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刀剣呪伝~力を宿して敵を討て~  作者: パチパチ火花
四章 八岐大蛇侵攻編
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第二十五話 重ねる

 冥夜とルキはその八岐大蛇を、たった一、二分で片付けてしまった。

「――行くぞ、ルキ」

「は〜い、たいちょ〜」

 だが。もちろんそれだけでは終わらない――新たな影が、二人の元へ迫ろうとしていた。

 二人はしばらく歩いた後、その影と遭遇する。

「……よう」

 八岐大蛇だと、一目見てわかった。

「……お前も敵と判断した。後退しないなら倒すぞ」

 冥夜が言う。

「まぁまぁカリカリすんなって。勝つのは俺なんだから」

 男は名乗る。

「残月(さんげつ)レクトだ。よろしく」

「……八番隊隊長、讃美冥夜だ」

「副隊長の凛音ルキで〜す」

 三人は刀剣を抜く。

「……言っとくけど俺、幹部だから」

 残月はどうやら自信家だ。

「……それはどうだろうか」

 冥夜は、自分の刀剣の名を呼んだ。

「――恵堂(けいどう)、行くぞ」

 刀剣は光り出し、たちまち巨大化する。

 冥夜とルキは同時に残月に斬りかかる。残月は隊長格の実力に押されながらも、後退せずに耐え切る。

 ――次の瞬間、押し返された。

「……やるな、残月レクト」

「だろ?諦めるなら今のうちだぜ」

 だが。隊長格の力はこんなものではない。

「ルキ、合わせるぞ」

「りょ〜かいです」

 今度は雰囲気が変わった。先程まで「攻め」の姿勢だった二人が、「受け」の姿勢に変わった。

「……ほう、相手を見て戦い方を変えるタイプか」

 残月は僅かに興味を持った。そして、冥夜目掛けて自身の刀剣を振るう。

「――甘い」

 冥夜は反応した。刀剣を弾く。

「…………」

「ルキ、次は来るぞ」

「は〜い」

 残月はルキにも斬りかかった。だが彼女もまた、瞬時に刀剣を振り切った。

「……気安く触んじゃねぇよ」

 ルキが、残月に囁く。冥夜に対する軽薄な台詞とのギャップに、残月は僅かに怖気付いた。

「……ルキ、大丈夫か」

「大丈夫で〜す、隊長」

 二人は強敵だと、残月は気づく。だが、諦めない。彼は過去にも隊長と副隊長、二対一の戦いで勝利した経験があった。

「……舐めんなよ、刀剣士が」

 残月は刀剣を輝かせる。

「俺の刀剣は斬月(ザンゲツ)。俺と同じ名を冠する刀剣だ」

 その能力を解放する。紫色の稲妻が、微かに光る。

「……ルキ、警戒」

「りょ〜かいで〜す」

 ルキも、刀剣を解放する。

「――礪安(レア)」

 その刀身は、青緑に光った。

 ルキの刀剣が、残月レクトを捉える。

「ぐっ……」

「まだまだ」

 後ろから、冥夜も刀剣を振るう。

「観念しろ――終わりだ!!残月レクト!!」


 その時だった。不穏な歯車が回る音がした。


「……お困りみたいですね、親方」

 冥夜は、その女の異様な雰囲気にたじろいだ。

「……お前は――」

「私は閨(ねや)。ブラッドムーン、ですよ。親方」

 やはりか――冥夜はそう思った。

 ブラッドムーン――最近は目立った動きをしていなかったが、八岐大蛇の活動に便乗して再び表舞台に出てきたというのか。

 それは言わば第三勢力――刀剣士でも、八岐大蛇でもない「元刀剣士」の集まりだった。

「……貴様、今ブラッドムーンと言ったな?」

「……まぁ、そうですよ」

 女――閨は、口元に笑みを浮かべながら答えた。

「私らは特に目的があるわけじゃありません――ただ、こうなったら面白そうだなっていう妄想をするだけ……味方についたら面白いことが起きそうな方の、味方をするだけなんです」

 そう言うと閨は、残月の横に立った。

「……二対二、と言いたいわけか」

「残念ながら、そういうことです」

 冥夜は集中した。

 なぜブラッドムーンがこの八岐大蛇の根城にいるのか。全てを探るのは、目の前の二人を戦闘不能にしてからだ。


 慎吾、コアレ、アロマの三人は、禊と共に紅鷹に勝利した後、別の八岐大蛇にも勝利していた。

「吐け。黒い服を着た女性の刀剣士はどこに連れ去られた」

 慎吾は首に刃を突きつけて問い詰めた。紅鷹は一瞬で塵となってしまったので、脅迫が出来なかったのだ。

「……ここから真っ直ぐ行った石の塔だ」

「……本当だな?」

「確かめたいなら行けばいい。どうせ俺のことは殺すんだろ」

「……わかった」

 慎吾はその八岐大蛇を斬り裂いて、言われた通り真っ直ぐに向かった。

 その道中、見覚えのある人物が歩いてきたのだ。

「……紫香楽さん……?」

 見ると極隊の紫香楽だった。そして。彼は――亡骸のようなものを両手に抱えていた。

「――トラさん!!」

 コアレが叫ぶ。三人は紫香楽に駆け寄った。

「どうして……どうして……!!」

「……俺のせいだ」

 紫香楽は静かに呟いた。コアレは涙を流している。

「……仇は、討ったんですか」

 アロマが訊く。――しかし。

「……逃げられた」

「………………」

「最初は、こっちが逃げようとしたんだがな」

 沈黙が落ちる。

「……名前は、名前はなんですか。相手の!!」

 コアレが訊く。紫香楽は、軒屋、とだけ呟いた。

 再び、沈黙が落ちる。コアレは亡骸に縋って涙を流す。アロマも、慎吾も、同じように。

「……なぁ、龍騎(リュウキ)」

 紫香楽が、空に向かってその名を呼んだ。慎吾たちには聞き覚えがなかった。

「……お前の言われた通りに生きてたら、親友を失ったよ」

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