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銀の魔女の勇者  作者: 星川ぽるか
二章 英雄の国と水神獣
53/60

49話 勝敗

更新を再開します。


「こ、こちら、全部で1780銀貨になります」


 ファイアウルフの討伐報酬280銀貨、薬草採取の報酬1500銀貨、薬草採取の依頼主の名はエイジと書かれてあった。


「ありがとうございます」


 俺が報酬を受け取ろうとした時、ライドがずかずかと俺との距離を詰めてくる。


「おい、おいおい、受付の君、一体誰の報酬金と取り間違えたんだ? 薬草採取とファイアウルフだけで銀貨が千枚を超えるはずがないだろ。いいかい、僕は彼と勝負をしているんだ。あんまり適当なことを言ってるとどうなるかわかってるんだろうな?」


 カリナさんに脅しをかけるように高圧的な態度をとるライド。


「い、いえ、何も問題ありません。ファイアウルフの討伐報酬280銀貨、薬草採取の報酬1500銀貨、カナタさんへの正当な報酬ですし、依頼金も受け取っております」


「そんなわけがあるか!」


 ライドはカナタの受けた依頼書を手に取り、書かれた書面の文字を入念に目を通す。


「依頼人の名は…、エイジ、だと?!」


(この国の五英傑(ごえいけつ)が何故?!)


 驚愕と焦燥とが入り混じり、理解の及ばないことにライドのさっきまでの余裕は毛ほどもなかった。


「貴様! これはどういうことだ! 五英傑がこんな依頼を寄越すわけがない!」


 ものすごい剣幕でつめよるライドに、随分と前に感じられるかつてのクラスメイトたちと同じ姿を見た。それもあってか、落ち着いた心持ちで冷えた声音で俺は言った。


「依頼者がそう依頼したんだ。俺はそれを受けただけ。その人の地位は関係ないだろ」


「それでも、有り得ないだろ! さては貴様、取り入ったな! そうでもなければ薬草にこれだけの報酬は払わない!」


 そう、ライドの言う通り、これがエイジとカナタの作戦だった。

 しかしそれを言う必要はないのでここはしっかりと黙っておこう。黙秘だ黙秘。お口チャック。


「おい! なんとか言ったらどうなんだ! こいつッ…僕を無視するな!」


 しつこいクレーマーだ。バイト時代の頃を思い出す。


 ライドは唾を撒きながら眉間の(しわ)は寄りに寄り、その怒りは一向に収まる気配がなかった。


「それよりも勝負の件、忘れてないだろうな」


 俺が閉じていた口からそう言葉を繰り出すと、


「そ、それは……」


 言い淀みながもライドはなんとか続ける。


「ふ、不正の疑いが、ある、から……再戦という風に……」


 さっきまで強気というか怒りに任せて勢いづいた語気がすっかり霧散した。


「ギルド公認ってお前から言ってただろ。やり直しだって無効だろうし、仮にできても俺は絶対にやらないから」


「き、貴様ッーーーーーー! この土地の領主の息子である僕に対して粋がるのも大概にしろよッーーーーー!」


 怒りの感情を露わにして近づいてくるライドは鬼の形相で、それを感じ取った俺は身構えるが、


「そこまでっ!」



 轟く野太い声は二階から見下ろすザムドことここのギルドマスターだった。


「上にまで聞こえるほどの騒ぎ……穏やかじゃないよなぁ」


 厳かに切り出すザムドの雰囲気にカナタも微かに慄く。


「ギルドマスター! ちょうどいいところに! 今ーーー」


「あー、話は知ってる。賭けをしてるんだって?」


 ザムドから制され、さらに事態の把握もしている様子の彼に、ライドは一瞬目を丸くして「え、ええ」と辿々しく答えるも言葉を続ける。


「か、彼が不正を働いたのです! 男同士の嘘偽りのあってはならない賭けに対して! 正当な敗北ではない! 僕は再戦を希望する!」


 個人間での出来事でも、ギルドの外ならまだしも中で騒がれてはザムドも対応しないわけにはいかない。

 声高らかに吠えるライドにギルドマスターという立ち位置のザムドは、この場の、ライドに求められた裁定を下す。



「別にしなくていいだろ」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ライドはザムドの発した言葉を理解できなかった。いや、理解することを拒んだ。

 彼の下した裁定を疑った。


「な……にを言ってるのですか? 彼は、不正をしています」


「なら、証拠はあるのか?」


「……ッ! 証拠も何も普通に考えて五英傑が薬草の依頼などするわけがないでしょう!」


 馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なっ!


 あってはなるものか! 


「我が国の英雄だ。きっと俺以上に忙しいのだろう。それこそ冒険者に依頼をいれるくらいだ。事情があるのだと、察することはできないか?」


 悟らせるように言うザムドに、ますます怒りを募らせるライド。


「しかしっ!」


「それにだ」


 引き下がるものかと反論を展開しようとしたが、ザムドの冷えた声音でぴしゃりと止められる。


「冒険者は騎士じゃない。正々堂々戦う必要はないだろ。ましてや依頼金の合計額で競ってるようじゃないか。なら依頼達成している時点で、不正も何もないだろ。普通に考えて」


 最後に皮肉を残すように言ったザムドに、ライドは今度こそ何も言えず、ギシギシと歯軋りする。



「ギルド公認の勝負だ。契約書もちゃんとある。よってライド・クローナー、勝負に敗北したお前は金貨30枚を冒険者カナタに支払い、冒険者の資格を剥奪! 今後全てのギルドにおいて冒険者としての活動を禁ずる!」



 ライドの冒険者生命はこうして断たれた。




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