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章末③   オレを勇者と呼ぶな

「オレを!!! 勇者と呼ぶな!!!」



 女の子1人守れなかったオレが、勇者であるはずないんだ。

 オレを勇者と呼んでいいのは――。



 魔王から、剣の突きが放たれる。

 オレは神鋼翼で奴の攻撃をどうにかしのいだ。


 そうしながら、あらゆる方向から突いたり叩いたりをこころみる。


 具体的な作戦があるわけじゃない。

 それしかできる事がないからそれをしている状況。


 攻撃の切れ目に、オレはタイムストップの指輪を使った。

 とにかく、まずは頭を冷やしたい。

 

 現状、近接戦を挑むのが常道なのだろう。

 魔王の『偽りの御手』をかわすために。


 幸い、奴の『真理の魔掌』はすでに使い物にならなくなっている。

 つまり近接戦で魔法が使えなくなっているってことだ。

 都合がいい。


 とはいえ太陽の指輪が無い以上、回転の指輪などに魔力の供給はムリ。

 慎重に様子を見る余裕はなく、条件がイーブンとはとても言い難い。


 何か見落としていることはないか。

 色々考えるがやはり目処は断たない。


『マスター、提案があります。

 コーデリアの指輪、およびもう一つの指輪を魔力供給源に利用できそうです。

 どうしますか?』


 考える。


 そんな使い方をすれば、リタやその母親の魂を減らしてしまうのではないか。

 正直、不安はある。


 そうこうしているうちにタイムストップの指輪の効果が切れてしまう。



 その時、リタの魂のこもった指輪が光った。


 付近で燃え上がっている炎がたまたま映りこんだだけかも知れない。

 だけど、まあ、こういう時は――


『分かった、それで魔力を回復する。

 リタも力を貸してくれるってさ』


『マスター……』


『心配そうな声を出すなって。軽口だ』


『べ、べつに心配なんてしていません。

 マルチナは、クールなAIなんですから』


 これで魔力供給は確保できた。

 回転の指輪を遠慮なく使えるようになったが、根本的な問題は解決してない。


 奴を倒すには『シロの中のシロ』か、あの爆発以上の火力を出さないと。


 ……いや、そもそもそれは思い込みじゃないのか?


 過去、王妃や勇者が対抗した時にも魔王はダメージを喰らっていた。

 けど、アレはそれほどの威力だったろうか。


 何かある。


 いや、どうだろう。

 封印から解放された直後で力が十分じゃなかったとか。

 あるいは王妃か勇者が何かしらの技を使ったか、そんな可能性も……。


「おっと、余を前に考え事など、許さんぞ」


 魔王が突如、剣の速度を上げる。


 勇者壮五がさっき見せていた、神速の一撃。

 それを魔王が連撃で使ってきやがった。


 これにはマルチナも対応をし損ねて、神鋼翼の動きの隙を突かれてしまう。


 これは避け切れ――、



     ガキンッ!!!



 何も見えないところに、突如、魔王の剣が現れた。


 いや、ちがう。

 奴の神速の一撃が何かに阻まれ、剣が止まったんだ。


 これは……。


「ほう、これはあの王妃の使った絶対防御ではないか。

 そんな隠し球を今まで……いや、これはあの小娘の母親の指輪の力かな?」


 感情を読んで、オレも予想外だったことを察したんだろう。

 魔王がそんな推測を口にする。


 確かに、世界樹のダイレクトアクセスで見た、王妃が使っていた術とほぼ同質。

 だけど、魔王の言うとおりとは考えにくい。


 この指輪にはそんな術式は組み込まれていないし、鑑定でもそう出てた。


 それに、オレ自身も発動を意識していない。

 マルチナによる操作でもないようだ。


 まるで自動的に……。

 いや、こんな自動発動するアイテムなんて見たことも聞いたこともない。


 だけど、まあ、こういう時は――


「ああ、リタの母親の魂が、オレに力を貸してくれているのさ!」


 そう、言い切るもんだろ。



 とりあえず、ある程度防御の手を緩めて同じことが起きるか試してみる。

 それは1回の奇跡ではなく何度でも発動した。


 未知の現象なので計算に入れにくいが、保険としては十分。

 オレは、マルチナに攻撃重視にするよう指示する。


 これによって攻撃の当たる頻度は増した。

 それでもこんな攻撃じゃあ、奴の心臓には届かないだろう。


 かといって、『シロの中のシロ』はもう使えない。

 あいつに通じそうな攻撃といえば、あのガス爆発を起こす白い弾丸。


 だが、あれは基本的に多数のザコ敵を一括で滅するために考えた物。

 さっきは建物の中で使ったからこそ、魔王に通じる威力になった。


 あれ以上の破壊力を出すとすれば、何か力を集中する仕組みが必要。


 そのためには――。


「ふふふ、分かるぞ? 今お前は、どう余にダメージをあたえるか悩んでいる。

 士気は高いが、出口の見えない迷路を彷徨っている。そんなところか?」


「くそっ!」


 奴の足下に、流体金属状の神鋼翼を発生させる。


「今さらこんな物をだしてどうしようと言うのか。

 これでは余は捕らえられまい」


 奴はその言葉の通り、流体金属を軽々と飛び抜ける。

 だけど、即座にその足下の流体がその着地点に範囲を広げた。


 それが奴の足に絡まる。


「どうやら、士気が高まって多少機能が向上したか。

 だがこんな、もので余を――」


 そう言いながら真上に跳躍して、絡まったものを振り切る。

 だけどさらに流体金属が追いつき、魔王の足を引っ張った。


「こ、これは!」


 先ほどよりもさらに足下に絡まるその液体に、魔王が少し焦りの表情を見せる。


 魔王が思いっきり足を動かせば、流体金属は簡単に振りほどけた。

 だがそのたびに、まとわりついていた部分へ他所の流体が即座に被さる。


 みるみるうちに、その範囲がどんどん拡大していき。

 やがて魔王が足を震ってもまとわりつくモノを振りほどけられなくなる。


 その上からさらに薄く流体金属がかぶさり。

 奴の全身を覆い。

 厚みがついていった。


 まるでミルフィーユを作る時にパン生地を重ねていくように。



 神鋼翼の新バリエーションというわけではない。

 以前の流体金属のものとおなじモノだ。


 だが今回は、薄く薄く、膜をまとわりつかせるようなイメージで操作してみた。


 今までうまくいかなかったのは、流体金属状は動作が遅くなるため。

 遅くなるのは流体金属を塊でイメージしていたためだ。


 つまり、一度に動かす量が多すぎたのだ。

 その点、膜をイメージして動かせばスピードは格段に上がる。


 ただもちろん強度は遙かに落ち、簡単に破られてしまう。


 だが、破られればそこに新たに膜を張ればいいのだ。

 量が少ないので即座に対応できる。


 最初はなんとかまとわりつく流体金属を振り払おうとしていた魔王。


 だがどんどん動きが鈍くなり、やがてほぼ完全に静止した。



 だが、油断はまったくできない。

 今は力押しで押し勝った状態にすぎない。


 たしかに真理の魔掌は使えなくしていたが、詠唱による呪文発動は可能。

 奴が強力な範囲魔法を発動すれば、たちまちこの状況から脱してしまうだろう。


 魔王もそれに気づいたのか。


 やがて奴を閉じ込めている神鋼の塊の奥から、呪文の詠唱が響いてくる。

 まるで地獄から呪いの声を上げる悪魔のような薄暗さで。


 呪文を鑑定する限り、その魔法は超級の爆発呪文。


 もしその魔法を、身体を神鋼で覆われた今の状態で使えば。

 おそらく魔王は、自身に多少のダメージを負ってしまう事になる。


 そうなってでも、周りの神鋼を剥がそうとする魂胆だろう。



 だがオレは魔王から距離を取ると、かまわず神鋼翼を奴の上空に伸ばす。

 そして、その先に例のガス爆発の弾丸とおなじモノの生成を始めた。


 べつに特別なモノではない。


 魔王の動きを封じる都合、すでに具現の指輪を1つ使って神鋼を生成している。

 なので指輪の仕様上、ガスの容器を同じ神鋼で作らざるを得ないのだ。


 はたして爆発させるベストタイミングまでに間に合うか……。


 


 やがて、流体金属の奥からズンと低い爆発音が響き。

 魔王を覆っている神鋼の各所が熱せられた鉄のように赤く輝き出す


 そして風船のようにそれが弾けた。


 中から所々が焼けただれた魔王が出てくる


 オレの拘束を破れるか否か、その勝負は奴に軍配が上がった。


「ふふふ、どうやら余の方が早かったよう――」


「マヌケが。待ってたんだよ」



 オレは神鋼の膜で、魔王の周囲を完全に包む。

 その大きさは銀色の弾丸ごと建物がすっぽり入るくらいの範囲。


 そしてオレ自身や壮五、リタも神鋼で包むと、弾丸の表面を解放。


     ガン!!!!!


 流体金属から解放された奴が神鋼の膜を破ろうと、思いっきり殴る音がする。

 あともう数回でも同じことをされれば破られ、外にでられてしまうだろう。


 だけど、その行為が奴に引導を渡した。


 突然、その神鋼で包まれた中からものすごい爆発音が響く。

 魔王の先ほどの超級魔法が炸裂した時より遙かに大きな爆音。


 神鋼の膜の中にはガスが充満している。

 奴が神鋼を殴った瞬間、発生した火花がそれにに引火したためだ。


 魔王は流体金属を排除するために自爆に等しい魔法を発動しダメージを受けた。

 そこにさらに密閉空間でのガス爆発による衝撃がさらに被さる。


 これを狙うために、敢えて奴が流体金属を破るまで待ってやったのだ。 

 さすがにこれでやられなきゃあ……。



 やがて魔王を周辺を覆った神鋼の奥で、何かが倒れる音がした。


「……やった……のか?」


 オレは恐る恐る。

 奴の周辺を覆っていた神鋼を解放する。


 そこには、ボロボロの魔王がいた。


 腕はおろか、頭の半分、両足の膝の部分まで消失している。

 なのになぜか、初めからそういう生物だったかのように自然に立っていた。


 だけど、問題はそこじゃない。


 奴はまだ生きている。

 そして失われているはずの身体のあちらこちらが修復を開始していた。


「なんだよ、それ」


「ふふふ、これは前代未聞だぞ! 鑑定士よ!

 ここまでのダメージを余に与えられた者は他にいないぞ!

 それを、勇者の加護を受けない人間が成し遂げるとは!」


 オレは、神鋼の短剣を構え魔王に斬りかかった。


 さすがにこの状態では、オレの攻撃ですら簡単に当たる。

 だが当たった短剣は粉々に砕けてしまった。


 オレは魔王の反撃に備えるが、魔王にその動きはない。

 やはり、今は修復が精一杯のようだ。


 だけど、この状態でも攻撃が通じないなんて……。


「余の肉体が著しく破壊されると、このように修復されるのだ。

 余をなんとかしたくば、もっと細かくこの身体を砕くべきだったな」


「ああ! やってやるさ!」


 オレは具現の指輪に再び意識を集中させ。

 銀色の弾丸を空中に出現させる準備を始める。


 一回でダメなら、何度でもやってやるさ!


 だが、その間にも、魔王の身体はどんどん修復されていく。

 多分、完全修復まで、間に合わない。


 だけど、いまなら逃――。


 知るか! だったらどうした!

 関係ない! またこんな姿になるまで攻撃するだけのこと!


 オレにはもう、その選択肢しかないんだ。

 でないと、オレは、オレはリタに!



 その時、魔王の身体の修復が、止まった。




『しかたのない人ですね、勇者さま』




 戦いの場から離れた場所に寝かせたはずのリタの身体が、魔王の後ろにあった。

10分おきくらいに何話か連続投稿します。



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