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「王城への入り口は見つかった――けれど、途中にどんな仕掛けがあるかも判らないし、道もかなり複雑になっているのは間違えない。注意して行かなくてはならない」
ただ今、僕達は大神官さまの部屋で作戦会議中。
決行日は、準備が整い次第――ということで、まだ本格的には決まっていないのが現状。
けれど、僕達は綿密な計画を練りながら、王城へ入らなくてはならないのだ。
「目的は二つ。一つは俺達の問題だが――妾妃キリクの傍にいる占術師を取り押さえる事。もう一つは王城の、竜に関する隠された秘密を暴く事。どちらも重要で、どちらか一つを選ぶ事は無い。だが、どちらを先にする事も出来ないため――別行動をした方が良いかも知れない」
「いや、それは得策じゃないぞ。アロウの考えも間違えてはいないが――相手は半精霊か、もしくは精霊だ――我らだけでは敵わない…ガルドの力も借りたいところだ――それにはまず、秘密を暴き、その後に占術師の元へ」
アロウの意見に異を唱えるのはいつもザイの役目だ。
目の仇にしてるのではなく、彼の考えに他あるだろういくつもの道を作る役目を果たしている、そんな感じだ。
「いや、その前に、占術師の方が良いのではないでしょうか?」
と、今度はヤズ――こちらは文官としての考えも然ることながら、随分と宰相である父の傍で仕事をしていただけあり、広い視野で物事を考える――という癖があるみたいだ。
だけど――。
「どっちも一気にやりゃ、いいじゃねぇか、面倒臭ぇ〜」
一同に静止し、ガルドを見やる。
まったく、この男は――と思っているのは、この場で一致意見に違いない。
「どちらを先にするにしても、念入りな情報収集が必要となるでしょうね――」
ガルドの意見は真っ向から無視するつもりなのだろうヤズは、そう締め括るように言った。
それには、全員が大きく頷く――と言っても、ガルドは唸るだけだったけれどね。
何しろ、この男は、目の前に食べ物がないとまるでやる気を起こさないのだ。
「宰相さまとの連絡は取れましたか?大神官さま」
「一応は……けれど、この大神殿に貴方達を匿っていることは既にキリクの耳にも入っています。王城は今、神経質になっているようで、なかなか上手くこちらへ足を運ぶ事が出来ないようです――大臣も、その時にはご一緒したいと言っていることから余計なのでしょうね――」
大神官さまの言葉に、皆が肩を落とす。
けれど、僕だけは少しだけ違っていた。
だって、ここまで上手くやれたのだ。全員が力を合わせれば、きっと上手く行く。
僕には、そう思えてならなかった。
「取りあえず、宰相さまがいらっしゃるのを待ちましょう。それから話を進めても遅くない――ううん、きっと上手くいくよ」
僕が力強く言えば、皆も希望を持ち大きく頷いてくれた。
うん、大丈夫。
この分なら、絶対に上手くいく。
何だか判らないけれど、どこか確信みたいなものがあるのだ。
上手く行く――決して失敗なんかしないって……。
宰相さまが、大神殿へ顔を出す事が出来たのは、それから数日経ってからのことだった。
もう既に、この王都へ入ってから一ヶ月近くが過ぎていたけれど、僕達は決して焦る事だけはしなかった。
だって――焦れば焦るだけ、きっと上手く事が運べなくなるから――。
この日は、正妃さまの父上だと言う大臣も一緒に来ていた。
正妃さまとの再会も果たし、また何よりも――王女の無事とアロウとの再会も果たした彼は、随分と歳を召しているにも関わらず覇気に満ちているように思えた。
彼は、僕とガルドの姿を見て、真実驚きを隠せずに居たけれど、それでも僕らを快く受け入れてくれた。
自己紹介もそれなりに終え、僕達全員の目的も話し終える頃には、既に夜も遅くなっていたというのに、彼らはそれ以上に計画を練る時間を僕達にくれた。
「まず――大神殿からの地下通路を使うというのは良いとして――その間に半精霊に動きを悟られないかが心配な所だな…」
そう言った宰相に、大神官さまとテオ神官が言う。
「私達も一緒に行くつもりです――術も使いますので、そう心配はないかと思うのですけれど……」
「では、そこの危惧はなくなったとしよう――次は、どちらを先に攻めるか――ということだな?」
「はい――」
皆が固唾を飲んで、彼らの意見に耳を貸す。
「出来る事であるならば――先に、一番の問題点を片付けるのが良いのではないか?と思う」
宰相さまの言葉に、大臣もまた大きく頷いた。
彼らにとって、一番危惧しているのは、キリクと占術師が手を出してきては、せっかくの計画も台無しになるということなのだ。だからこそ、そちらを先に――と考えているのだろう。
「そうですね……僕も先に、そちらを片付けた方が安全に話を進められると思います」
そう返事をしたのは僕。だって――出来ることなら、邪魔なものは先に片付けたいじゃない。
それでなくても、王城へ侵入するためには色んな危険が伴うと思うんだ。そう何度も何度も王城へ忍び込んだりなんか出来やしないだろう。そりゃ、出来たら僕だって早く自分の用事を済ませてしまいたい気持ちはある。だけど、向こうには半精霊か精霊か判らないけれど、強敵が存在するのだから、そっちを優先的に倒してしまう方が安全だと思うんだ。
「アンジー…君はそれでも良いのかね?」
大臣が、重々しく尋ねてくると、ガルドが一唸りして僕を見た。
同じように、皆が僕に注目をしているのが判ったけれど、もう皆を疑ったりしていないから大丈夫。
「はい――その後なら、皆も僕の手伝いをしてくれるだろう?」
返事をしながら、ついでとばかりに問い掛けてみれば、皆一様に『当然だ』とでも言うように力強く頷いてくれた。
それに僕は、満足したかのように大きく息を吐き出し、改めて頷く。
「皆の力を合わせれば――きっと大丈夫です。僕は、そう信じてますから」
そうして、僕達の言葉で作戦会議が終わった。
アロウは――少しだけ申し訳無さそうに僕を見ていたけれど、もう大丈夫だよというように笑っておいた。
だってね――皆の誠意が、凄く僕の力になってる気がするんだもの。
大丈夫。
全ては上手くいく。
そうして、僕達が王城へ忍び込む日が決まった。
妾妃キリクの誕生日が近くにあり、王城では盛大なパーティーを行うという。
そのせいで、誕生パーティーが行われるだろう週は王城も忙しくなり、人の出入りも多くなるだろうという宰相さまからの助言を貰った。
その週の半ば――僕達は、その日を選んで忍び込むことになったのだった。




