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見なくても、次はあなたです――捨てた動画が紙になって届くまで  作者: 竜太郎


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440/540

第四区間の終わり・4

十二月の冷たい雨が、臨時記録室の窓を曇らせていた。第440話で確認するのは、怪異の規則ではなく、人間が規則だと思い込んだものの脆さだった。正体、目的、選定理由、停止法は不明のまま。分からない欄を推測で埋めない方針だけが残っていた。

 海沿いの町は、怪異に関する記録をすべて焼却したと発表した。端末を初期化し、紙を裁断し、住民にも映像を保管しないよう求めた。記録班は反対しなかった。保存が被害を止める証拠も、廃棄が連鎖を早める証拠もなかったからだ。

 三週間後、団地の集会室で開かれた未使用の白紙の帳簿に、前の犠牲者の最期が現れた。誰も撮影しておらず、配送記録にも異常はない。それでも鏡像の中だけ違う人数は真正記録と一致した。榊原凛は焼却前の複製を疑ったが、映像の末尾には焼却後に建てられた案内板が写っていた。

 町はもう一度すべてを捨てた。だが次は、古い家族写真の裏側へ像が滲んだ。媒体を拒否しても、怪異は生活の中にある紙や写真を勝手に入口へ変えた。映像を見なかった住民も死亡し、廃棄と未視聴のどちらも停止法ではないことだけが残った。

「町の判断が間違いだったとは書かない」

 久瀬直人は言った。正解が存在すると証明されていない以上、結果から誰かを責めることはできない。記録班は焼けた台帳の代わりに、分からなかったことを新しい紙へ書き直した。

 夜明け前、封じた白紙の帳簿の余白に、知らない部屋の一角が浮かんだ。次の対象を示す保証はない。警告とも誘導とも断定できない。

「届いた事実だけ残そう」

 榊原凛は第440話の記録を閉じた。廊下では新しい電話が鳴っていた。連鎖は止まらず、誰かがまた前の犠牲者の最期を受け取っていた。

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