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後編

前話に比べれば話の質が落ちています。申し訳ありません。

実戦経験を有し、軍隊にいたという女性が何者かと言えば正体は一目見ただけで分かる。迷彩の施されたブーニーハットと迷彩服上下を纏っており、そこに施された森林迷彩は陸上自衛隊が世界で唯一採用している迷彩だ。女性は女性陸上自衛官であり、兵科は何かといえば足腰がモノを言う歩兵部隊だ。


但し所属は通常部隊ではない。迷彩服にはネームプレートや階級章、部隊章の類を縫い付けていない上に迷彩服の上に装備しているチェストリグは通常部隊では採用されていないタイプのものだ。


スリングによって肩から前にかけて装備している武器もhowa5.56と試作段階で言われた20式5.56mm自動小銃ではなく、M4カービンのカスタムモデル。より短いM4カービンのCQBモデルにM320グレネードランチャーをアンダーレールで装着し、ホロサイトをピカニティーレールで装備した仕様。


陸上自衛隊でもレールシステムやサイトを標準装備するようになって久しいが、それでも通常部隊で採用されている装備よりワンランク上だ。女性の所属元は特殊作戦群。海上自衛隊の特別警備隊に続いて自衛隊内で2番目に発足した特殊部隊であり、習志野駐屯地を本拠とする最精鋭部隊だ。


もう憲法第9条が有名無実化してだいぶたつ昨今では、実戦とは無縁だった自衛隊も武力行使を含む海外派遣を行っており、女性はアフリカの草原地帯での作戦行動中突如としてマケドニウス帝国にテレポーテションさせられていた―世界の危機を救う勇者として。


はっきり言って女性からすれば傍迷惑なことだった。魔王という強大無比な存在が世界征服ないしは人類の滅亡を目的とし、侵略を仕掛けてきたために異世界から召喚された勇者が過去に世界を救ったという歴史的経緯から再度勇者召喚を行ったらしいが、母国でもなければ国交を結んだ友好国のためならばともかく、今まで聞いたことのない国のために命をかけて戦わねばならないのかと彼女はマケドニウス帝国の首脳に唾を吐きたいというのが正直な気持ちだ。


これが異世界に召喚された勇者の華々しい活躍を小説作品等で知っている物なら喜んだかもしれないが、生憎と女性はオタクではない上に20代後半のれっきとした大人だ。れっきとした大人であるために勇者として世界を救い、人日から称賛される英雄になるといった妄想に憧れはしない。


第1彼女は陸上自衛隊で正規の軍事訓練を積んだ上に、現代の非対称戦を実戦という形で肌身に染みて知悉している。過酷な軍事訓練を体験している故に勇者等という存在になりたいとは思わないし、実戦経験者として1人の英雄が世界を救うということに現実味を持てなかった。テレポーテションによって拉致された際に強力無比な特殊能力や常人を超える身体能力を持つように付与されているといっても。


彼女は実戦の現実を嫌というほど知っている。どれほど優秀な訓練を積んだ兵士だろうと狙撃によって簡単に死に絶え、路上に仕掛けられたIEDの爆発で全身を蜂の巣されながら惨たらしく死亡し、勇敢な兵士の群れが非道なテロリストの迫撃砲の攻撃によって纏めて吹き飛ばされる。


そんな惨状を直接両眼で見てきたために、彼女の精神はやさぐれ、かつて抱いた軍隊への憧れや華々しい戦場などという幻想は心の中に欠片もなく、だからこそ、勇者に焦がれることなどありはしない。


戦場の悲惨さを知っていても日本という生まれ育った国の為ならば、やさぐれた心であっても必死に国のために戦おうと奮い立つことができたし、陸上自衛隊を退役するつもりもなかった。が、見知ら無国にいきなり連れてこれら戦いを強要されるとなるとやるきはではしない。


その上、恐らくマケドニウス帝国はこちらを捨て駒にするつもりであるためますますやる気がそぎ落とされてしまう。女性はこの世界の情勢にさほど詳しいわけではないものの、知りえた限りではマケドニウス帝国を初めとした数カ国が連合軍を編成することで魔王の軍勢に対する防衛線を築き上げ、それ以上の魔王軍の侵攻を防いでいるらしい。常識的に考えればこの防衛線に勇者を回して大軍と共に魔王軍に対して反撃を試みるはずだ。


なのにそれをしようとせず、共1人を連れた上で魔王の討伐、ありていにいえば暗殺に送り出すのは不自然極まりない。勿論これについても説明がつかないわけではない。防衛線を築くことによって魔王軍と拮抗した戦いを演じていると言っても、兵力の消耗が激しく勇者と言う戦力を加味しても大規模な反撃ができない場合や、勇者は絶大な特殊能力と超人的な身体能力を備えているため、言うならば戦略兵器だ。余りに突出した戦力であるため通常の兵士と連携して戦わせるのは無理と判断したと考えることもできる。


防衛線で魔王軍を拘束している上にその間隙をついて特殊部隊を送り込み、魔王を暗殺する。危険極まりないことに変わりはないがこう考えれば軍事作戦として成立しないこともない。魔王と言うのが国家元首の称号なのか、それとも魔物を操る何百年かに1度現れる天災のようなものか女性は知らないが、仮に国家元首だとすれば字面的に王制国家の国王であると考えられる。ならそれを暗殺すれば継承者争いが生じ、戦争に国力をまわす余裕がなくなるとも考えられる。天災だとしても魔王が早々現れないのであれば、それを暗殺しただけで戦争に決着はつく。


こじつけに近い形だが、軍事作戦として魔王の暗殺も成り立たないわけではないのだが、それにしては勇者と言う存在がいるとはいえ共を一人連れただけで暗殺作戦に向かわせるなどおかしいことこの上なく、しかも実戦未経験の新兵と来ている。こういった作戦は少人数がベストと言っても普通もっと数は多くするし、ベテランの兵士で固めるはずだ。


それをしないということは、マケドニウス帝国は勇者を捨て駒にする意志を固めている可能性が高いと言うことだ。世界の危機を救う為に勇者を召還したと言ったが、実際には対魔王を念頭にした軍事作戦の一環として、だめもとで勇者召還を試しただけにすぎず、大して勇者が魔王を討伐することを期待していないののかもしれない。


本人の意思を無視して拉致した上に捨て駒として死地に向かわせる相手に唯々諾々と従いたくはないが、従わなければならないのがつらいところだ。何故なら魔王を倒せない限りもとの世界に戻れないからだ。これは軽く調べてみたが、どうも本当らしい。


地球に帰るつもりはないと開き直れば問題はないのかもしれないが、彼女は日本という国に仕える自衛隊員だ。祖国への忠誠と義務を果たさなければならない必要がある以上、地球に戻らないと言う選択はない。不承不承ながら彼女は魔王を倒さなければならなかった。


はぁと彼女は深々とため息をつく。それは彼女が拉致されてからの心労の一切合財をこめた大きなものだった。まったく最低最悪な状況だ。拉致されたうえに軍事作戦を強要されるなど、最悪としかいいようがない。


いずれにしても今やることは現状への愚痴を言うことではなく、目の前の女性騎士に謝罪することだ。少なくとも悪い人間ではないようだし、これから共に戦地に向かい、かつ情報を提供してくれる道先案内人の役割を果たすしてくれるのだから仲良くするにこしたことはない。


「ごめんなさいね、あなたにきつくあたっても仕方のないことだったけどつい不満をぶつけたかったの。本当に申し訳ない。」


「い、いえ、祖国が間違った行いをしたと認めるわけにはいきませんが、勇者様のお気持ちを考えればあのような対応にでるのも仕方がないことかと。こちらこそ勇者様に対して申し訳ないことをしました。」


「さっきは辛く当たったけど、これからは仲良くしましょう。仲良くは無理でも魔王の勢力圏下を長距離行軍して魔王の暗殺に向かうんだから、最低でも協力しないと。」


「勇者様の対応にも当然のことと納得しているので、それについては大丈夫です。」


「そう?じゃあそろそろ城門を出ましょうか。ところで意地悪を言うようだけど、あなた野外でお花を積んだ経験はある?かなり長い間歩き通しだから、野外で排泄することを余儀なくされるはずだけど。」


「・・・そんな品のないことを堂々と言うのはどうかと思いますが、見くびらないでください。野外訓練で屋外での排泄は経験済みです。何なら勇者様が用を足している間、周辺警戒しても構いませんが。」


「これは痛いところを使われたわね。その時はお願いするわ。お尻を剥き出しにした状態で殺されるほど滑稽なことはないもの。」


そう言い合いながら女性と女性騎士は共に城門をくぐり抜けていく。マケドニウス帝国からすれば捨て駒かもしれないが、世界に混乱をもたらしている魔王を討伐するために。















































やさぐれ女性自衛官 年齢は20代後半。異世界に召喚されたといっても外見的には現実の日本人と同一。陸上自衛隊特殊作連群所属。高校卒業後自衛官候補生過程で入隊し、その後部内試験を経て陸曹階級に昇進し、特殊作戦群に。元々の兵科は歩兵部隊である普通科。


自衛隊にはオタクが多いとも言うが、別段オタク趣味の主ではない。そのため異世界召喚で無双できるなどとは思わないし、自衛隊での訓練とシビアな実戦経験からなんで見知らぬ国のためにわざわざ戦わなきゃいけないのと思う始末。実戦経験から精神はやさぐれ、戦場で華々しさなんてないと考えている。国への忠誠から戦い続けていることを選択している。


召喚時に付与されたチート能力は身体能力強化と莫大な魔力、銃弾を無尽蔵に召喚し、それらを魔力強化する事。


2020年代以降から召喚されたという設定。憲法第9条は有名無実化し、自衛隊も武力行使を含む海外派遣される時代の住人。自衛隊も装備をさらに増強しているし、名称こそ自衛隊だが階級制度は現在の者じゃないかもしれず、内部の規定や規則も変わっている。












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