思いっきりバレていた
次の日、王都に帰る為に神殿の前で馬車の準備をしていると。
昨日のパン屋の兄弟がやってきた。
「聖女様、昨日は妹を助けて頂いてありがとうございました。聖女様もロブ様も私達のパンが好きだと仰ってたので、いっぱい焼いてきました、是非受け取ってください」と大きな袋を差し出して来た。
「あら嬉しいわ、とってもいい匂いね。王都に着いたら、ロブさんにも渡すわね。あと、今度困った事が起きたら、自分達で解決しようとしないで、ちゃんと信用できる大人に相談しなさいね。ロブさんが自衛団の皆さんにあなた達のお店も巡回ルートに入れてくれるように頼んだそうよ」
パン屋兄弟は何度もありがとうございますと言ってお店に戻って行った。
そして荷物も積み終わり馬車に乗り込んだ。
馬車では宰相様の向かいにアラン様が座り、何故か私はアラン様の膝に乗っている。
「おい、俺はこれを1時間も見ながら帰らないといけないのか?」と宰相様は文句を言ってるが、アラン様は全く気にしていないようだ。
「アンナは誘拐事件で疲れているんだ、この固い椅子には座らせられない」
むしろ爆睡して元気一杯ですが、まあいいか。私は少し恥ずかしいが、嫌な気はしない。
宰相様はまたニヤッとして。
「まあ1時間もあるし、ちょっとお話しをしようか、アンナ」
アラン様はムッとした顔で、
「お前は叔父じゃない事がバレたんだから。アンナを呼び捨てにするな」
宰相様は気にする風でもなく。
「アンナ、俺の事も名前で呼んでいいぞ。どうせ歳が近いんだろう?」
私もアラン様も一瞬意味がわからずに返答ができなかった。
「え?宰相様。何を言ってるんですか?」
「マークって呼んでいいぞ。とぼけるなよ、こんな15歳がいてたまるか。お前は前世の記憶でもあるんだろう?」
な!なんでわかるの?前世の記憶持ちってこの世界でポピュラーなの?
「そんな顔するなよ。昔の文献でちらっと読んだ事があるんだよ、前世の知識を使った医者がいたって。お前は本当はいくつなんだ?」
アラン様の視線を後ろから感じる。
「。。。。前世で死んだ時は40歳でした」
「うわー、歳上かよ。どおりで俺に対しても物怖じしないなって思ってたんだよな。初めは聖女だからかなと思ってたが、報告書の作り方とか家事の知識とか、誰に習ったのか説明がつかなかったんだよ」
「前世では息子が4人いたので、お世話するうちに色々な家事の知識を仕入れたんです、旦那とは離婚したので働いてましたし」
それを聞いてアラン様は複雑な表情で私に聞いてきた。
「それは私の事も息子だと思って接してきたのか?」
「まさか、寮の団員さん達は息子のようで可愛いなと思っていたんですが、アラン様は弟のように思って。。」
「アンナ、それはフォローになってないよ、アランにトドメを刺してるよ」とマーク様が言ってきた。
「ちゃんと最後まで聞いてください!初めは弟のように見えて、可愛いと思ってたんですが。今は違いますよ。流石に弟に抱きしめられたり、膝に乗せられて平気でいるほど図太くないです。アラン様だって、私の事お母さんみたいだって言ったじゃないですか」
「それは第一印象だけだ、俺だって母上を膝に乗せたりしない。俺の事を怖がらなくて、優しく接してくれて、そして俺のシャツを脱がせる時に一喝されて、俺は一目惚れしたんだ」
マーク様は「え?シャツ脱がせたの?叱られて一目惚れ?意味がわからない」と困惑気味だ。
そんなマーク様を私はじっと見て。
「ちなみにマーク様、今回の誘拐事件。マーク様が裏で手を引いているとかないですよね」と私が言うと。
マーク様は澄ました顔で「そんな訳ないだろう、私はこの国の宰相だ」
いや。。すごく怪しい。
「まあ、誘拐事件の情報が入った時にこれは使えると思ったのは否定しない。神殿の護衛隊でなく、わざわざアランに話を持って行ったんだからな。これで君たちが結婚すれば、アンナは聖女を引退して、俺は優秀な文官を手に入れられるし、アランの家族からは感謝されて、侯爵家の後ろ盾ができる。何で俺は貧乏子爵家の出身だしね。いつ誰が宰相の座を奪おうと仕掛けてくるかわからないし」
「え???アラン様侯爵家の出身なんですか?私は孤児ですよ?求婚して大丈夫なんですか?」
「問題ないでしょ、聖女が嫁に来て喜ばない家はないよ」
アラン様は私の手を取って
「家なんか関係ない、俺はアンナじゃないとダメなんだ」と私の手の甲にキスをした。
「強面の熊が蜂蜜をかけられた熊みたいになっちゃったな。この甘ったるい雰囲気の中1時間も一緒にいなきゃいけないってなんの苦行だよ」とマーク様がため息と共に呟いた。
終わりを決めずに書き始めたこの話。後2話ぐらいでやっと終わります。




