毎日が記念日
「おらー、ビール冷えてねぇぞ!?」
「さっき買ってきたばかり何すけどー!?」
全然足りない様子の世界ちゃん。
ストレス溜まってたんだな……。
不死ちゃんと沁ちゃんは、手をグーパーして遊んでいた。
楽しそうね……。
「御兄ちゃんもするの?」
「結構ですー」
「いやぁー、鍋は良いねぇー」
世界ちゃんは嬉しそうに言った、完全に酔っ払いだ。
でも簡単に作れて皆で楽しめる。
日本のパーティーにはピッタリだと思う。
「ぶはーっ、おめぇも飲めー」
俺の金で買ってきたんだけどね!?
世界ちゃんに渡された缶ビールを飲んだ。
「美味いなー」
「だろー」
再び酒をあおると、すぐに酔いが回ってきた。
簡単に酔える、お得なタイプなのだー。
気が付けば、俺の部屋に女性が三人も居る。
へへ、ハーレムか?
なろうランキング駆け上がっちゃうか!?
意味不明なことを考えながらフワフワしていた。
「ん、何だこれ?」
不意に世界ちゃんが呟く。
鍋から掬い上げた細長いものを見て言っていた。
んー、何だアレ。
見覚えがあるような……?
あれは確かー。
「ま、いっかー」
「ゆ、指ぃ!?」
一瞬で酔いが醒めた。
「それ指だからー、不死ちゃんの指だからー!?」
指を食べようとしている世界ちゃんを止める。
再びの指混入事件だった。
「不死ちゃんのだよね?」
向き直り確認する。
不死ちゃんに料理を一任していたのだ。
「ウ、ウチちゃうよー!?」
その『違う違う』と振った手の指が何本か足りてない。
「一本どころじゃねぇー!?」
「ホンマや!?」
グーパーしてる時に気付いてよ!
「四本は入ってるの」
「え、パッと見は三本に見えるけど」
「アタシなの」
「沁ちゃん!?」
沁ちゃんも指が一本足りなかった。
「大丈夫なの! 不死身なの!!」
「お揃いやー」
楽しそうに指が有った場所同士をくっ付けてる。
ちょっとは慌ててくれ!?
「いいから、鍋を漁るぞ」
「人の肉を取るなよー」
「人の肉が入ってんだよ!?」
世界ちゃんから指を回収する。
煮込まれた鍋からも、指を幾つか発見した。
やっぱり指はへにょっとしていた。
「これで全部かな……」
二人は指を付けを終えると、一本ずつ指折り数えた。
「足りてなくない……?」
「ホンマや!?」
不死ちゃんの指が一つ足りない、これは大事件である。
「どこ行ったんやろー」
「もう一度鍋の中を漁ってみるか」
「まな板の方を見てくるの」
俺達は頑張って残された指を探す。
「ビールおかわりー!」
「せめて待っててねー!?」
鍋の中を漁っても見つからないので、机や床を確認する。
しかし、それらしきものは見当たらない。
「こっちには無さそうだけど」
「こっちにも無いの」
「おかしいなー」
他人事みたいな不死ちゃん。
指を失くすのが一番おかしいからね……。
「あれ?」
ふと不死ちゃんの指を見ていると違和感があった。
「何かその指……。包丁で切ったにしては抉れてない?」
包丁なら多少は綺麗な切り口だと思うが……。
「んー、あ! せやー」
不死ちゃんは玄関の方へと走っていく。
「さっきドアで詰めてん」
玄関のドアに指が挟まっていた。
「何それめっちゃ痛そう何だけど!?」
「抜けたと思ったら、千切れてたんやなー」
「気付いてよ其処は!?」
「相変わらずなの」
昔からこうなのか……。
「沁ちゃんも同じ不老不死なのに結構違うね」
「痛いのはヤなの」
「そりゃそうでしょう」
「だから全然違うの」
「ん? そう言ったつもりだけど……?」
沁ちゃんはそれ以上答えてくれなかった。
何か違いがあるのだろうか。
「治ったデー」
「そりゃ、記念日だな」
「せやー。毎日が記念日やー!」
笑みを浮かべる不死ちゃん。
確かに忘れられそうにない毎日を過ごしている。
「御鍋たべよー!」
「食べるの!」
二人は居間に戻っていく。
俺は、その後を追いかけながら。
指を煮込んでいた事実に思いを馳せるのだった。




