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御前試合予選② 悠里にはちょっとイラッときた

 アタッカーの中也が悠里に迫ってきた。


 慌てた彼女は木刀を振りかぶり、地面に叩きつけるように振り下ろす。

 相手の木盾をも粉砕してしまいそうな一撃。

 当たればいかに戦士の加護を受けているとはいえタダでは済まないはずである。

 だが、


「あのバカ」


 思わず自分の口から漏れてしまった。

 防御重視だって言ったのに。


 考えなしで打ち込んだ悠里の大振りの一撃を、中也は発言通り軽々とよける。

 そして隙を突いて横薙ぎの一閃を返してきた。


 それをとっさに木盾で受けた悠里。

 反応できたのは見事だが構えは取れていない。

 ダメージを吸収できず吹っ飛ばされてしまった。


 そんな悠里に目もくれず、彼はうしろに控えているレンに向けて突進。

 ほかの2人も左右からリタに向けて小走りで足を進めてきている。




 レンが前に出れないまま、悠里が突破され、敵3人に迫られる。

 想定していた序盤最悪のパターンである。




※数日前


「だから、オレたちの勝ちだ」


 オレはそう断言した。


 正直、確信があったわけではないが、出任せというわけでもない。


「てか、御前試合のルールってオレたちにとってそこそこ有利なんだぜ?」


「そうなのですか!?」


「ああ。まず、武具は木刀とか木盾とか用意されたものしか使えない。

 これって、神の加護を受けたモノを持ち込めないってことだ。

 そんなのを試合で持ち出され、ゴリ押しされたらどうにもならない」


 もっとも、身体能力や技能は加護の補正が働くためあまり楽観視はできない。

 だが今ならまだ、その差では絶望的なことにはならないはずだ。

 相手が勇者でもない限り。


「それに殺傷が禁じられているから攻撃魔法も調節が必要だ。

 ギリギリ戦闘不能にするように使うのはかなり難しいだろうな」


 てか、当日試合でオレたちに攻撃魔法を使ってくることは、まあないだろう。


 予選パーティの魔法使いは強化系の魔法と簡単な攻撃魔法しか使えない。

 本戦はどうなるかわからないが、それでも1日ですべての試合が行われる。

 オレらみたいなのにはできる限りMpを使わず温存したいだろう。


「そして、もう一つはリーダーに関するルールなんだけど……。

 リタ、有利な点ってわかる?」


「え? あの、その……ただ触れれば勝ち。ということですか?

 だから倒せるほどの力がなくてもいい、とか」


「その通り。しかもリーダーは転生者じゃない。

 身体能力はオレたちより相当劣るはずだ」


「そうか! リーダー狙いは誰でもチャンスがあるってことか!

 ……でも、守りや攻めてきた敵はどうすればいいのさ?

 攻撃が当たらないんじゃ倒しようがないじゃないか」


「だから、倒す必要なんてないんだよ」




※予選当日


 で、オレが考えた作戦はこんな感じだ。

 まず悠里が敵前衛3人の中で一番強い奴を抑える。

 そしてオレが残りの2人を牽制。

 その間にレンが敵陣に切り込み相手リーダーにタッチ。


 悠里はあくまでも動きを止めてくれればよかった。

 倒す必要はない。


 だが実際は、その最初の段階でつまずいている。

 ここから巻き返すにはどうすればいいか。


 ――ここから先は一か八かになるな。

 覚悟を決めるか。





「姉さん!」


 オレは声を発すると同時に指輪に意識を集中する。


 レンは振り向きざまハッとした表情をし、自分の右側に飛び込む。

 オレの意図を察してくれたようだ。


 指輪の力の発動と同時に、オレは斜め上前方へ吹っ飛ばされた。


 体は、体勢を維持したまま低めの軌道を描き8m先で着地。

 そこでまた前方へ吹っ飛び、以後着地と吹っ飛びがリズムよく繰り返される。

 まもなく、オレはレンのいた場所を滑るように通過してた。

 100m走の世界記録をも上回るようなスピードで。


 そしてそのままの勢いで、レンに迫ってきていた中也に体当たり。

 体勢を崩しながらも、さらに足下の地面へ反発力を発生させる。

 オレと中也の身体は、追いかけてきた悠里も巻き込み敵陣へと吹っ飛ばされた。


 そのまま3人、もつれて倒れ込む。


 すかさず立ち上がろうとするが身体にきしむような痛みが走る。

 多分悠里や中也もそうだろう。


「アンタ! なにを――!」


「ブレるな!!!」


 なにか言い出す前に、オレは彼女に言葉を思いっきりぶつける。


 正直ちょっとイラッとしていた。悠里に対してである。

 自信が持てるようあれだけ言ったのに、なにこの期に及んでうろたえてるんだ。


「お前は単純で考えなしだけど! 真面目で! 曲がったことが嫌いで!

 人のために怒ることができて! 自分がやるべきと思ったことを迷わずやる! 

 そういう前提で作戦を組んでいるんだ!

 今さら臆するな! 予定が狂うだろ!!!」


 その言葉に、悠里だけではなく中也の動きまで止まる。



 直後、オレはまわりを見渡しタイムストップの指輪の力を使う。


 たちまち視界が色を失っていった。

 タイムストップを使ったとき特有の現象である。


 この指輪はそもそも時間を止める指輪じゃない。

 装備者の思考スピードを100倍前後に高める効果を持つ。


 どのみち相手も自分も動けなくなり一見無意味なもののように思える。

 だがそれでも、この場を判断する時間は作れるわけだ。

 それは約0.5秒、体感的に1分弱の間。

 オレは、その時間をまず自分を落ちつかせることに使う。



 さっきの高速移動。


 最初は回転の指輪だけで一気に飛ぼうとしたが、それだと勢いがつきすぎる。

 なのでこういう形で高速移動を実現した。


 メインは回転の指輪だが、ほかに2つの指輪も使っている。

 それも含めて、発動させたのはこれまで全部で4つ。

 だが、誰もオレが3つ以上の指輪を装備しているとは思わないだろう。

 そうみんなに勘違いさせる、バカバカしいくらい単純なネタも仕組んでいた。



 状況を整理する。

 まず、左右に展開する木元と牧。

 幸運にも2人はオレの中也への特攻に驚き、警戒してその場で構えていた。

 もし2人がかまわずリタへ殺到していたら、状況はよりシビアになってたはず。


 レンはすでに立ち上がり、敵リーダーのほうに走り始めていた。

 なんか戦いなれているな。この場を冷静に判断、行動してる。

 元の世界でサバゲーとかやってたんだろうか。


 悠里は中也と、もつれ合った状態にある。

 その彼女の瞳には力がこもっているように見えた。

 多分もう大丈夫だろう。


 さて、これからどうするか。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございます!


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