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現在と過去

それは、突然だった。


「き、貴様!マリアに何をした!」


シア14歳。学園へ通いはじめて2年目に起こった。

相手は、おそらく6年前に出会った王子。隣国の第二王子とのこと。そして、涙を浮かべる男爵令嬢と、その周りを囲むように侍る高位貴族の男性達。


「何をとは?なんのことでしょうか?」

「シラを切るつもりか!貴様は、マリアが下級貴族の庶子、たかが男爵令嬢だと、マリアを虐めていただろう?」


ん?物語が始まってた?

やっぱり、あれはフラグだったのか。私は、6年前に悪役令嬢を演じるべきかと悩んで、やはり演じなかった。なのに、現在、断罪イベントのようなものが発生している。卒業パーティーでもないのに!


「王子殿下。私には、いま何が起こっているのか解りません。私が理解できるように説明をお願いします」

「……っ!!」


殿下は、凄く悔しそうな表情で私を見ている。

何か、無理矢理感があるんだよね。急に食堂で始まった、この断罪イベント?


だって、周りに侍る男性達──


地面から足を離そうともがいている。


はじめに、殿下が動けなくなった。勿論、不思議に思い、その場を離れようとしていた。そして、殿下を心配し、周りに集まる生徒達。女子生徒や下位貴族の生徒は離れることができた。というか、その場から弾き出されたようにも見えた。しかし、何故か高位貴族の子息のみが、殿下の近くで動けなくなった。


そこへ現れた男爵令嬢。


『まぁ、殿下っ!どうしたんですか!?』


彼女が殿下へ触れた瞬間、殿下は動けるようになったようで、男性たちの中から一歩前へ出てきた。そして、間を置かず現れる王族の影が、殿下へ何やら紙切れを渡した。男爵令嬢は、先程まで殿下が立っていた子息たちの中へ。

その後、私は誰かに背中を押され、向かい合う場所へ誘導され、先程のやり取り。もう、ね、断罪とか悪役令嬢とか、関係ないよね?影が殿下へ渡したのって、台詞が書かれたカンペだよね?




『と、とにかく、貴様は暫くの間、謹慎処分とする!』


と、困惑する殿下から言われ、変な断罪イベントから解放されたと思ったら、騎士がやって来て馬車へ乗せられた。


「私は何処へ連れていかれるんですか?」

「まだ詳細を教えることは出来ません」


どうしよう?全寮制の学園から、私が急に姿を消したら、お父様が心配するだろうな。そして、こんなときに限って、従者であるレオの姿が見当たらない。


王族の影が出てくるし、騎士が迎えに来るし、強制的に発生した断罪イベントも謎だったし、多分害は無いだろうと、大人しく揺られていると、馬車が止まった。馬車に乗っていた時間が長くはなかったので、学園から遠く離れてはいないはずだ。


「降りてください」


言われるままに降りると、以前も訪れたことがある王城の前。

物語が始まったかも知れない場所だった。


「シア、久しぶりね!元気にしていた?今度こそ、シアと一緒に国へ帰れるのね!」

「えぇ、お久しぶりです。私は元気でしたが、えーっと…」

「あぁ…!私はミーテ・オブスキュア。隣国オブスキュアの王弟の妻であり、貴方の母親。会いたかった!シア、アリシア!」

「……っ!?」


ど、ど、ど、どうしよう!


「シ、ア……」

「お、とう、さま?」


声のした方を振り向くと、突然現れた黒い靄のようなものが人の形になり、そして、宮廷魔術師のローブを纏ったお父様が姿を現した。


「今こそ、8年前の真実を伝えるよ。私は──」






私が『お父様』と呼ぶ『ヴァイゼ・ヴァールハイト』は、この国エンデの宮廷魔術師であり、『時空を支配する魔術師』として、近隣諸国からも怖れられている。


全ては、10年前に始まった。


10年前まで、この国エンデと隣国オブスキュアは戦争をしていた。しかし、ある魔術師の登場で戦争は呆気なく終わった。

ヴァイゼが戦場に立った瞬間から戦況は変わった。両国の攻撃は空間を歪め無効化され、エンデとオブスキュアは互いに無駄な軍事費の消耗を避けるため停戦した。ヴァイゼの参戦から停戦までの間、死傷者は0だった。

そして、停戦協定が結ばれ、国同士の戦争は終わった。


停戦の鍵となったヴァイゼは、外交官達と共にエンデとオブスキュアを行き来した。その時、ヴァイゼとアリシアは出会った。

すぐに互いに惹かれ合うようになり、ヴァイゼはアリシアに毎日のように、空間転移で国境すら越えて会いに行くようになった。アリシアに恋した魔術師ヴァイゼは、物理的な距離も、大量に消費される自身の魔力も、アリシア以外のことを全て気にしなかった。ただ、毎日アリシアに会いたかった。


しかし、戦争で利益を得ていた一部の商人達は、この停戦協定を良しとしなかった。停戦の2年後─つまり今から8年前─に、オブスキュアから友好の使者としてエンデを訪れたアリシアが暗殺された。正確には、生き残ったのだが。


その日、いつものようにアリシアに会いに来たヴァイゼが、瀕死のアリシアを発見した。アリシアが亡くなる前に発見できたのは良かった。しかし、たった一人で戦況を変え、戦争を終わらせたヴァイゼだったが、()()()()()()は使えなかった。


アリシアを抱き寄せながら、冷静さを失い魔力暴走を起こすヴァイゼの周りには、魔力による暴風が巻き起こり、空間が歪んでいた。そして、その暴風は、異変に気付きやって来た者を誰一人として寄せ付けなかった。


『あり…しあ?アリシアっ!アリシア!!アリシアアアァァァっ!』


瀕死のアリシアは放っておけば助からない。

ヴァイゼの叫びに、アリシアは最後の力振り絞りうっすらと目を開くが、焦点の合わない瞳は何も映さない。転移と魔力暴走により、魔力を大量に消耗し、理性を失っていたヴァイゼは、アリシアの傷を癒すことができないならば──、アリシアを失うぐらいならば──と、自分の『時間』をアリシアへ譲渡した。


ヴァイゼは自分の生命力を削り、アリシアの命を救った。


結果、アリシアの肉体は数年分の()()()()、子供の姿へと。逆に、ヴァイゼは()()()()()


傷が癒えた……というよりは、何もなかったことになった。


当時二人の年齢はヴァイゼが16歳、アリシアが14歳だった。何事もなければ現在の二人の年齢は、ヴァイゼが24歳、アリシアが22歳のはずだった。この瞬間、二人は親子ほどの年齢差になった。


更に、アリシアは、数年の時を戻した影響で、自分自身に関する多くの記憶を失った。

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