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クラスの一軍女子を助けた。隣の君に恋をした。  作者: 山田 太郎丸


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1.一軍女子に素顔がバレた

 



 夏の終わり、気温が少し下がり秋を感じるようになってきた頃。それは突然の出来事だった。




「山倉くん、昨日は本当にありがとね!山倉くんがいなかったら危なかったよー」




 満面の笑みで僕に話しかけてくる美少女。彼女の名前は神木(かみき) 美波(みなみ)。このクラス、この学校でスクールカーストのトップに君臨する、いわゆる“一軍女子”と呼ばれる人だ。


 明るくて人懐っこい性格、それと発育した女性らしさで人気を博している我が校のアイドル的存在。それがこの神木さん。


 対して僕、山倉(やまくら) 真琴(まこと)はマスクとメガネ、目や耳にまでかかる長髪で顔を隠した、陰キャの権化みたいな男だ。スクールカーストは三軍どころかランク外だろうね。


 そんな僕が彼女に認知されてしまった理由は、前日の放課後まで遡る。











 僕は今年入学したばかりの高校一年生で、夏休みが明けて少しずつ高校生活にも慣れてきたところ。僕は田舎から上京してきたので、一人暮らしを始めた。

 最初の頃はバイトに忙殺されたり料理に苦戦したりもしたけど、今ではバイトの時間を調整してもらって生活も落ち着いてきたので、自由な時間も増えてきている。


 そんな僕にはちょっとした秘密がある。


 それは、鏡に映った僕の姿。耳に空いたピアスの穴。髪をかき上げてピンで留め、眼鏡を外してコンタクトに変える。すると、ぱっちりとした二重瞼の目が現れる。


 あまり自分で言うことではないと思うけど、僕はそこそこ顔立ちが整っている。中学時代はスカウトされてモデルとかそういう仕事をしていた時期もある。


 ただそれは中学生の時の話。こっちに来てから活動はしやすくなっただろうけど、上の人に学業優先って言って、今では事実上の引退状態。あの頃とは少しイメチェンしたから、一目見ただけでは分からないはずだ。


 それはさておき、今日はバイトもないので、帰宅部エンジョイ中の僕はすっかり通い慣れた小さなゲームセンターに向かう。




「こんにちはー」


「おっ、来たな真琴。こっちの台座れよ」


「今日も早いね哲也。またHR(ホームルーム)抜け出してきたのかい?」


「人聞きの悪いことを言うなよ。ちょっと腹が痛くなっただけだよ」


「それは随分と都合の良い腹痛だね」




 僕の対面の筐体に座る彼は灰崎(はいざき) 哲也(てつや)。高校になってから出来た僕の親友で、ゲーム友達だ。初めてこのゲームセンターに来た際に出会い、彼の手によって余裕があればこうして集まるほど立派な格ゲーマーに改造されてしまった。


 ちなみに僕たちが遊んでいるのは『バーチャルファイターズ(テン)』、通称“バーテン”だ。格ゲー黎明期から不動の人気を誇る、界隈では最も有名なシリーズであり、様々な個性的なキャラクターが宇宙の命運を懸けて戦う…という設定だ。


 まだまだ語りたいことはあるけど、今はバーテンの話はどうでもいい。

 哲也も神木さんと同じように、スクールカーストの頂点に位置する存在。本来ならこうして関わることもなかったと思う。


 たまたまゲーセンに遊びに来て、たまたま学生証を落として、それをたまたま哲也が拾ったというだけ。

 自分でもよく出来た話だと思うけど、その偶然の積み重ねが哲也との出会いに繋がったのだから、どこか運命めいたものを感じる。


 だからこれも、偶然ではなかったのかもしれない。

 哲也と別れて、ゲーセンからの帰り道。人の寄り付かないような路地裏から、騒ぐような声が聞こえる。


 気になって近づいてみると――。




「なあ姉ちゃん、俺たちと楽しいことしようぜぇ」


「痛っ、やめてください!」


「そんなこと言っちゃって。ここまでのこのこ着いてきてるってことは、そういう気があるんでしょ?」


「違います!離してください!」


「おい、何やってるんだ」




 気付いたら身体が動いていた。自分でも驚くような低い声で、その愚行を止めに入る。


 状況は、チャラそうな男と屈強な男が2人ずつ。対して襲われている女性―――まさか、神木さん?学園のアイドルがどうしてこんなところに…。


 まあその事は助けてから考えよう。どうせ誰も来ないような所なんだ。暴力沙汰になっても問題はなさそうだしね。




「なんだてめえ!」


「その人から離れろ」


「ククッ、彼氏気取りかあ?恥ずかしい奴もいたもんだなあっ!」




 屈強な男の1人が拳を振りかぶり、襲いかかってくる。刃物を持ってる感じは無さそうだから、落ち着いて対処できる。

 相手の拳が届く瞬間、その腕を引き込んで後ろに投げ飛ばす。


 苦しそうに呻く男を見た残りの3人は、やけになったのか同時に突っ込んでくる。だけど培った技術は裏切らない。大男の攻撃を避けて、力が抜けたところに拳を叩き込む。

 大男はそのまま吹っ飛んで、後ろに続いていたチャラ男二人にのしかかる。


 彼らはそのまま起き上がってこなかった。




「す、すごい………」


「お怪我はないですか?」


「あ…は、はひ…」


「はひ?」


「ぜ、全然!全然大丈夫なの……………」




 急に神木さんの動きが固まる。一体どうしたんだろう?




「あの、間違ってたら申し訳ないんですけど…」


「?」


「もしかして、同じクラスの山倉くん…ですか?」




 …………!?なんでバレた!?ちょっと待って、学校だと顔は隠してるし、ピアスの穴だってテープを貼って誤魔化してる。彼女の前では声だって出したことはないはず。

 接点もないし、まさかモデルのことも気付かれてないよね……?




「えっと、僕のこと知って…?」


「当たり前でしょ?クラスメイトだもん!でもその格好………」


「…ほっ…。ごめん、みんなには黙っててくれるかな。ちょっと事情があって、あんまり目立ちたくないんだ」


「もちろんだよ!助けてもらっちゃったし、これくらいは当然だよ」


「ありがとう。まだ仲間がいるかもしれないし、家まで送ってくよ」


「やだなぁ、そこまでしてもらわなくても……」




 良かった、気付かれたのは学校での姿だけみたいだ。モデルの方までバレてたらどうしようかと。


 神木さんは遠慮するけど、どこに危険が潜んでるか分からない。近所だから大丈夫だと言う彼女の反対を押し切って同行させてもらう。


 その道中、さっきまで反対していたとは思えないほど質問攻めに遭う。




「山倉くんって、なんであんなに強いの?」


「子どもの頃、格闘技を習ってたんだ。親に、『いざという時に大切な人を守れるようになっておけ』って言われてね。こうして役に立ってよかったよ」


「じゃあもしかしてムキムキだったりするの?」


「あはは、全然。僕がやってたのは古武術だし、鍛えるよりも身体の使い方に重きを置いていたからね。腹筋バキバキとか、そういうのではないかな」


「へえ〜、そうなんだ。あっ、そろそろ着くからここまでで大丈夫。今日はありがとう!それじゃまた、学校でね!」


「うん、気をつけて」




 去っていく彼女に手を振りながら、僕も借りているマンションの一室に帰る。神木さんは先に行ったけど、実は帰る方向が全く一緒だったのはここだけの話だ。






こまめに投稿していきます。


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