7/29
準備はしておくに越したことはない
その日は快晴だった。
カーテンを開け、柔らかな五月の光を部屋へと招き入れた希美は大きく伸びをする。
「うん、予報通りでよかった。さて、そろそろ仕上げに入らなくっちゃ!」
両手で頬を軽く叩き、部屋の隅に置かれたリュックへと目を向ける。
「準備はしたからあとは入れるだけだね。ふふ、楽しみすぎて気合い入れすぎちゃった。あ、いけない、そろそろ着替えなきゃ!」
エプロンとパジャマを脱ぎ、クローゼットからグリーンのロングTシャツとベージュのジャンパースカートを取り出す。
日傘を持っていきたいが、荷物が多くてもいけない。
代わりにグレーのキャスケット帽をかぶり、鏡の前に立ってみる。
見つめ返してくる姿に、にんまりと笑顔を返すと再び準備を始めていく。
「えっと集合場所は、長根駅のバスロータリー前だったよね。うん、間違ってない。よし、出発だ!」
気合いを入れ「よいしょぉ!」と声を掛けながらリュックを背負うと、希美は玄関の扉を開いた。