さようなら愛しき日々よ
初投稿の予定です。
「じきに応援の騎士たちも来るはずだ。それまでここで奴を食い止めるぞ。闘技場から奴を外に出すな!」
ジャスミンの号令で、俺たちは一斉に動き出す。
固まって動いたらやられる。各々が死角から奴を狙うのが最善策だろう。
俺達はFPSで鍛えたチーム力を活かし、奴を狙う。
「機械兵の弱点は足です!足の関節部分を狙ってください!
巨大兵の攻撃を避けることを最優先に心がけて!当たれば即死です!」
当たれば即死・・・。FPSよりずっとハードだ。
とにかく敵から集中攻撃を受けないように・・・。
なんて考えている横を飯山が走り抜けていく。
こいつ本当に自由だな。
「カバー頼みます!」
前線でAN-94を取り出し、狙いを定める飯山。危機を察知した機械兵達がすぐに群がるも、ジャスミンが切りかかる。陣形が崩れたところを、俺と山田さん、飯山の三人が一斉に掃射する。
「これならいける!」
機械兵が次々と倒れていく。俺たちが自由に動けるのは二人の聖騎士によるものが大きかった。
機械兵の間を縫うように走るジャスミン。彼女が通った後には機械兵がばらばらに崩れていく。
そうなると必然的に機械兵たちのヘイトはジャスミンに向く。
集団で彼女を追う機械兵の足を、フリッツが凍り付かせる。あとは足が止まった機械兵を俺たちが打ち抜いて破壊するだけだ。飯山が動いたのは正解だった。奴らが特定の人物に対して狙いを定めるという性質を持っていることが分かったからだ。
だが、ミミ、そしてエルシオンがこれを黙って見ている訳がない。
ミミが指を鳴らすと、俺の体は光に包まれる。
「なんだ!?」
「権丈院!」
慌ててジャスミンが駆け寄り、俺の体に触れる。俺を包む光が消えてゆく。
「もしかしてこれが・・・?」
「あぁ、空間転移魔法だ。」
マズい。こうなるとジャスミンとフリッツは、必然的に俺たちを守りながら戦う必要がある。
俺達の動きが鈍くなったことを機械兵達も見逃さない。
「来るぞ!」
機械兵たちが小銃を掃射する。フリッツが氷の壁を作りこれを防ぐ。そこにエルシオンが熱線を放つ。
ジャスミンが俺を抱え、危機一髪で回避する。他の奴らも何とか回避したようだ。
気づけば俺たちは、機械兵に囲まれていた。ミミが空間転移魔法で俺たちの周りに機械兵を移動させたのだろう。
「応援の騎士は、まだ時間かかりそうですかね?」
さっきまでの意気揚々な様子はどこへやら。俺は早くも弱音を吐いていた。
いや、だって無理だし。こんな大きいのが相手なんて聞いてないし。
機械兵ぐらいなら何とかなると思っていたのに・・・。
ジャスミンは大分疲労がたまっているようだ。俺たちを守りながら戦っているのだから無理もない。
フリッツも満身創痍だ。いつ倒れてもおかしくない。
やっぱり無理だったんだ。アサルトライフルで無双なんてできるわけがない。
俺達は異世界を舐めていたのだろう。エリュシオンがけたたましい音を立てる。
それに呼応するように、機械兵達も一斉にこちらに向かってくる。
俺は目をつぶった。ここまでか。俺たちの異世界冒険記も。
まさかのタイトル全否定。敵が強大すぎた。しょうがないね。




