興味を持った男・沖田
盗人騒動からしばらくして、黒谷のお屋敷には穏やかな時が流れていた。
会津藩・黒谷のお屋敷ーー昼下がり。
庭にはやわらかな陽が差し込み、風が草木を揺らしていた。
「……気持ちのいい日ですわね」
姫様は縁側に腰掛け、穏やかに微笑んでいる。
その横顔を見ながら、私はほっと息を吐いた。
(……今日は平和だわ)
先の「盗人騒ぎ」が嘘のようだ。
熊二人も今日は離れたところで控えているし――
(よし、今日は何も予定はないし、何も起きない)
そう思った、その時だった。
「へぇ」
軽い声が、すぐ後ろから落ちた。
「ずいぶん油断してるんですね」
「ひゃあっ!?」
私は思わず飛び上がる。
振り返った先にいたのはーー
沖田総司……
「……またあなたですか!!」
思わず声が裏返る。
「またとは失礼ですねぇ」
沖田は、くすくすと笑った。
まるで何事もなかったかのように。
……この人、気配をまるで感じなかった。いつもこんな感じなの?
盗人のふりをしていた時には気配を感じたけど、あれはもしかしてわざとだったのかしら?
ーーあの時はあの時で不気味だった。
どっちにしても油断ならない男……
「こんにちは、姫様」
沖田は笑顔を浮かべ姿勢を正し、丁寧に一礼する。
「……こんにちは」
姫様は、首をかしげながらも、にこりと微笑んだ。
(普通に返した……?姫様は感じていないのかしら。この男の冷たい雰囲気、得体の知れない独特の空気を……)
先の一件を考えると、もっと警戒してもいいと思うんだけど……
「……何か御用ですの?」
「いえ」
沖田は首を振る。
「ただ、気になっただけです」
「……?何がですか?」
姫様が不思議そうに尋ねる。
その問いに、沖田はほんの少しだけ目を細めた。
「姫様です」
「……え?」
沖田のその一言で、空気が変わった。
沖田は敏姫様に興味がありそうですね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




