男爵家と公爵家の顔合わせ
お日柄も良く、親の顔合わせが行われる。アッチスグ公爵婦人は楽しみにしていることも有るらしい。
「隠居したらオーカウエのお城へ引っ越しですの」
「いつも会えますね。ご一緒にカルタを楽しみましょう」
フーモト男爵婦人も歓迎する。
(同じ侯爵領で子爵家の令嬢だったらしいから、仲は良いんだよ)
「仲良くすれば良い」フーモト男爵は乗り気でもない。
「女には女の世界があるだろう」アッチスグ公爵も話に興味がないような素振り。
(ほんと、仲が悪いと聞いたけど、二人で話そうとはしないんだよ)
列車で距離も近くなって、と盛り上がるが、父の二人はときおり相槌をうつぐらい。
「聞きたかったんだが」ニーバンが気を利かしたのか話す。
「なんでまた、父と男爵様は喧嘩なさってる」
「そうだね。ちょうどお二方が揃ってるしさ。親戚になるのだし」
(詳しくは聞かされてないし、母も笑って誤魔化してたから)
「馬に蹴られたんですよ」「いつまでも子供みたいに意地を張ってるから」
婦人たちは理由も分かるらしく、お互いの夫へ視線を向けて笑う。
「聞きたいよね。これから結婚式もあるし、仏頂面で来られてもねー」
「そうだな。なにかあったなら決着をつけないか。男らしく」
ニーバンが言う。男らしくと言われたら下がれない二人。
「いつも姑息な猫だましを使いおって。こんどはひっかからない」
男爵が乗り気だ。
「蹴手繰りばかりの男爵が。だれが姑息だ」
公爵も売られた喧嘩は買うタイプらしい。
(これって、相撲。でもさー、蹴るとか猫だましとか、ほかに技はないのかしら)
「そんなに根に持つかしら。ほんと子供だよ」
父と義父だが、言いたい。
「男は女にいい恰好したがるのよ」
「女は勝敗をきにしないのにねー」
(恋かー。誰かを好きになったライバルだと。それじゃ、誰)
どっちなのか、二人の婦人へ目を移す。
「どっちが勝ったの」
「その話は、もうやめよう」
男爵は思いだしたくないようだ。
「昔のことだ」
公爵も、いまさら、と呟く。
「振られたか、二人とも」
ニーバンが分かったように言う。どちらかの婦人なら、話も違う方向へいってたはず。
「王女様になられたから」
「やはり、相談に乗ったお方を選びますよね」
「あの。王女様に惚れていたと」
「王城で働いていたらしい。それで王様に見初められたとは聞いている」
(言い寄られてうっとうしかったんだよ。それを当時は王子様だった王様に相談したと)
やはり、相談に乗ってくれる男性は頼れる。
「振られた同志は、仲良くするものでしょ」
ミテルシとゼンタの仲がいいのを思いだす。
「親戚だし、男の意地はすてなさいな」
「もう相撲をとる歳でもないしね」
「いや。男の勝負は決着をつけないと。仲直りできない」
公爵は最後の勝負だと意気込む。
「そうだ。息子で決着をつけよう。ダニエルは成人になったからな」
「よし、それならニーバン。相手してやれ」
「いや。兄がおりますし」
「止めはしない、と。ほんと男は何を意地張ってるやら」
それには婦人たちも同意するが、男性陣は乗り気だ。
「イチタロに相談するか。ま、やれっていうぞ」
「いつも兄は勝手だ」
「年上だから。しかたないね」
ダニエルとニーバンの相撲が見たくなったのもたしかだ。
(なにかの行き違いと思ったら、恋のライバルかよ。二人とも振られてるし)
話のタネとして受け継がれていくのかもしれない。




