は盛りすぎかもしれないが、とにかく長く感じる。

「お待たせいたしました。それでは始めますわよ」

 会長はバッグから石版のようなものを取り出し、それを神代さんの胸元に置いた。

「それは何だ?」

 鋭い目付きで厨川くんは問う。

「イクサヤマドリの石版ですわ。エトコイ族に伝わる蘇生法はこのように、生き物の力を人間の体に宿らせることによって蘇生させるのですわ」

 つまり、神代さんは「普通の人間」ではなくなるのか?

キャラクター紹介!

(22)農邪王のうじゃおうダークリッキーノ


 土買千亜希が操縦する、農聖王リッキーノの色違いのような見た目の巨大ロボット。リッキーノと違ってロボット自体に自我は無い。必殺技は「種苗枯死ビーム」である。

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