五百七十章 キャシィズカフェでの祝杯
うわわ…また間違えました。「奇数日」ではなく「偶数日」の更新でした。><;
すみません。@@;;
五百七十章 キャシィズカフェでの祝杯
そんな話をしているボタンたちの横を…ダフネたちがすれ違っていった。
「おおっ、ダフネ、敵の背後からの奇襲…本当に助かった、礼を言う!」
「ああ、ボタン様…イェルメイドとしては当然です!」
ボタンはオーレリィが抱いている赤子を見て…ダフネは「苦渋の決断」をしたのだなぁと思った。
「ふふふ、ダフネが産んだ子だな…可愛いな。」
オーレリィが笑いながら言った。
「ボタン様、生まれたてのイェルメイドですよ。」
「…だなっ!」
ヴィオレッタの馬に男が近づいて来て、膝を折った。
「セレスティシア様、ご無事で何よりですっ!」
「レイモンドさん、よく働いてくれましたね…ご苦労さまでした。」
「ははっ!」
「今回の戦争…ホイットニーの一族は本当に活躍してくれた。リーンに還ったら、その功績に何か報いなくてはいけませんね。」
「ははははっ…‼︎」
ボタンは言った。
「…して、みんなはどこへ向かっているのだ?」
「キャシィズカフェですよ。今、コッペリ村では…あそこにしか食べ物がないですからね。」
「そうか…では、セレスティシア殿、私たちもちょっとキャシィズカフェに寄ってみましょうか?」
「いいですね!」
ボタンたちがキャシィズカフェに向かっていると…ひとりの初老の男に呼び止められた。
「あの、もし…」
「誰だ?」
「…あなたはイェルマのお偉い方ですか?」
「私はイェルマの女王である。」
「…私はコッペリ村の村長をやっているサイモンと申す者です。エステリック軍を村から追い出していただき、誠にありがとうございました…。」
「一応、コッペリ村はイェルマの『縄張り』みたいなものだからな。…にしても、ちょうど良かった。村長のあなたと話したい事があったのだ。」
「…と申しますと?」
「今回は上手くいったが、毎回そう上手くいくとは限らぬ。それでだ…コッペリ村を正式に我がイェルマの領土として、大隊規模のイェルメイドを常駐させたい。いかがかな…?」
「エステリック軍から守っていただけるのなら、大変結構なお話でございます…ただ…」
「ただ…何だ?」
「…村人の税金や賦役、兵役などはどうなりましょう…?」
「はははは、それを心配していたのか。当面の間は考えていない。それに村の自治も保証してやるぞ。」
「おおおっ、女王様…ありがとうございますっ!」
村長と別れてボタンたちがダフネたちと一緒にキャシィズカフェに入ってみると、一階の厨房にキャシィズカフェの住人みんなが集まってお茶を飲んでいた。キャシィをはじめとしてその夫のハインツ、セドリック母子、フリードランド夫妻、養い子たちとケント…。
「四獣」の顔ぶれに驚いてキャシィが走り寄ってきた。
「うおおっ…これはボタン様、マーゴット様…えと、ライヤ様も…!」
「今、検分の最中でな…ダフネたちがここに来ると言うので、我らも寄ってみた。」
ダフネを見つけたキャシィは興奮して捲し立てた。
「遠くから見てましたよぉ〜〜、ダフネさん。『鬼殺し』で、えいっ…て!カッコ良かったですぅ〜〜っ‼︎」
キャシィの言葉にダフネは興奮した様子で言った。
「ふんっ、いつかは一発お見舞いしてやろうと思ってたんだ!」
「ダフネ、もうお母さんなんだから…もっと自重しなさい。」
ユノちゃんを抱いたオーレリィに諭されて…ダフネは苦笑いをしていた。
興奮したのはダフネだけではなかった。ダフネの赤ちゃん…ユノを初めて見たグレイスの養い子たちはどっと集まってきてユノを取り囲んだ。
一番興奮していたのは十三歳のサシャと十二歳のリンだった。
「きゃあぁ〜〜っ…可愛いぃ〜〜っ!この子がユノちゃんね⁉︎」
「仲良くしてあげてねぇ。」
「抱いても良いですかぁ〜〜?」
「まだ首が座ってないから…優しく、そっとね。」
養い子の間でユノの取り合いとなって…母親のダフネはハラハラしていた。
普段は控え目なフリードランド夫妻が前に出てきて、深々と腰を折った。
「もしや…イェルマの女王陛下で在らせられますか…?」
「うむ、女王のボタンだが…あなたたちは?」
「は…女王陛下におかれましては息災で何よりでございます。ふつつかな娘ではありますが…アナスタシアがお世話になっております…」
「むむ、アナ殿の親御殿だったか…アナ殿には我らの方が世話になっている。此度の戦もアナ殿の功績が大である事は疑いないところだ。良い臣下を得たと…親御殿にも礼を言いたい…!」
「はは、勿体なきお言葉…!」
ボタンは生粋の貴族だったフリードランド夫妻と少し言葉を交わして…失礼ながら、少し気疲れした。
ボタンはみんながお茶を飲んでいるのを見て、ちょっと遠慮がちに言った。
「喉が渇いたな…我らにもお茶をご馳走してくれないか?」
キャシィはハッと何かを思いついた。
「…せっかくみんな集まったんだから、エステリック大侵攻阻止を祝って…乾杯しましょっ、ね、ねっ⁉︎」
キャシィは駆け込みカルテットに、みんなにレンブラント将軍が置いていった一等級のワインを振る舞うように言った。
ハインツがキャシィの耳元で囁いた。
「キャシィ、良いのかい?君はあのワインを高値で売り捌くんだって、息巻いていたじゃないか…」
「ううぅ〜〜ん…ちょっと惜しい気はするけど、このワインは私たちが汗水垂らして手に入れた物じゃないから…そんな物はパァ〜〜ッと飲んじゃいましょっ!」
駆け込みカルテットのハンナ、ローラ、カリンはみんなのためにワインのコップを準備をした。ビッキーはと言うと…レンブラント将軍が残していった大量の食材で勝手に料理を作り始めた。
ボタンのコップにワインが注がれると、それはふくよかで香ばしい匂いを部屋じゅうに放った。
「むむっ…⁉︎」
ボタンは注がれたワインをひと口含むと驚嘆した。
「うおっ…ワインだな、ワインには違いないが…今まで飲んでいたワインとは全く別物じゃないかっ⁉︎味が…丸くて美味いっ‼︎」
その言葉を聞いて、みんなもひと口飲んでみた。
ゴクッ…
「何と…!」←マーゴット
「おお…!」←ライヤ
「これはこれは…」←フリードランド夫妻
「わっ…!」←グレイス
「うひゃっ!」←ケント
「うん、美味い!」←レンモンド
「…美味しいね。」←ハインツ
レイモンドは二度目の一等級ワインだ。ハインツは…飲み慣れている。
キャシィは慌てた。
「ああああっ、みなさぁ〜〜ん、乾杯なんだから…フライングしちゃダメですよぉ〜〜っ!」
当然、未成年のヴィオレッタとセドリックはお茶での乾杯だったが…尋常でないみんなの様子を見ていたヴィオレッタは思った。
(このワインはそんなに美味しいのか…エヴェレットさんにもこのワインを飲ませてあげたいなぁ…いやっ!むしろ…逆か⁉︎)
エヴェレットはワインが大好物だ。それゆえ…もし、このワインの深みに嵌りでもしたら…それはそれで非常に困る!
しばらくして、ベレッタの騎馬隊が二台のワゴン馬車と一台の食糧馬車を引っ張ってコッペリ村に帰ってきた。もちろん、レンブラント将軍とその幕僚たち、そして司祭と司祭長も一緒に…。




