御前試合⑤ 手に入れた指輪を披露する
その日、開店準備に一区切りがついた後。
オレは店外のテーブル上にアイテムを並べて今後どうするか考えていた。
御前試合より前から、鑑定士の訓練がてら収集してたマジックアイテムだ。
店で売られているこの手のアイテムは大きく分けて2種類ある。
遺跡やダンジョンなどで発掘される遺物と、それを劣化複製した量産品だ。
量産品はすでに細かい使い方が皆に周知されているので、対策も打たれやすい。
見つけるなら遺物の中からだろう。
そう思って手に入れたアイテムのラインナップは
○太陽の指輪
○タイムストップの指輪
○具現の指輪
○記憶消去の指輪
○回転の指輪
こんなところである。
太陽の指輪を除けばどれもほとんど見かけない珍しいマジックアイテム。
名前だけ聞くと強力な効果がありそうに思えるが、ハッキリ言って名前負け。
レアリティランクも1~2程度。
活用できる場面も少ないので値段もそれほど高くない、そんな品々である。
あとネックレスも一つあるが、恋愛のお守りで戦闘向きのアイテムではない。
これは店で売ってもいいかな。
だが、こうして広げてみると……。
ガラクタを宝物と称してドヤ顔で見せびらかしているガキのようだ。
少し恥ずかしくなってくる。
「これを御前試合で使うんですか?
どれがどういうものか、全部は分かりませんが……」
「くすくす」
いつのまにやらリタや悠里やレンが集まって来ていた。
てかなにも言わないでただ笑うの、やめてよ姉さん。
「なんかガラクタのようにしか見えないんだけど、大丈夫?」
「言うなよ。
魔法適性がなくても使えるアイテムってなると、こんな感じになるのさ。
例えば……」
オレはおもむろに一つの指輪をつまむ。
「こいつは、タイムストップの指輪と言って」
「「「タイムストップ!!!」」」
三人が驚きの声を上げ、それがハモる。
「なにさ! それ大したことないどころか、スゴいアイテムじゃない!」
「そうですね! わたしもそんな効果のある指輪なんて聞いたこともありません!
ひょっとして大発見なのでは?」
「オレもそう期待したんだけどさ……使ってみな?
ただ指輪に意識を集中すればMpがなくても発動するはずだ」
オレが渡したそれを悠里は無言のままはめて目をつむる。
1秒もしないうちに彼女が息を切らしながら、目を見開いた。
「す、スゴいじゃない! 10秒くらいだけど本当に止まった!!」
「本当なの!? 悠里ちゃん!」
「ええ! それで、自分が動くにはどうすればいいの?」
「動けない」
「……え?」
「だから、自分も含めて誰も動けない。
自分の時間も止まってしまう」
にしては自分の思考は止まっていないし、なにか不可思議なアイテムだ。
「……」
「でだ、これは『記憶消去の指輪』」
「「「記憶消去!!!」」」
「ああ、相手の記憶を3秒前まで遡って削除できる」
「……3秒? それは、どう活用するの?」
「いや、アイデアはないけど、なんかスゴそうだなって」
「……次いってみましょう」
「おう。で、これが『具現の指輪』。イメージした形の物体を具現化できる。
これは具体的にやったほうが早いかな……」
とりあえず頭になにか物体を思い浮かべながら、指輪に意識を集中する。
出現したのはコインの形をした半透明の物体。
「コイン……ですか?
なるほど、こんな感じで物体を出せるのですね」
「でもこれ、形はコインみたいだけど、なんかブヨブヨしてるね。
色も白っぽくて透けて見えるし……ていうか、これって風船?」
「いや、見た感じは風船だけど、針を刺しても破裂するようなことはない。
重さのないゴムみたいなものかな」
「でもこれなら、壁とか防御とかに使えそうじゃない? シュウくん」
「そう思ったけど、ただ強度がね。
打撃には強いんだけど、突いたり切られたりするのは弱いのさ。
多分木刀でも引き裂かれてしまうと思う。
ちょっとした足止めくらいにはなるかもだけど」
リタが指輪の一つを取り上げる。
「……これは、回転の指輪ですね。
岩などをどかしたい時に使われると聞いていますが……」
「それって、相手を転ばせるとか、そういう風に使えそう……だよね?」
「いや、生き物に対しては指輪の魔力がレジストされるので、人にはムリだ」
「なあんだ、じゃあ結局役に立たないじゃないか」
「まあ、そうなんだけど……」
これについてはちょっと試したいこともあった。
「ねえ、こうもっと派手なアイテムってないの?
火炎を出すとか、大爆発を起こすとか」
「うーん、そういうアイテムって使い手が高い魔法適性を持っていないとダメなんだ」
結局。
この世界のマジックアイテムは魔法を使えない人のためにあるんじゃない。
使える奴が呪文の詠唱時間を省くために使うんだ。
「それにしても、指輪ばっかりね。
理由があるの? シュウくん」
「まあね。
指輪は小さいから大したことができない。逆に少ない魔力で使えるってことだ。
それに指先に意識を集中するだけでいいから、とっさに発動しやすい」
「なるほど、さすがですね! 勇者さま!」
それにまあ、指輪で魔法発動って、なんとなくカッコいいじゃないか。
なんて思ったりもするが、それは口にしない。
「じゃあ、そのネックレスはなにに使うの?
補助効果があるみたいだけど」
「ああ、これは店売用に持ってきたアイテムさ。
『魅惑のネックレス』って言ってね。
装備者のことが気になって仕方がなくなるアイテムらしい」
レアリティはランク4。
普通なら国宝級、そんなものが投げ売りされていた。
名前からしてウケが良さそうだし、本来オレが買えるような代物ではない。
だが実際はランクが高いことがかえって災いしたようだ。
どの鑑定士の鑑定でも具体的な発動の仕方や効果の詳細が分からない。
またアクセサリーとしての見た目も今一。
そんなわけで買い手がつかなかったらしい。
オレの鑑定でも今のところ情報の欠落でうまく鑑定できていない。
だがオレの鑑定のレベルが上がり、詳細が分かれば化ける可能性もある。
「魅惑のネックレス、ですか……」
なにか、リタが興味津々な視線で見ているのが気になる。
今のところ、これらが試合を勝ち抜くのに役立つのか見当もつかない。
だが、今の自分に使えるアイテムはこの程度。
なんとか活用方を見いだしていくしかない。
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