魔王ユジンの後継
おぉ…!やりましたぞ!アズラ様!
普段はぼそぼそと話すヴェリムも、100年越しの悲願達成となれば自然と声も大きくなった。黒いローブに三角帽子を被り、左手に持つ杖の先端には歪んだ黒水晶が埋め込まれている。
目の前にはヴェリムが描いた六芒星から、バチバチッ、と黒い稲妻がアズラとヴェリムのいる魔王城のとある一室の天井に向けて突き刺さっている。
…これで、先代の悲願も叶えることができる。
アズラは心の底から歓喜に震えていた。
人間との争いは、決して休まることなく、一進一退の攻防が続いている。表向きは大規模な会戦はなく、両陣営の前線は国境の灰色の森と荒野で静かに睨み合っているだけだ。100年以上前には、血と魔力が大地を染め、人類と魔族の激突が世界の運命を左右した時代もあった。
今では国境付近には"超えられない壁"が設置され、小康状態となり、偽りの平和が続いていた。人類が魔王ユジンとの"荒野の決戦"において、人類の希望を未来へ繋げるために五芒星を幾重にも並べ、聖なる光の壁を発現したのだ。この時を境にして、魔王ユジンは突如原因不明の病に倒れ、ちょうど100年の眠りについていたところであった。
ユジン様…あなたが目覚めるその時まで、このアズラ!ヴェリムとともに、異世界より呼び出した邪の者を必ずや育て上げ、人類を破滅するべく魔王軍を率いてまいります。
六芒星の周りはいつのまにか静かになっており、黒煙で部屋が覆われていた。
ヴェリムが杖を地面にトン、とつくと杖先の黒水晶より暴風が巻き起こったかと思えば黒煙が吸収されていった。
う…うーん…。
六芒星の上にうつ伏せになり呻いている男がいる。
お目覚めですか!あなたは我々の悲願なのです。さあどうぞこちらへ。
アズラはいつのまにか六芒星の上にいて、男の手を取り、背中を支えながら歩き出した。
な…なにこれ…?だれこのおっさん…?
え?なんか全身緑だけど?
え??ツノ生えてる??
男は混乱した。そうだこれは夢に違いない。
それにしても久々にこんなファンタジーな夢を見てるな。
昨日の部長へのプレゼンうまくいってテンションあがってたからかな。
せっかくだしもうちょいこのまま夢見てよう。
アズラに支えながら歩いていたが、後ろからぼそぼそとした声が聞こえてきた。
あなた様に出会えて、私ヴェリムも大変嬉しく存じます。ところで、あなた様のお名前も教えてくださいませんか。
チラッと後ろを振り返り、男はヴェリムをみた。
いかにも魔法使いって感じだな。
ツノがアズラ、じいさんがヴェリムね。
名前を覚えるのは信頼関係を構築する上で基本中の基本だ。
俺は、ユウジだよ。
とりあえず話聞こうか。一体君らは何で、俺はなぜこんなとこに呼ばれたのか。
夢に飽きるまでとりあえず付き合ってやろう。
ユウジは、まだ夢の中にいるような気分で会話を続けた。




