独白絶対壮絶ロンリネス
「その時、悟ったんです。ああ、人って、日常って簡単に壊れるんだなって」
暗闇の中で、ウティアの声が聞こえる。これ、俺に話してる?聞かないとダメ?
「別に、特別な話じゃないんです。大切な人が突然死んでしまうなんてこと。ただ、今の平穏がずっと続くなんて勝手に信じた私が悪いだけで」
眠気のせいではっきりと考えることは出来ないが、それを聞いて屋敷でのことを思い出す。
「じゃあなんで逃げないんだ?あんな啖呵切ったわりにやけに弱気だな」
「初めから弱気ですよ。逃げないんじゃなくて、諦めただけなんですから」
「ふーん」
諦めただけ、という割にはやけに力がこもっていたけどな。
「もし逃げ切れて、どこかにいきついたとしても、つらい生活が続くのは目に見えてます。もう弱者として生きるのに疲れたんですよ。皆もそうだと思います。私たちが築く日常は、あまりにも脆すぎる。だから、もういいんです。せめて、仮初でも平穏に生きてこれたこの場所で、最後を迎えたいんです」
その言葉には絶望に似た諦念があった。
そう思っても仕方ない人生を送ってきたんだろうな。現代社会でぬくぬく生きてきた俺には…計り知れない…けど、だからこそ…
俺は眠ってしまった。
ドゴォン!!
翌朝、俺は全身に走る凄まじい衝撃に目を覚ました。
「かはっかはっ、何が起こった!?」
寝起きどっきりか!?
周りを見渡すとどうやら森の中らしい。俺はウティアの家の中で寝ていたはずだが…
「何かに吹き飛ばされて、ここに叩きつけられたのか?」
村は…って、何だあれ…
遠くに見えたそれは恐らく蛇だった。しかし、けた違いに大きい。
「おいおい、成長しすぎだろ」
まあケツアナを洞窟と見紛うほどだ。そりゃでかいだろうとは思っていたがこれほどとはな。
と、冷静に分析している暇はない。部屋で寝ていたはずの俺がここまで吹き飛ばされたということは村は既に攻撃を受けている。
「さてと、村長の申し出は断ったが…一宿一飯の恩義は、返さないとな」
いつだって、崩壊は一瞬だ。
「そ、そんな、封印がこんなにも早く解かれるなんて…」
「皆!吹き飛ばされる前に武器をとれ!!」
「次が来るぞ!皆何かにしがみつけ!!」
蛇龍がただ蛇ではなく、龍と呼ばれる所以。それは背に生えた小さな翼に起因する。その翼が翼本来の用途で使われることはない。それは、ただ強力な風を発生させる。
「くるっ」
ゴウッ
小さな翼、そう表現されるのはあくまでも蛇龍の体に対してだ。その一扇ぎは、矮小な存在に現実を刻む。
「ッグ、うわああ」
レプラコーンの一人が建物ごと吹き飛ばされ、木に衝突すると共に染みになる。
「今だ!!弓部隊打てえ!」
耐えきったレプラコーン達が一斉に蛇龍に向かって弓を放つ。
そのどれもが標的に当たり、深々と突き刺さる。
…が、それだけ。たかだか数センチの矢じりが、数キロもある巨体に当たったところでなんになろうか。
「ッハ、このクソ蛇野郎が…」
蛇龍はただ、こちらに風を放つだけ。ただそれだけで村は壊滅の危機に瀕していた。
「ごめんなさいシンさん…巻き込んでしまって」
朝、水をくむために井戸に向かっている途中、襲撃は突然始まった。井戸に落ちたため何とか吹き飛ばされずに済んだが、這い上がってみるとそこには地獄が広がっていた。
家の崩壊に巻き込まれた者、飛んできた岩に押しつぶされた者。そのどれもが見知った仲間たちだ。
未だに抵抗しているものもいるが、ダメージを与えることができた者はいない。
終わり。終わりだ。
「アハ、アハは、は、はあ」
歯向かったって敵わないのは知っていた。それに、もうとっくの昔に諦めたのだから、別にこのまま死んでもかまわない。
「別にいい。終わっても、いい。いい、のに、なんで」
また一人、仲間が吹き飛ばされる。崩壊した家の下から悲鳴が聞こえる。
「なんで、涙が出るんだろう」
「そりゃお前、生きたいからだろ」
「シン、さん?」
「いろいろ言いたいことあるだろうけど、とりあえず見とけよ」
そう言って、蛇龍に向けて歩を進める。
「面白いもん見れるぜ」




