章末⑤ ノーマルエンドに希望と救いを添えて
ただでさえちっこいリタの身体が、さらにスイカ大の3頭身ゆるキャラに。
それを小脇に抱え、店へお持ち帰りする。
「まあまあまあ!!!
リタちゃんがこんなにかわいくなっちゃって!」
レン姉さんが仮の身体リタバージョンを抱き寄せて頬ずりしている。
「まさか、シュウにいが具現の指輪で生成したわけじゃないよね?
その……あまりにもリタねえが恋しすぎて」
その辺は正直、自分でも『そうじゃない』と言い切る自信が持てない。
そしてちびリタの身体を抱きたそうに、うらやましそうに見ている悠里。
「ねえ、あの、リタの入っている身体。
わたしも入ること、できないかな?」
そっちかよ。
「コーデリアの魂がおこなった奇跡を再現しただけです」
ちびリタの横で自分の仮の身体を操作するマルチナ。
みんなの前でそう語る。ドヤ顔で。
魔王が封印された時。
リタの身体を動かしていたのは、指輪にこもったリタの魂だった。
そして、その仲介をしたのがコーデリアの指輪にこもった彼女の母の魂。
これをマルチナは、ひょっとしたら再現できるのではないかと推測。
今までオレの頭の中で研究を続けていたらしい。
そしてマルチナが具現の指輪で作った仮の身体をリタにも動かせるようにした。
その結果が、これなわけだ。
「そんなことなら、早く言えば良かったのに。
なんでいままで隠してたの?」
「いえ、うまくいくか分からなかったので。
成功させたのは、今朝なのです。悠里さん」
「でも、これで5人、無事に戻ってきたわけね。
シュウくん」
レンが嬉しそうに語る。
あれからレンには、本当の弟のことについて未だに聞けてない。
ただ、話せる時期になったら話してくれるだろうと思って放置してる。
「それにしてもスゴいよね、シュウにい。
これなら遠隔操作で無敵の身体、とかできるんじゃないの?」
「そりゃあ、身体は作れるだろうけど。
その身体では魔法は使えないし、神の加護とか受けられないからな。
まあ、柔道みたいな格闘家ならアリかもな」
こよりは、あの日戦闘に参加せずリタがあんなことになったのを悔やんでた。
それで、オレやみんなとの間にギクシャクした空気が流れてたわけで。
だけど今日はあまりそういうのを感じない。
こんな形とはいえ、リタが戻ってきたことにホッとしてるんだろう。
「でも、これってこのままずっとこうなの?
やっぱり元の身体には戻れないの?」
悠里がめずらしく心配そうな顔で聞いてくる。
あの日バルドロールの結界が解除されてから、彼女はいち早く駆けつけてきて。
そして、必要もないのにオレに謝ってくれた。
それ以降、特に普段の態度と変わらないのが彼女らしい。
「まあな。学園の図書館で色々調べてるんだけど……」
「いえ、勇者さま。
こうやって話ができるようになっただけでも、十分です」
「……いや、やっぱりダメだ。
リタの体を取り戻さないと」
これはこれで、かわいいからいいか。
なんて思考に陥らないうちに断言する。
「でもさ、それって……。
もしかして魔王の封印を解くことになりはしないかな? シュウにい」
「かもしれないけど、そんなの知るか。
その後のことは、今回役に立たなかった連中がなんとかすればいいんだよ」
「シュウくん、そんなこと言って。
リタちゃんの身体を取り戻して、魔王も封印する。
そんな方法、見つけ出そうとしているんじゃないの? 結局」
「だよね。他の人たちなんてどうでもいい、なんてホントに考えるんなら。
今回のことだって、もっと簡単だったんじゃないかって思うんだ。シュウにい」
「まったく。
アンタ、もっとわがままになってもいいと思うよ?」
「今回は、たまたまそうなっただけだよ」
「といいつつ、ホントはリタさんの前でカッコつけたかっただけでは?
マスター」
「う、うるさいよ、マルチナ」
「それで……どうするの?
もし、方法を探すのに専念したいっていうなら、お店を辞めてもいいのよ?」
「いや、それはないよ。なにをするにもお金は必要だしさ。
お店の肩書きを持っていた方が、色々なところに入りこみやすいだろ?」
「そう……そうね!
それじゃ、わたしももっと色々なところに顔を出せるようにがんばんないと!
お姉ちゃんに任せなさい!」
「わたしも協力……は難しいかも知れませんけど……。
でも、その戦闘の援護……とかもできませんけど……その……」
「今はそれでいいよ。
助言とか、そういうのはできるだろ?」
とにかく、ただそばにいてくれれば、それでいい。
「でも、考えようによっては、むしろこれは幸運かもよ? シュウにい。
これから一日中一緒にいられるわけでしょ。むしろ内心喜んでたりして」
確かに、もしリタが無事だったら。
きっとそのうち王族としてオレと接する機会も減っていくことになったんだろ。
だったら……って、
「そ、そんなことあるか!」
「その、わたしは嬉しいです。
でも、勇者さまは――」
「あ! いや、その、オレだって、その……」
「あいかわらずヘタってるなあ」
「悠里はだまってろ!」
「さあさあ、おしゃべりはそのくらいにして。
お客様も店にいらっしゃってるわ」
こうして本当に、オレにもいつもの日常が戻ってきた。
いや、ほんの少しだけ違うか。
仮の身体でもかわいらしく店の中を歩き回るちびリタ。
客にも気に入られ、かわいがられていた。
前は、客もなんとなく王族の彼女に遠慮をしていたところもあったんだけど。
リタも、とても嬉しそうだ。
ちなみに客には、指輪とのリンクの件は隠した。
リタそっくりに作った人形という風に説明している。
しばらくの間は、彼女見たさにこの店に人が大勢くるに違いない。
商売を続けていくことが、果たしてリタの身体を取り戻すことにつながるのか。
実際のところは未知数だ。
いや、むしろ遠回りをしているような気もしなくもない。
でも、慌てる必要はないんじゃないか。
みんなと一緒にいろんなところに行って、いろんなことをして。
そのなかで、いずれリタの身体が取り戻せればいい。
そんなことを思ってしまっている自分がいた。
本章「魔王襲来編」終
続いて間章2話分を、時間を置いて投稿します。
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