表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣才なき騎士の復讐譚 〜物語で復讐を果たす  作者: 雨夜 フレ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

毒は日常に

今日は快晴。

まさにお出かけ日和だ。


「で、なんでこうなるの!?」


リシアが大きく声を上げる。


「しー」


僕はリシアの口を防ぐ。


「落ち着いてこれが最も自然な状態なんだ」

「だからって、なんで私がこんな格好を!?」


彼女はいつもの動きやすい恰好ではなくひらひらしたドレスに身にまとっていた。


「似合ってるから大丈夫だよ」

「そっちの心配はしてないのよ!」

「いた!?」


僕は思いっきり頭をはたかれる。


「なんでデートをする必要があるかって聞いてるの!」

「昨日、言ったでしょ?」


そう昨日、僕が囮になる作戦を考えた。

結果一番自然で一番有力だったのが落ち込んでいる僕をリシアが連れだしてデートしているということだった。


先生も「いいね」と言ってくれた。

しかし、リシアは不満らしい。


「あのね、いざってときあなたを守れないでしょ!?」

「それは先生が陰から守ってくれているから大丈夫だよ」


そう言って納得させたのだが……


「まだ不満なの?」

「当たり前でしょ!?」


リシアは興奮しぱなっしだ。


「ほら、リシア。行こう」

「うっ」


いやいや、ながら僕の差し出した手を握ってくれる。


城下町はにぎやかで人の声が反響している。

重なり響き重低音に聞こえた。


「これが王都……」


街のどこからも声がしていた。

人はどこを見てもいる。


「ほら、アル行くわよ」

「う、うん」


リシアが先に歩いていく。

どこに行くかわかっているかのような感じだった。

なので任せたのだが……


「リシア……ここ武器屋だけど?」

「私、王都の武器屋来たかったのよ!」


目をキラキラさせながら言う彼女。

今にも飛び跳ねそうな勢いだ。

これは止められないな。


二人で武器屋の扉を開け中に入るといかつい店主がこちらを睨んでくる。


「おいおい、ここはデート場所じゃないぞ?」


嘲笑の笑み。

当然だ。

いかにも貴族の見た目の男女が入ってきたらそうなる。


「これ、振っていい?」

「振れるならな」


リシアは壁に掛けてあった剣をとる。


「ふっ!」


それを片手で軽々振る。

それを見て店主の目が変わる。


「へえー嬢ちゃんいける口かい?」

「見てわかるでしょ?」

「ふ、はははは」


店主は面白そうに笑いだす。


「いいな。面白い。何か一つ安くしてやるぜ?」

「え?いいの!?」


リシアは目を大きく開き店主を見る。


「おう、男に二言はないぜ?」

「やったー!何にしようかしら?」


彼女はじっと一つ一つ見ていく。

その中にあるショーケースに入った剣の前で止まる。


「うん?これは?」

「ああ、それはある民族の伝統の武器だ」


その剣は全長が50~60㎝で両刃のシンプルな直剣だった。


「これがいいわ……」

「この民族の人達は武器を売ってくれないから苦労したんだが……嬢ちゃんならいいだろう」


店主はショーケースのカギを開けリシアに渡す。

鞘から剣を抜くと磨き上げられた刃がリシアを映し出す。


「気に入ったわ…」

「それはよかったぜ」


店主にお礼を言い僕たちは店を後にする。


「うーいい買い物したわ!」


大事そうに剣を抱えているリシア。

なんだかそこにあるのはぬいぐるみとかでは?

とは思うものの本人がここまで喜んでいるのだ。

水を差すわけにはいかないな。


「よかったねリシア」

「うん!」


はにかむ彼女は日に照らされて明るい。

今まで惨劇が嘘のようだ。

ああ、父上や母さんにも見せたかった……


「今度はアルの番ね」

「僕?」

「ええ、あなたも欲しいものあるでしょ?」


そう言えば今度の誕生日は新しいペンを買ってもらおうとしていたな……


「ペン……かな」

「了解!じゃあ、文具屋ね!」


彼女の手は僕を強く太陽のもとに連れ出す。

陽がまぶしい。

だけど、温かい。


「ここね」


そうしてきたのは城下町で有名だという文具屋だった。


中に入ると数々の美しいペンが置かれていた。


「いらっしゃいませ。今回はどのようなご用件で?」


おじいさんが出迎えてくれる。


「えっと新しいペンが欲しくて」

「どこでも書けるペンが欲しいわ!」

「ちょ、ちょっと!リシア無理言わないで!」

「無理じゃないわよ。今後のあなたには必要よ!」

「どこでも書けるペンですか……」


おじいさんは少し悩みながら僕を見て呟く。


「君はどんな状況でも書きますか?」


その問いに僕は答える。


「僕にできるのはそれだけですから」

「そうですか……分かりました。ついてきてください」


そうして彼に連れられて店の奥に行く。

そこは作業台であった。


その上には綺麗なペンのようなものがあった。


「これは?」

「これはボールペンというものです。これならどこで書けます」

「!?」


そんなものは聞いたことがない。

いつの間に出回っていたのだ!?


「最近私が開発した試作品ですがね」

「試作品ですか?」

「ええ、設計図はありますから増産はできます。ただテストがまだなのです。これをあなたに上げます」

「え?いいのですか?」

「ええ、あなたなら私がまだ見ぬものを書いてくれそうな気がします」

「勘かしら?」

「はい、年寄りの勘です」


にっこり笑うその顔は人懐こくって妙に安心する。


「分かりました。ありがたく頂戴します」


そのペンは少しの重みがありながら握りやすくてこれまでのペンとは違っていた。


「書いてみますか?」

「はい」


紙が差し出されて僕はそのペンの感想を書いていく。


滑らかに滑るペン先。

確かな書いている感覚。

それは生活の充実感とも似て満足する。

インクが染み広がり文字ができていく。

まるで積み上げていくように。


「すごいです……」

「ふふ、自信作ですから」


ペンには僕の顔が映し出されており、彼女が剣に何か見出したように僕もこのペンに何か見出した。


「助かったわ!」

「いえいえ」

「また来ます!」


僕たちは店を後にする。


「うん……いい買い物だったな」

「ふふ、私を褒めなさい」

「そうだね。すごいねリシアは」


僕は自然と頭を撫でていた。


「そ、そこまでやれとは言ってないわ!」

「照れない。照れない」

「照れてない!」

「それより、そろそろ昼だしそこのお店で昼食にしようか?」

「うー……分かったわ」


店に入ると数人お客さんが店内にいただけだった。

一斉にお客さんはこちらを見てくる。

まるで野生の生き物のようだった。

そして妙に静かだった。


「いらっしゃい。なんにするんだい?」


おばさんが聞いてくる。


「私は骨付き肉!」

「はあ、リシアは……さっきのキャンセルでオムライス二つ」

「ちょ、ちょっと!」

「はいよ!」


おばさんは振り返るまで視線を僕に向けていた。

そうしてキッチンに向かっていく。


「ちょっと勝手に変えないでよ!」

「あのね、その格好だと汚れたら大変でしょ?」

「うっ」


リシアに説明しているとキッチンから妙なにおいを感じ取った。

寒気がしていた。

肌寒さではない。

あの時と似た殺意だ。


「書かなくちゃ…」


僕は紙を取り出し書き始める。


おばさんの絡みつくような視線。

ほかの客の妙な静かさ。

妙なにおい。

昼間なのに少ない客足。

今もむけられている客からの強い目線。


「はい、おまち」

「ほら、あなたも食べましょう」

「リシア、待って」


食べようとするリシアを止める。


「何よ?」

「それは毒入りだから食べないで」

「え!?」


リシアのスプーンが床に落ちる。

音は反響して店に響く。


「な、何言ってるんだい!?」


慌てたように見える。

しかし……


「あなたが毒使いのですね?」

「ふふふ」


おばさんは笑う。

感情のない笑みだ。


「知ってもね?」


ナイフが僕の眼前まで迫る。

それをシリアが買った剣で受けとめる。

はじき返しておばさんは後ろに下がった。


「へえーなかなかやるわね?」

「当たり前!」


リシアが切り伏せるようにとびかかるが綺麗に受け流される。


「ちっ」

「ふふ」


あのリシアの斬撃をナイフで受け流すなんてなんて動体視力だ。


びりびり。


リシアがスカートを裂く。


「ここからが本気よ」


彼女の目が変わる獰猛な肉食動物のそれに。











読んでいただき、ありがとうございます。

気に入っていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ