11.陰キャ男子と文化祭①
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あれやこれやと頭を回す二人だったが、三日などあっという間に過ぎていく。
結局、出来たことといえば、本番までの時間を稼いで反発自体を有耶無耶にすることだけであった。これで真琴を美波のボディガードにすることには成功したが、依然疑っている者も多い。
それもそのはず、真琴の素顔は本番ギリギリまで明かさないという方針であったからだ。余計な混乱を防ぐ意図もあったが、何よりも月奈が面白がってやっている側面が強い。
だからこそ、彼の素顔を見た瞬間に全員が絶句、もしくは困惑していた。なぜかというと、真琴にはメイク等の準備があるので、家から執事姿のまま登校してきた。彼が大変恥ずかしい思いをしたのは蛇足だろう。
それはともかく、つまりは月奈と美波以外は真琴だと気付いていないのだ。
この教室の空気は、得体の知れない謎のイケメンが支配していた。
「柳沢さん、これ…」
「誰も気づいてないし、信じてないねぇ。いやー、こっちのパターンがあったのか。失敗だったね」
「山倉くん、もういいの?」
「仕方ないよ。こうでもしなきゃ、大事なメイドさんを守れないからね」
「と、いう訳で。山倉くんのマスクの下はこんな感じでしたー。みんな拍手ー」
「「「いやムリムリムリ」」」
「えぇ〜?そんなに信じらんないなら、身分証明でもしてもらう?誕生日とか」
月奈は提案した後に、誰も真琴の誕生日を知らないため、この質問には何の意味もないことに気づく。なんとも悲しい話だが、これは真琴の努力の成果である。こんなものが努力の先にあったと知っていたら、真琴はどう行動しただろうか。恐らく、全く同じ道筋を辿っていたはずだ。
その後、担任の女性教師が教室に入ってきて出席確認を行う。図らずも、その際に真琴本人である証明がなされたが、月奈が思っていたほどの盛り上がりは起こらなかった。
「ぶー。引っ張った割にはつまんない結末だったなぁ」
「それでも良かったと思うよ。僕としては必要以上に目立たずに済んだ訳だしね」
「その分これから目立ってもらうからね」
「柳沢さんだって、メイド服着るんでしょ?お姉さんも来るみたいだし」
「………は?なにそれ、あたし聞いてないんだけど。てかなんでキミがあたしにお姉ちゃんがいること知ってんの?」
「えっと、かくかくしかじかで―――」
柳沢さんに、姉さんと話したことをそのまま伝える。その最中、ずっとげんなりした顔だったのは察するところだ。
「やっべー………。あたしもマネージャーの真似事だけじゃなくて表に出なきゃダメかぁ。出る気無かったんだけどなぁ」
「マネージャーの真似事……ぷっ」
「本当にキミはあたしをおちょくるのが好きだねぇ〜?」
「いやだってさ……!」
「そういうこと言うならやってやりますよ!あたしだって可愛いメイドさんくらいなってみせらぁ!」
「どうどう…落ち着いて……」
柳沢さんはズカズカと更衣室の方へ歩いていってしまった。こうなると僕も一人になってしまうし、早めに戻ってきて欲しいんだけど……。
そう思っていたけど、一人にならずには済んだ。ただし、厄介ごとというオマケ付きで。
「やーまーくーらーくーん!!」
「うわっ、神木さん!?いきなり飛びついたら危ないでしょ?」
「なんか月奈みたいなこと言うんだね。最近月奈とよく話してるみたいだし、まさか…」
「いやいや、そういうのじゃないって。柳沢さんが忙しそうだったから、ちょっとお手伝いしてただけ」
「ふーん…?山倉くんがそう言うなら信じるけど…」
なんで僕が疑われてるんだ…。決していかがわしい関係などあるはずがない。
そこで、この間の耳元での囁きを思い出してしまう。あれは…いや違うからね。あの後、ああいうことはやめるように何度も言い含めたから、もう二度と起こらないはずだ。
神木さんと話しているだけで、周りの視線がすごい。もちろん、好感情の視線なんて一つもないけど。なんであいつが…ってやつと、本当に僕なのか?っていう疑問の視線。
そろそろ居心地が悪くなってきたというところで、柳沢さんが戻ってきてくれた。
ただし、クラシカルメイド風でロングスカートな他の人と違って、なぜかミニスカメイド姿ではあったけど。
「おい、誰だこれ発注したの!?超恥ずかしいんですけど!?」
「いーじゃん月奈、似合ってるよー」
「あたしにこういうのは似合わないって……そう思うでしょ、山倉くん?」
「なんで僕に聞くのさ。でもそうだね、僕は可愛いと思うよ」
「かわっ……!?ちょ、ちょいちょい…そこまでは聞いてないんですけど……」
「んー!照れてる月奈もかわいいねぇ」
「ちょっと美波、急に飛びついたら危ないでしょ!?」
「むぅ。月奈も山倉くんとおんなじこと言ってる……。やっぱり二人って仲良しだよね」
あっ、さっきのってそういうことだったんだ……てっきり付き合ってるとか勘違いしてるのかと。
勘違いしてたのは僕の方だったのか………。




