御前試合⑥ 転生者のガチ勢、エンジョイ勢、ログイン勢、それと有明こより
御前試合への参加が決まってからここ数日の間、オレは訓練に参加している。
自分で言うのもなんだけど珍しいことだ。
けど、試合前に少しでも相手の情報を得るためやむをえない。
ちなみに、転生者学級は大まかに三つのグループに分かれている。
一つ目は、ネットゲームなどで例えるとガチ勢という感じのグループ。
18名ほどいる。
二つ目は、これまたゲームで例えればエンジョイ勢という感じのグループ。
15名ほど。
三つ目は、ネットゲーム的にログイン勢という感じのグループ。一番少ない。
12名ほど。
ガチ勢は基本、元の世界に帰ることを願いそのために腕を磨いている人たち。
全体的に技量も高い。
ちなみに、王子パーティーは全員ここに属している。
悠里もこのグループ。
ただ悠里はストイックなだけで、元の世界に帰りたいという意思は感じない。
ゲーム的にある意味、真のガチ勢だ。
エンジョイ勢は基本、この世界に来たことを歓迎している。
なんなら永住することになってもかまわないとか思っている人たちだ。
魔王を倒すのも力試しやゲーム感覚。
必死さが足りないのか実力的には今一ガチ勢に及ばない場合が多い。
ただ、素質によってずば抜けた能力を持っている奴もいる。
ちなみに、予選の相手と勇者はこのグループである。
ログイン勢は、特にこだわりがなく流されるままに順応している人。
帰りたいとかこの世界を楽しみたいとかそういう想いは大なり小なりある。
だが、苦労はしたくないとか痛い思いはしたくないと考えている感じだ。
各グループはだいたい固まって行動している。
そして自分たち以外とはあまり関わろうとはしない。
ちなみにオレは気質的にログイン勢に近いのだろう。
オレもこの世界を楽しみたいという気持ちはある。
だがやり残したゲーム、連載漫画やアニメの続きも気がかりなわけで。
とはいえどっちにしろ、それに命を賭けられるかというとちょっと自信がない。
とはいえ、他の似たような奴とつるむ気も起こらない。
強いて挙げれば四つ目の勢力ということなんだろう。
ちなみにレンはどれにも属さず、それぞれのグループの橋渡し役に収まってる。
普段は非戦闘職で浮きがちになってる悠里をかまってることが多いらしい。
だが、今日はちょくちょくオレのところに来てくれてる。
そういえばレン自身はどう思ってるのかな。
店を構えようとしている辺り、こっちの世界に順応したいようにも見えるけど。
「それで、どうかしら? 対戦相手の人たちは」
二人一組、木刀で組み手を行っている最中にその相手であるレンが聞いてくる。
「そうだね……。
予選の相手は……なかなか厳しいだろうね。
王子パーティーは……まともにやって勝てる感じしないや」
正直に感想を述べる。
召還された当時に比べると思ったより皆随分と動きが慣れたように見える。
加護というやつは、こういう技術習得にも影響を及ぼしているわけだ。
特に王子パーティーメンバーの成長が著しい。
彼らのパーティー構成は、戦士系二人に魔法系一人と回復系一人。
戦士系も訓練を見る限り片方は攻撃、もう片方は防御を得意としているようだ。
典型的な、バランスの取れたパーティーである。
また、魔法・回復役の両者ともにジョブの都合でそうなっているだけっぽい。
近接戦闘の資質も常人程度にはあると思われる。
隙がなさそうに見える。
ちなみに予選相手のパーティー構成は三人戦士系、一人魔法系という感じだ。
それも戦士は三人とも攻撃重視。
残り一人の魔法系は、訓練を見る限り攻撃魔法はあまり得意そうに見えない。
多分魔法攻撃より援護魔法重視のバフ役として機能しているのだろう。
一言でいえば脳筋決め打ち編成。
ゲームによっては終盤、周回用にこういう風に組むこともあるだろう。
だが、まだ力を付けていない序盤ではある意味博打だ。
特に対戦なら絶好のカモだろう。
……と言っても、実際はゲームのようにいくとはかぎらないわけで。
相手はどいつも猛獣相手に戦えるような力を持っている。
てか、猛獣そのものと言っていい。
トラや熊が三匹ツッコんでくればオレたちなんてひとたまりもないだろう。
そういう意味では、状況にはまればとてつもない力を発揮する可能性がある。
なんて弱気になっていても仕方がないな。
なんとか、攻略の糸口を見つけないと。
訓練の帰り、学園一階の廊下で『有明 こより』と対面した。
リタよりも背は低く、茶髪ショートカット釣りズボンが少年を連想させる。
だが釣りズボンの紐で、ほぼ無いはずの胸が絶妙な膨らみを主張し。
袖の短い薄手のTシャツが、さらに微エロさをかもし出している。
それらが彼女の性別を間違えることを、けして許さない。
胸から視線を上にそらすと、なにか変わったネックレスが目に入った。
鑑定してみるが、どうやら自作のアクセサリ。
鍛冶場の関係か炎耐性を上げる魔法効果まで付与されている。
どうやら、オレのもう一つの期待も裏切られなさそうだ。
「シュウにい! こんな時間まで学園にいるなんて珍しいね!?
ひょっとして御前試合の絡み?」
店ではたまに見かけたものの、口をきいたのは今日が初めてのはずだ。
それにしては随分と気安い。
「まあね。
誰かさんがパーティーに加わってくれないから、オレもいろいろ忙しいのさ。
じゃあな。明後日ウチの店に卸す剣、期待してるよ」
正直、訓練で疲れて話す気力がないので軽く挨拶ですませる。
「あれ? シュウにいは、あたしをパーティーに勧誘しないの?」
「じゃあ、ウチのパーティーに来てくれ」
「あはは! そんな頼み方じゃダメだよー」
そう言うと、なにか嬉しそうに廊下を駆け、オレの横を通り抜けていく。
「『こんなげーむにまじになっちゃって、どうするの』」
すれ違いざま、こよりがそんなセリフを口にした。
ハッとして振り返るが、彼女はすでに近くの階段を駆け上がり、姿はない。
知らない人が聞けば、バカにされているとしか思えないだろう。
けど、あのセリフって……。
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