第九章「少年と本」
今回は彼女の過去の話がメインになっています。
この物語の重要な部分でもありますよー。
第九章「少年と本」
辺境の村……。
自然は消え失せ、何もかもが枯れたこの村で。
一人の少年と少女が出会った。
「一人なの?」
泣きじゃくる少女に、少年は声をかけた。
嗚咽まじりの声で、うまく話すことが出来ない。
伝えたいことがある。
母親が死んだ。
父親も殺された。
私は一人だ。
一人になった。
認めたくないのかもしれない。
話すと認めることになるのかもしれない。
だから、神様が私に話せないように泣きじゃくるようにしているのかも。
そうだ。
そうなんだ。
ありがとう神様。
そして、いつか、絶対に、復讐してやるから。
私の運命を狂わせた……神様。
・・・・・・・・・
少女もやがて成長した。
1年も満たない内に、彼女は魔術を覚えた。
元々才能があったのかもしれない。
ある夜、少年が光る珠を取り出して教えてくれた。
最後の賭けがこれだと。
でも、詳しくは教えてくれなかった。
何だか分からなかったけど、恐怖を覚えて、使わないで約束した。
少年は笑って頷いた。
少女も笑って頷き返した。
笑顔も取り戻し、少女は復讐の準備を着々と進めていく。
しかし。
・・・・・・・・・
神への復讐。
それが少女の目的だった。
しかしその前にやっておくべきことがあった。
少女の村を滅ぼした、そして世界の絶望を目論む魔王を倒すことだった。
それが少年の目的だったのだ。
少年を心から尊敬…………愛情があったのかもしれないが、少女は快くその目的に付き合った。
やがて魔王と対峙した二人。
一人の少年と、一人になった少女は、いつしか二人になった。
勝てるという根拠の無い自信があった。
少女の髪が紅に染まる。
いつの日か、父親に綺麗な金髪を褒められたことがある。
少年にも褒められて、自然とはにかんだこともあった。
「ああ……あああ……。」
少年も苦しそうにしていた。
その顔を歪ませていた。
こんな状況なのに、笑ってほしいと思った。
「ごめん……エンジェル。」
「シュウ……駄目だよ……使わないって言ってたじゃん……!!やめて、やめてよ!!」
懐から取り出した光る珠を、少年はごめんと呟き、その珠を使った。
少年の記憶を代償に、魔王は滅んだ。
・・・・・・・・・
「シュウ……シュウ……!!」
「…………。」
目覚めないシュウ。
シュウのまわりには、本が散らばっていた。
白、黒、黄色、紫、青の5冊の本が。
表紙にはそれぞれ名前が書かれていた。
試しに、青の本を手に取ってみた。
本は淡い光に包まれて、そこから一人の少女が出てきた。
「……!?」
私は驚いた。
そりゃそうだ。魔法だったとしてもこんな魔法は聞いたことない。
ゆっくりと目を開けるその少女に話しかけると、『少年の記憶』だと少女は言った。
記憶に聞いた。
戻ることは出来ないのか。
答えは出来る。
簡単だというので、すぐにやってもらうことにした。
少女がシュウに口づけをした。
いきなりそんなことをするものなので恥ずかしかったが、シュウに記憶が戻るのならば……。
形を持った記憶は消えた。
まだシュウは目覚めない。
次に、紫の本に触れた。
紫色の髪をした少女が出てきた。
今度は彼女達のことを説明をしてもらった。
『記憶の本』と呼ばれるこの5冊の本には、それぞれ司っている記憶が違うという。
青は常識。
紫は過去。
黄色は感性。
黒は心の闇。
白は心の光。
私はシュウと一緒にいたいと思った。
だけど、シュウにも心の闇があることを知った。
何かは分からないが、彼にも許せないものがあったのだろうか。
後ろめたいことがあったのだろうか。
……いや、あったのだろう。
ここに存在しているから、間違いない。
「……名前は?」
「グンカ。」
表紙と同じだ。
「グンカ。シュウと、他の記憶の本を……世界に散りばめて。」
「何故?」
「もう、シュウが戦わなくていいように。思い出せないように。」
「分かった。でも、それでいいのか?貴女はそれを望んでいないように見える。」
「いいの。自分の記憶を求めるかはシュウが決めることだから。」
・・・・・・・・・
「記憶の本……。何でだろう……ずっと気になっていたんだ……僕……無意識に探してた……。名前も知っていた……。」
王都「デュランダル」で、その少年と少女は対峙した。
壁が本棚で敷き詰められた広間。
少年の後方には、『記憶の本』。
自称妖精のネオラ。
黒髪ツンデレのシュランツ。
金髪ツインテールのミュゼット。
「でも……。」
と、言葉を発したのは少年……シュウだった。
そして続ける。
「エンジェルは、僕が求める……記憶の本を求めるかは自分で決めさせるようにしておいた。でも、シュランツさんには取り戻させるように言ってた……のは?」
「ネオラと記憶の本を求めてるって分かったから……。だから協力した。」
「…………じゃあ、教えてくれる?」
「何を?」
「エンジェルは……どうしたいんだ?グンカさんを僕に流れ込ませたってことは……記憶を?」
「そう。思い出させてあげる。」
「……!!」
身構えるシュウ。
「……何で?」
「さあ……。でも、僕はこうしたいってことなんじゃないの?」
「いらないの?記憶。」
「いらないよ。だって、もうあるから。新しい記憶が。」
「……。」
「すっかり色付いたよ。青、紫、黄色、黒、白。全てが僕の記憶だ。僕自身の記憶なんだ。エンジェルの話が本当なら、口づけをすると消えてしまうんだよね?」
「そうだね。」
「僕は、ネオラさん達に消えてほしくないから。一緒に旅をして楽しかった。それを、もっと続けたいんだ。まだまだまだまだ足りないんだ。このぽっかりと空いた穴を埋めるにはね。」
笑顔でそう言ったシュウ。
……成程。
ここで私の役目は終わったのか。
「じゃあ……私はいらないかな。」
エンジェルはそう言った。
するとシュウはすっとんきょうな声で、
「え?」
と漏らした。
「だって、新しいシュウには、私は必要ないでしょ……?」
「いやいや、エンジェルが必要無い、なんてことないよ。だって、記憶を色付けるには沢山の仲間がいないと。」
「……シュウ……。」
「っていうかエンジェル。髪がボサボサじゃん。あんなに綺麗だったのに……。」
「……ごめん。シュウがいないから、お手入れサボっちゃった。」
「仕様がないなぁ……。ここを出たら、一緒に美容室に行こうか。」
「うん……!」
「あのー……。」
…………そうだ。三人がいた。
「あ、すみません、ネオラさん、シュランツさん、ミュゼットさん。」
エンジェルとの話に入り込んでしまっていた。
「とりあえず、三人とも。これからもよろしくお願いします。」
深々とお辞儀をするシュウ。
「…………。」
「……少年。」
「顔を上げるッスよ。」
「ん?あっ、すみません。」
苦笑しながらシュウは頭を上げた。
そして……目の前に来たミュゼットに。
少年は口づけをされた。
灰色図書館を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
次回からは佳境にはいっていきます。
終わりに近付く物語と、ある妖精の生きざまを是非。
Thank You。




