囲んで総取りだー! アカリーヌは天下を取りに行く
セルフキッチンの軒下に座るアカリーヌとニーバン。市場が近くにあり、横断する人々も見える。賑やかな中で、雀が植え込みを住まいにしたらしく、お喋りをしていた。庶民も乗れる箱型の馬車を改造した列車が一時停止している。
ニーバンは新しい温泉の情報をみつけたらしい。
「ナロ王国にも、あの竜の涙のようにぬるぬるしたお湯があるらしい」
「おなじアルカリかもね。遠くまで竜の涙を運ばなくても良いと」
ニーバンが大きくうなずき、緑茶をひとくち飲んでから言う。
「探せば、もっとあるはずだ。世界へリン波念力を広げられる」
「列車があるからね。粘土美容と競うのかなー」
アカリーヌをレモンスカッシュのストローを弄りながら考えてもいる。
(やっぱり、店舗運営はソファー先生が上手だし。エリカのところと共同で店を広げていくのかしら)
それでも、ニーバンに思惑があるらしい。
「手軽に取り組みやすいモノが流行る。あの鶏の羽はなー」
「なにか、アレルギーを起こす人もはたまにいるらしいけど。竜の涙も一緒だよ」
化粧品が合わないこともあるし、自分の肌にあうのを選ぶのが普通だ。
「その前のこと」ニーバンは、なにかに気付いたようで、言いよどんでから話す。
「女の化粧とかは手間暇かけるはずだが、簡単なのがいいだろ」
「それはねー。歳をとると、若い時より丁寧に、って母がいってた」
「そういうものか。いや、普通に考えて楽にできるのは楽にしたほうがいい。馬を操るのはコツも必要だしな」
それにはアカリーヌも大きくうなずく。
「エンジンで動かすなら、女でも動かせそうだよ。それがなにか」
(私の気付かないことも知ってるからね。なんだろう)
「おなじ効果なら、鶏の羽を使うかって話」
「あれっ。そうだよね。たぶん、マッサージのやりかたは、強くこするか軽く摩るか」
(リン波念力でしてるじゃん。それなら、効果は同じか。粘土の効果は)
なにかわかりかけた。クレンジングとして優れた吸着性とミネラルの効果。温泉地の粘土にも美容効果はある。やはり大地の恵みには共通点も多い。
「あの教え子たちはリン波念力を使ってる」
「鶏の羽がいいなら、それで良いと思う。調べてみないか」
ニーバンが、ドライブついでだ、とステーションでの施術を確かめようと提案する。
「ちょっと挨拶に来た、と顔をみせに行こうか」
そういうわけで店舗巡り。まずは公爵領へいくことになった。
アッチスグ公爵家を中心に住居や店が並んでいる。二人乗りの馬車を改造した自動車をレールから降ろした。運転席は右にあり、ハンドルの代わりにブレーキとアクセルのスティックがある。
(真剣に運転してるよね)
ニーバンの横顔をみながら、クラゲのことを話した無邪気さも思いだす。
「いい場所に建てたよ、あの方もやり手だ」
いいながら横道へ進める。市場が見えた。
「庶民も多いし、繁華街だよね」
歩く人も多く徐行運転だ。地元のご令息ということで、ニーバンへ挨拶する者も多い。結婚は来春で、と短い会話をしながらも、市場に隣接する女性コミュニティーセンターへ来た。
「アカリーヌ様、ようこそ」
リーダーをつとめる女性があいさつするが、施術椅子には二人が座っている。待合室にも何人かいて繁盛しているようだ。
「やっぱり公爵領は人も多いね」
「フーモト地方も賑やかになりましたね。列車で観光客も増えそうですよ」
「ニーバンのアイデアだから。それより」
鶏の羽が飾られてるのに気づく。
「立て込むとね。ひとりづつ新しいのを使うので手入れが大変」
「そうだよね。消耗品みたいなものだし」
鶏の羽も使い続けると羽は抜けるらしい。
「もう、そのまま。粘土を塗りマッサージ。リン波念力で充分です。いいこと教えていただきました」
(なるほど、そうか。手入れに手間がかかる。それなら、直接マッサージを選ぶ。ニーバンのいってた通りらしい)
「私こそ。良い考えが浮かんだよ。リン波念力なら簡単だし、フェイシャルサロンなら店も増やせる」
「店を構えたい人も多いですから。楽しみですね」
そういうわけで、フェイシャルに特化した店舗展開を考える。
(そうしながら食生活を提案して行けばね。きれいな肌になりたい女の夢を叶えられる)
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やるべきことは、本格的なリン波念力美容術を教える施設。ま、美容コーナーの隣に、やれる場所はある。
「どうじゃ。ハーマベ王国からも教え子を募らぬか」
「そうやなー。王女様の声がかりで集まるでー」
「そうだね。次は隣国かー。この国の美容術は囲んで総取りできるから」
アトゥカラ王国でリン波念力美容術は浸透したはず。列車で近くなった他国へ夢は広がる。
(きれいになりたい女のためにさ。海も山も越えて線路を造ればいいんだ)
美容術で世界制覇をめざして、アカリーヌは走りだした。




