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見なくても、次はあなたです――捨てた動画が紙になって届くまで  作者: 竜太郎


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155/540

予測時刻

十一月の雨が窓を細く叩いていた。第155件目の記録で確かめるのは、「非公式記録班を実働させ、救命を約束せず孤独だけを減らす」ことだった。怪異に名はつけない。正体、目的、選定理由が不明であることを、分かったふりで埋めない。それが第百五十話までに残った唯一の姿勢だった。

 記録班へ連絡が入ったのは午前零時過ぎだった。雨宮千景は「助けられる」とは言わず、受取人の家へ向かう人数と到着時刻だけを伝えた。非公式の班に逮捕権も強制力もない。できるのは、届いたものを本物か確かめ、望む家族のそばに誰かを置くことだけだった。

 古い民宿で見つかった電源のないテレビには、真正記録の共通痕である顔の欠けた一フレームが残っていた。模倣なら説明できる部分は多い。それでも、密封前には存在しなかった像と、複製から必ず消える無音だけは説明できない。藤代修司は推測欄を空白にし、確認時刻だけを書いた。

 受取人は映像を見なかった。端末も紙も別室へ移した。それでも容体は予定されたように崩れ、医師の処置は届かなかった。記録班の同行者は、その手を最後まで離さなかった。救えなかったという事実は変わらない。だが、誰にも信じてもらえず一人で待つ最期ではなかった。

 夜が明ける前、封じた電源のないテレビの裏側へ新しい時刻が浮いた。インクも圧痕もない。到着予測に使える保証はなく、命令や警告だと読む根拠もない。

「事実だけを残そう」

 雨宮千景はそう言い、第155話の欄を閉じた。止め方は増えなかった。代わりに、これまで正しいと思っていた規則が一つ減った。廊下へ出ると、誰も触れていない電話が鳴り始めた。次の連絡だった。

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