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真実と告白

「シア様……」

「レオ?」


従者兼護衛のはずなのに、暫く姿が見えないと思っていたら、隣国の第二王子を連れ、申し訳なさそうに戻って来た。


「あの……」


先程、私に謎の謹慎処分を言い渡した殿下は、そわそわしながら声を掛けて来るが、今は貴方の相手をしている余裕はない。


「今、8年前の話を聞いたところなの」

「えっと……」


えっ、何で頬を染めてるの?


「あ、アリシア姉様。8年前のことを聞いたのなら、僕のことを何か思い出して貰えましたか?」


あっ!そうか。

私が、いや、本来のアリシアが、隣国の『アリシア』なのだとしたら、この王子とも何らかの関係があったということだ。


「ごめんなさい。まだ、何も思い出せないの」

「記憶を無くす前の姉様は、幼い僕のことを本当の弟のように可愛がってくれて、そんな姉様のことが、僕はとても大好きでした」

「えーっと……」


これは不味い。

アリシアの記憶が消えたというよりは、日本人であった別の人格が入ってしまったというのが正しい訳で……。つまり、8年前に目覚めた日より前のことは、何も知らない。


そんな目で見られても、正直反応に困る。


「あの……」


目が覚めてから8年間、騙し続けていた人達に、私の知る限りのことを告げよう。私だけが知る、もうひとつの真実も含めて。


「私からも、話さなくてはならない事があります。お父様……いえ、ヴァイゼ様には、特に……」









「まず、私は……アリシアではありません」


「「「……っ!!」」」


私の突然の告白に、息を飲む音が聞こえたが、皆の反応に構わず言葉を続ける。

数年前から、こんな日が来ると、既に覚悟は決めていた。


「私が目を覚ました日から8年間、この体の中には二つの魂がありました。ひとつは、この体の本来の持ち主、アリシア。そして、もうひとつは、別の世界で生まれ亡くなったと思われる私です」


その場に居合わせた者は、誰一人として言葉が出なかった。

静寂が支配するこの部屋で、アリシアだけが言葉を紡ぐ。


「今、皆さんが知るアリシアは眠っています。ずっと8年間、つい先日まで、私の中で眠り続けていました」


躊躇いながらも確かめるように、ヴァイゼが口を開いた。


「その……言い方では、アリシアが一度、目を覚ましたように聞こえるんだが……」


「ええ、私が14歳になって2週間が経った日のことです。夢に、私に似た女性、本来の年齢である22歳のアリシアだと思うんですが、アリシアが現れました──」




私を見て、少し悲しそうな表情をした彼女は、ヴァイゼがシアの誕生日に贈ったブレスレットを見て、とても愛しそうに触れた。


『あぁっ!ヴァイゼ。出会った頃の、約束を、覚えていてくれたのね。しかも……!ありがとう……』


綺麗な紺青色の瞳に涙を浮かべ、アリシアはブレスレットについている魔石へと、そっと手を触れた。

そして、溶けるように魔石へと吸い込まれていった。


『もう暫く眠ります。でも、これからは貴女と共に──』


それから毎晩、アリシアは夢の中に現れた。

ただ、少し話すと、すぐに消えてしまう。




「レオ。貴方がアリシアの従者になったばかりの頃に、アリシアから頼まれたことを、今でも続けている?」

「勿論。一日たりとも怠ったことはない」


レオは、緋色の魔石が嵌まった腕輪を外し、アリシアへと渡した。

魔石の色は、レオの瞳の色と同じで、パイロープガーネットのようだった。


「ありがとう」


レオから受け取った腕輪を握りしめると、ほんのりと温かい魔力が感じられた。


「あり、が、とう……」


魔石から溢れた優しい魔力が流れてくる。


レオは、幼い主人に渡された腕輪の魔石へと、毎日欠かすことなく全魔力を注ぎ続けてくれていた。

その腕輪を身につける限り、魔法が使えなくなることも厭わず、常に身に付けた腕輪の魔石へ魔力を流し続けてくれた。


「ヴァイゼ様、このブレスレットについている魔石……」


レオからヴァイゼへと視線を動かすと、ヴァイゼは目を細め、優しく微笑んだ。


「君がアリシアでも、アリシアでなくても……僕は、君を愛してるよ。ずっと一緒にいたんだ。そして、これからも──」


ブレスレットについた魔石は、ヴァイゼの瞳と同じ紫黄色で、アメトリンのようだった。

その魔石には、ヴァイゼからの愛情が流し込まれている。


「ヴァ、イゼ……さま、おとう、さま」




あぁ、この言葉だけで大丈夫だ。




さあ、始めよう。




真実へと繋がる物語を──

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